リアル・マーケティングとデジタルマーケティングの違いを超えて。

デジタルマーケティングという言葉が流布した2010年代以降、デジタルマーケティングとリアルマーケティングを区別して語る必要が出てきた。

本音を言うとあまり意味ないと思うのだが、それまでのマーケッターと呼ばれた人たちと、新しく登場したデジタルマーケティングのヒト達があまりにも異なる人種であったからだ。
どちらが悪いという訳じゃない。
ただ、今みるとどちらもちょっと狭量で守備範囲が狭い傾向はあると思っている。

荒っぽく言うと、従来のリアルマーケッターは、ターゲット志向で商品(サービス)志向だった。誰に何をどんなチャネルで売るか?がテーマだったと言ってよい。なので、主に商品開発や売場開発の局面で活躍した。これに対してデジタルマーケティング畑のヒトは、プロセス志向、行動観点になった。オンラインコマースやオンライン販促の現場でアクセスログや購買履歴、CVRなどの行動KPIが簡単に取れるようになったからだ。来訪したお客に買ってもらう、または再来訪してもらうのがテーマになった。

で、問題の本質というかこの記事の主題
今、生活者のライフスタイルも所得も志向性も行動パタンも多様化が進んでおり、かつ劇的な変化の真っ只中にあると言うことだ。
そんな中、マーケッターに要求されるものは?というと、「今の過渡期のユーザー行動に最適化する」ことではなく、より良いユーザー行動を生み出す、イコール全く新しいターゲットを開拓することだと思う。
そしてそのターゲットは“モノの消費者”だけではない。コト(体験)を望む消費者も含めてのことだ。
そこではリアルだとかデジタルだとかの区分して考えることは無意味だし、今、自分が担当する商材やチャネルだけ見てても回答は得られないだろう。

例えば、オンラインデバイス一つ取っても、パソコン中心時代の顧客行動とスマホに移行してからの顧客行動は全く様変わりした。そのスマホすらもいつまで主流の位置に安住できるか分からない。
お客は、一番便利で一番楽しい体験を求めて常に変化してる。
今ある機能をベースに最適化する」『今の過渡期の顧客行動をカスタマーの全てと信じて、それに合わせる』
というのが、どれだけ狭量で効果が薄いか?をマーケッターは知らなければならないと思う。もちろん顧客行動の研究と推測は非常に重要だ。しかし、例えば自分たちが運営するサイトやアプリは、限定された機能しか持っていないかもしれないし、ぶっちゃけ、イケてないサイトかもしれない。そこでの顧客行動だけを見ていると真実が見えない。

で、新しい商品価値、サービス、しくみを生み出さねばいけないのだが、そのために必要とされるのは、自分自身が今の時代に適合して興味を持って生きる・消費する・体験すること。そして自分以外の多様な価値観を持った生活者に対する想像力を持つこと。これしかないと思う。

今、マーケティングとかデジタル云々だとかの肩書を持っている人は、僕の先入観かもしれないが、メソドロジーや手法論をマスターしてそこに執着している人が多いように感じる。いわば“仕事としてマーケティングをやってる人”だ。
でも手法なんて2年もすればどんどん変わる。商品も店舗もデバイスもアプリのしくみも全て大々的にこれから変わってゆく。AIも普及してゆく。
そこでは『●●のプロ』という人は実は存在しないのだ。
自分自身が生活者として常に試行錯誤して楽しむ。変化を楽しむ。ホリエモンさんの言ってる『多動』だ。そしてそれを仕事に流用する。そんなダイナミズムのある人こそがマーケッターとして生き残ってゆく気がしている。