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【ハーブ天然ものがたり】チャイブ&あさつき


血液サラサラ、アリウム(ネギ)属


チャイブはユーラシア大陸原産、ネギ属ハーブのひとつです。
日本に自生しているあさつきは(学術的には)チャイブの変種と分類されています。

どちらもヒガンバナ科ネギ属に分類されるつかいやすい香味料です。
専門ルールに則した学名変遷のある植物類ですが、知識及ばず割愛します。古い文献にはユリ科と表記されています。

表題写真はチャイブの方で、北海道富良野のハーブ園で撮影しました。
和名を蝦夷ねぎ、または西洋あさつきといいます。

チャイブの学名は Allium schoenoprasum var. schoenoprasum
あさつきの学名は Allium schoenoprasum var. foliosum

アリウム(Allium)はラテン語でにんにくの意で、特有のネギ臭をもつ野菜やハーブの巨大クラスターです。
ねぎ、玉ねぎはもちろん、にんにく、らっきょう、にら、エシャロット、わけぎ、リーキ、のびる、行者にんにく(ヒトビロ、キトピロ)もアリウム仲間に入っています。

香味の強弱はちがいますが、涙をさそう玉ねぎ臭も、食欲をそそるにんにく臭やネギの風味も、硫化アリル、アリシンという成分のなせるワザです。
ウィキによると硫化アリルをもつ香味野菜を食することで、

血液凝固の抑制
抗菌作用
抗酸化性
消化・吸収の促進
解毒の補助
血中コレステロール低下
末梢血行善作用

などにつながると記載されています。
わかりやすいキャプションとして「血液サラサラ成分」が万人受けして共通認識になりました。

アリウム(ネギ)属の香味野菜やハーブたちは、近代国家市場の王道品ですから、わたしたちが目にするのはほとんど栽培種です。
日本の山野に自生するものではあさつき、のびる、行者にんにく(ヒトビロ、キトピロ)が有名です。

ただ見た目が似ている毒草もあるので、熟練した野草ハンターさんのサポートは必須と思いますし、行者にんにくは次の春にも元気に萌芽してもらうための、たいへんデリケートな摘み草作法があります。

幼少期を過ごした北海道では、近所に住む野草ハンターおじさんが、毎年摘み草やキノコ採りに連れて行ってくれて、大人たちが摘み草しているあいだ、子どもたちは自然のなかで好きに遊んでいるという恒例行事がありました。

そんな近所づきあいがふつうだった昭和のころ、お誘いされた子どもたちはたくさんの野草やキノコをもたされて帰路につきます。
流通がいまほど便利ではなかった時代だからこそ、もちつもたれつ、各家庭の得意分野(お里名産品)による返礼の応酬が、これまたくらしを彩る楽しみでもありました。

小学校高学年になると、野草ハンターおじさんからのお誘いはなくなります。
旬の野草のめぐみにあずかるための暗黙の了解、みたいなものがあり、道順をおぼえてしまうであろう年頃になる子には、お声がかからなくなるのです。
かわりに次世代の小さい子たちがお誘いされるというローカル・ルールのもと、ご近所交流は続いていきました。

野草ハンターの方々にしても、たくさん採れる自然のめぐみは広くお裾分けしたい。
けれど収穫エリアが知られると摘み草ルールを知らない人に荒らされて、次の年によい状態のハーブやキノコが生育できなくなる、というジレンマをおもちだったのだろうと思います。

収穫物の共有はしたい、けれど境界線はまもらなければならない。
いつの時代も、いろんな世界線、いろんな業界で、似たようなケースはあるなぁと感じます。


ちょっと脱線しましたが、摘み草の歴史をみると、あさつきは平安時代から食されていたという説があります。

和名アサツキ(浅葱)の語源は、ネギ(葱)に対して色が薄い(浅い)ことから、「浅い葱(き)」に由来する。

和名で浅葱色は淡い緑色を指し、『平家物語』で登場する「浅葱」という人名は、アサツキから名付けられたという説がある。

日本では古くから栄養価の高い強壮食品として利用されてきたネギ類の一種で、平安時代にはすでに食されていたと見られる。一か所に群生するため、野生の菜としては採取しやすい。

