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採用ステップ①人材戦略づくり──「人にこうなってほしい」を描こう

「人がぜんぜん採れないんです」

地方で企業人事の支援をしていると、こんな言葉をよく耳にします。

社会全体で人手不足が進む今、ローカルの企業へ「振り向いてもらう」ハードルは当然高まっているでしょう。一方で、そうした中でも人がきちんと集まり続ける会社も、全国各地にたくさん存在しています。

この違いは一体どこにあるのでしょうか。今回から始まる連載『採用を成功に導く8ステップ』では、採用全体のフローを見直しながら、具体的なアクションについて考えていきたいと思います。

「人材戦略」とは?

採用のフローは、大きく3段階(『戦略策定フェーズ』『戦略実行フェーズ』『エンゲージメントフェーズ』)、細かくは8つのステップに分けることができます。その最初に来るのが、「人材戦略の策定」です。

人材戦略とは、経営目標を達成するための「人にまつわる戦略」です。事業の成果に関係する「経営者ニーズ」と「従業員ニーズ」の充足を目指して策定されます。

ここでの「経営者ニーズ」とは、会社が目指す姿を実現するために、どんな社員に何を期待するか。「従業員ニーズ」とは、社員自身がどう成長したり評価されたりしたいか、ということです。

時々、人をただの“資源”とだけ見て、「この機械を動かしてくれる人」「この時間に厨房に入ってくれる人」などと業務へ当て込むような社員の捉え方をする経営者もいますが、それだけでは人材戦略として不十分です。個人と企業の関係が変わってきた現代は特に、人を“人”としてきちんと見ることが求められます。むしろ「個人の成長や充実感」を会社の目標の一つとして定義していくことが、重要なピースになっていると言えるでしょう。

なので、会社がやってほしいことを示しながらも、「そこにどんな社会的意義があるか」「個人の成長にどうつながるか」「評価・称賛されることになり仕事の充実につながるか」まで踏み込む必要があります。ここをきちんと示すことが、後に続く「採用計画」や、会社説明で話す内容を変えていき、採用そのものの成功につながっていくと考えています。

策定するのは経営者?人事?

社員にどうなってほしいか(=人材戦略)を考える過程では、自ずと「この会社がどうありたいか」(=ミッション・ビジョン)「社員にどんな行動をとってもらいたいか」(=バリュー)とも向き合わなくてはいけません。その意味でも、これは経営方針とセットにして考えるべき事柄です。

とすると、人材戦略の策定は経営者の仕事でしょうか? それとも、人事部門の仕事でしょうか?

詳しくはレアジョブの秋岡和寿さん(人事戦略本部長)が下の対談で触れてくれていますが、具体的な戦略そのものを策定していくのは、やはり人事部門が主導してほしいところです。経営者はより広い視点で事業づくりを考える必要がありますし、実際の人材戦略の策定時には、経営の方向を問わず「どの会社にも普遍的な課題」に向き合う必要もあるからです。

一方で、経営者はその動きをきちんと支援する必要があります。人事部門が動きやすいような環境を整えたり、経営計画やミッション・ビジョン・バリューをきちんと共有することは特に重要となるでしょう。

「なぜ採らないといけないか?」から考える

今回の連載は、採用がテーマです。「人材戦略の策定」をそのファーストステップとして捉えたとき、「そもそもなぜ採用するのか」をきちんと考えることも重要です。

例えば冒頭で、「人が採れない」と嘆く方のご発言を紹介しました。僕はこうした相談を受けたとき必ず、先方の意図を一つひとつ丁寧に問い返すようにしています。何となく「採らないといけない」と考えているケースも実際は多いからです。

・人を増やしたいから→なぜ人を増やしたいんですか?
・たくさんモノをつくらないといけないから→本当にたくさんモノをつくりたいんですか?なぜですか?
・売上をあげないといけないから→それってどのくらい必要ですか?なぜですか?

こうやって“そもそも”を掘り下げていくと、採用に対するイメージがより具体的になってきます。イメージが具体的になれば、人のあり方を描く人材戦略も、それを実行していく計画の内容も具体的になります。

一方で、“そもそも”を問い直した結果、事業や業務の整理ができて「採用が必要なかった」というケースも出てきます。忙しくなったからとりあえず人を……というのは、思考として陥りやすいポイントです。現場が「欲しい」と言ってきたら、それを支えるべき人事部門としては断りがたい気持ちもあるでしょう。

しかし、そこに経営方針と人材戦略を連動させる意識があれば「本当に採らないといけないのだろうか?」と問い返すことができる。これを読んでくださる人事のみなさんには、ぜひそうした俯瞰した視点も持つ存在になっていただきたいと考えています。

(「採用ステップ②計画の立案」に続く)

北川雄士/Yuji Kitagawa

滋賀県彦根市生まれ。株式会社いろあわせ代表取締役。
広告代理店、ITベンチャー企業の人事部門責任者の経験を経て、2014年にフリーの人事として独立。これまでに数千人の面接を経て来た。2015年末にUターン。ひと・もの・まちを“掛け合わせ”、それぞれが持ついろや魅力を大切にしたいとの想いで、株式会社いろあわせを設立。現在『しがと、しごと。』をはじめ、行政や地元企業と共に地域発の採用の仕組みや場づくり・まちづくりを積極的に実践中。(TwitterFacebook

(編集:佐々木将史
 

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