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【小説】あと60日で新型コロナウイルスは終わります。

~ヘアドネーション~

「ここまで伸びたの久しぶりだから、いっそのことヘアドネーションしちゃおうかな?」

看護助手の女性がアキナに話しかけてきた。アキナが何度かヘアドネーションをしているのを知っているようだ。

「⚫⚫さんの髪はきれいだし、あんまり染めたりすいたりしていないみたいだから、カツラにできる髪の毛がたくさんあると思うわよ。」

とアキナが答えると、これまたヘアドネーション経験者の別の看護師も、

「⚫⚫さんは髪の毛が伸びるのが早いから、あと半年もすれば、寄付できるんじゃない?」

と声をかけてきた。医療従事者は、元々ヘアドネーション率が高いのだ。

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10年間伸ばした髪を「医療用ウイッグ」に ダウン症の林田さん(10)

2020/9/22(火) 12:10 配信 長崎新聞

 生まれてから10年間、一度もはさみを入れず、髪を伸ばし続けてきた長崎市の林田来菜(らな)さん(10)。この秋、長く伸びた髪を切ることに決めた。切った髪は、医療用ウイッグ(かつら)を作り病気の治療で髪が抜けた人に無償で贈る「ヘアドネーション」の活動に寄付する。

 来菜さんは、県立鶴南特別支援学校時津分校5年生。生まれた時からダウン症や弱視などの障害がある。3人兄姉の末っ子。母の真弓さん(40)は、「妊娠している時からダウン症の指摘を受け生まれてきました。姉と兄の名前から一文字ずつ取って、来菜と名付けたんです」と名前の由来を話した。

 髪を切ることにしたのは、10月に学校の宿泊訓練があるから。初めての1人での外泊だ。家で髪を洗う時は、真弓さんが手助けをしているが、1人で洗えるようにならなければいけない。来菜さんにとっては、自立の第一歩でもある。

 「ヘアドネーションのことは以前から知っていました」と真弓さん。来菜さんと一緒に本を読んでいた時、病気の治療で髪が抜けてしまった人の存在を知った。そんな人たちのために役立ててほしいと来菜さんは髪を伸ばしてきたという。真弓さんは、「来菜は、生まれてからは心臓が悪く、手術を繰り返してきましたが、いろんな方の支援を受け毎日楽しく過ごしています。この子にも、何かできることはないかと思い、髪を伸ばしてきました。障害があってもできることがあることを知る機会になれば」と話している。

 「では、切りますよ。いいですか?」。美容師の空閑(くが)志穗美さん(44)の言葉に、来菜さんは「切るー!」と元気に答えた。鏡の前の椅子に座る来菜さんを、真弓さん、姉の似唯菜(にいな)さん(15)、兄の来似(らいじ)さん(13)が見守るように囲む。空閑さんが、長い髪を手際良く四つに分け、その一つにはさみを入れてカット。その後は、母、姉、兄が順番にはさみを握った。最後に空閑さんが仕上げをしてカットは終了。10年間伸ばしてきた髪を、家族に見守られながらすっきりと切った来菜さんは、「楽しかった。(切っている時は)わくわく」と笑顔で話した。

 ヘアドネーションのためには31センチ以上の長さが必要となる。来菜さんの髪は45~50センチあった。切った髪は持ち帰り、大阪市に拠点があるNPO法人「Japan Hair Donation & Charity」(JHD&C、略称=ジャーダック)に送る。

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医療従事者は、勤務先に迷惑を掛けまいと、新型コロナウイルスが猛威をふるっている間、外食やカラオケや旅行に行かないだけでなく、美容院に行く暇がない人が多かった。

新型コロナウイルスが収束したら、そのときは美容院も大混雑するだろう。

新型コロナウイルスが終わるまで、
あと60日。

これは、フィクションです。

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