ウィキペディア-アサツキ

あさつきは民間療法では外用薬としても使用され、生の葉をもんで傷口にはりつけると、抗菌作用と止血に役立つとされてきました。

ウィキペディア-アサツキ
青森県種差海岸 2017年6月


チャイブは中国から日本に入ってきたといわれています。
江戸時代の農業百科事典「成形図説」に記載があります。

ウィキペディア-チャイブ
江戸時代の農業百科事典『成形図説』のイラスト(1804)

西洋料理では卵料理にあわせたり、バターに練りこんだり、サラダ、スープに散らすなどのつかい方が一般的です。
ポンポンみたいなピンクのまるい花はエディブルフラワー(食用花)、ピンク色のチャイブ・ビネガーは、お花を酢につけるだけのかんたん仕込みでつくることができます。

チャイブ

口承によるおまじないで有名なものは、新鮮な摘みたてチャイブと乾燥したドライ・チャイブを混ぜた花束を窓辺に吊るすことで、おうちをまもる厄除けになる、というのがあります。


野菜の宝石、大きな真珠


アリウム(ネギ類)は4000年ほど前の中国の文献に記載があり、かなり古い時代から食されてきたハーブと考えられています。
マルコ・ポーロ(推定 1254 - 1324年)は、「東方見聞録」の下地となったアジアへの旅でチャイブと出合い、ヨーロッパにもちかえって自らも好んでよく食べていたそうで、13世紀ころ、あっというまにヨーロッパに広がったと記録されています。

ウィキペディア-マルコ・ポーロ
旅の行程

古来中国ではチャイブを含めたアリウム(ネギ、玉ねぎ類)を「野菜の宝石」と呼び、ラテン語では大きな真珠を意味する unio (動詞の unio はひとつに結びつけるという意)から、玉ねぎの onion につながったという語源説があります。

uni はひとつ、唯一、単一などの意味があり、ユニバースやユニフォームなどの単語から想像できるように、ある秩序のもと層をなして形づくられるひとつの世界線。

小さなものでは真珠のようなバイオミネラルで、カルシウムの結晶とたんぱく質の一種が交互に層をなしてひと粒の真珠になり、植物では玉ねぎや、らっきょう、にんにく、あさつきのように層をなした球根が、ひとつの塊を形成します。

フラクタルな発想で、階層をもつ球根を宇宙規模にひろげていくと、この世界、この宇宙を真珠や玉ねぎの、層をなす構造みたいにとらえている思想もあります。


「ヘルメス文書」朝日出版社
グノーシス主義の一派、オフィス派の宇宙構造図
ウィキペディア-ヘルメス文書


さすがに玉ねぎをほおばることはできませんが、宇宙構造そのまんま、みたいな小さい球根(あさつきや、らっきょうなど)を、ひとくちでパクッといただくと、型共鳴がおきて、ホリスティックに全体性をとりもどす助けになるのかもしれない、なんて考えることがあります。

滋養強壮、活力増強、血行促進など、健康体をサポートする、おどろくべき効果のある植物として活用されてきたアリウム(ネギ)属の成分については、文献やネット上に多くの栄養学的説明があります。

エビデンスつきの説明は決してできないものの、全体性をとりもどすという意味で、ホリスティックに作用するナニモノカが、アリウム属ハーブには含まれているのかもしれないと妄想しています。

ホリスティックな健康体についての説明は、下記リンクに詳しい記載がありました。

左「ハーブ図鑑110」レスリー・ブレンネス著 日本ヴォーグ社
右「ヘルメス文書」朝日出版社 


あさつきの旬は冬から春にかけて、若い葉と球根を収穫することができ、夏のあいだは地上部を枯らして休眠します。
現代日本の流通界では若い葉葱をあさつきと呼ぶ地方もあり、球根がついていないあさつきも、スーパーでよく見かけます。
エシャロットや島ラッキョウみたいに、球根を売りにしているあさつきは、都市型スーパーでは扱っていないのかもしれません。

チャイブはというと、もとより球根がない植生で、ふっくらした根茎がいくつもくっついて生えていて、4月から秋ころまで葉を収穫でき、冬期間は地上部を枯らす多年草です。

チャイブとあさつきは近くで栽培すると容易に交配してしまうと聞いたことがありますが、栽培種のあさつきは野生種とちがって赤紫色の球根をもつことなく出荷されるネギ属のナニカ?なのかもしれません(調べたけれど、よくわかりませんでした)。

球根は地下にある一部が肥大して、栄養や水分をたくわえる器官のことですが、球根をもつ植物は地上部で生育するための環境が整っていれば繁殖し、よくないときは球根にひっこんで休眠することができます。

休眠できるワザは種子のようでもありますが、種子との大きなちがいは、球根は受粉して結実したものではなく植物のからだの一部分ということです。

アリウム(ネギ)属のばあい、わかりやすく玉ねぎを例にとると、玉ねぎの芯はうんと短くなった茎で、そのまわりに葉っぱが重なって肥大化しています。あさつき、にんにく、らっきょうもおなじで、茎のまわりに葉っぱがかさなって球根になるタイプです。

葉っぱがかさならず、茎そのものが肥大化して球根になるタイプもありますし、地下茎がひとつづつ丸くなるじゃがいも、長い地下茎が横にひろがる蓮根や生姜のようなタイプもあります。
根っこが、まんま肥大化するさつまいもタイプは、わかりやすいですね。


葉っぱの球根はユニバース?


アリウム(ネギ)属の植物は、葉っぱで球根をつくるので、むいてもむいても皮ばかり、さいごにはなんにもなくなってしまいます。

らっきょうの皮を、むいてむいて、しんまでむいて、何もない。
きっとある、何かある、それを信じて、また、べつの、らっきょうの皮を、むいて、むいて、何もない、この猿のかなしみ、わかる? 

「秋風記」太宰治-青空文庫 

鉱物界の真珠も、植物界のアリウム(ネギ)属も、宇宙のしくみを縮図にした、フラクタルな存在なのだとしたら、1層ごとにつながり、かさなってゆく宇宙構造を、シンプルにみえる化した、手のひらサイズのユニバース。

【ハーブ天然ものがたり】柿 の記事にも綴りましたが、

自然的な階層構造は、たんに全体性の増えていく順序です。

たとえば、素粒子から原子、細胞、生物体へ、
または文字から言葉、文章、段落へ。
あるレベルの全体は次のレベルの全体の部分になる。

人々をひどく憤慨させているのは、支配者的な階層構造です。

自然的階層構造の内、どれかのホロンがその位置を不法行使して全体を支配しようとすると、病理的、または支配者的な階層ができます。

「万物の歴史」ケン・ウィルバー

心理学の範疇を超えたアメリカを代表する哲学者の一人、ケン・ウィルバーは、ホリスティックであることは階層構造に溶け込むことだと本のなかで伝えています。

思考やからだ、こころ、社会、文化、そしていちばん肝心なのは、霊的なことをそのなかに含めて、階層的につらなる全体のなかの一部であることを思い出すことだよ、と。

生きて死ぬという定めをもった、いのちの全体像を想像することは、デリケートな摘み草ルールのように、いまこのときと、未来をつなげて想像力をはたらかせ、次世代を生きる新しいいのちが、また元気に萌芽することができるよう、こころを配って自然に対峙するのと、どこか似ているな、と感じます。

わたしたちの地球世界は、いちホロンである人間が、階層構造のつらなりにあることを忘却して存在できる、特殊な次元だと思っています。
人によってはそれを「自由」と呼ぶケースもあるのかな、と。

地球という小さな箱庭社会のなかには独特のルールがあって、ホリスティックな全体性を思い出すどころか、根っからすっかり忘れてしまって、いまだけ発想、自分だけ発想のサイクルにとじこもり、思考がぐるぐる空回りすることもあると思います。

葉っぱが階層のようにつらなるアリウム(ネギ)属ハーブの構造や、独特な香り成分は、ホリスティックな全体性やユニバースの壮大さを思い出す、ブースターなのかもしれません。

全体とのつながりを思い出すと、エネルギー循環も活発になり、血液はみえないきざはしにパイプをつないで、いきおいめぐりはじめるので、自然と元気はつらつになるのかもしれないな、と。

☆☆☆

お読みくださりありがとうございました。
こちらにもぜひ遊びにきてください。
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いつもコメントを頂戴しありがとうございます。
拝読いたしましたら心をこめてスキポチ返信させて頂きます。
ご理解いただけますと深甚です。


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