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「相手の意識を変える」のは、解決策じゃない。

ある企業さんで、リーダー養成のような連続講座を引き受けている。かれこれ5年。当初は人事が指名した人たち数十人で「マネジメント研修」のような集合研修をやっていた。でもなんていうかその場限りになってしまって手ごたえが弱い。それでもいくつか複数の部署から「うちでもやって」と追加の小規模のご依頼があったりして、30代の中堅社員にそのスキルをなんとかつけさせたい、というのが課題であることはわかっていた。

ずっと担当してくれている人事の方(とても熱心)とも相談して、ここ3年は集合研修を止め、プロジェクト型学習とでもいうか、いわゆる課題解決ゼミのような形式に切り替えている。オンラインになったこともあって。

課題を見つけるのも自分自身、解決策を考えるのも、そのために必要な調査も準備も自分たち。私はその経過に「どうしてそれが課題だと言えるの?」「~と思います?思うってどういうことでしょう」「◎◎を◇◇に上手くやる、って、◎◎は何?で◇◇に上手くってどういう状態ですか」みたいにツッコミ入れまくる人ね。
基本的には優秀なので、当初はのほほんと「要するになんかいい感じの解決案を発表会で言えたらいいんでしょ」と思っていた人たちも途中で「あ…これガチなのね」ってなる(笑)。

そこでこんな会話があった。
「若手が~で意識が低いのが課題」「若手が~の感覚を持ってないのが課題」「若手が~になったらいい」「若手の意識を変えさせる必要がある」

…のようなやつ。もちろん皆さんは真剣だし、皆さんは仕事に対する意識がきっちりある人たちなので、(そうは言わないけどようするに)自分たちのように「意識を持てば」いいとうっかり思っていたような、そんな会話。うん、全国のあちこちであるあるなやつです(笑)

ま、そんな話になると当然私はこんなことを言うよね。

「あの…意識って人にナニカ言われて変わるようなものですか?」
「それで簡単に皆さんが思うような行動に変化するんですか?」
「相手(若手)がそういう行動になっている、そのことに相手なりの合理的な理由がある、ということは、考えませんか?」

優秀な皆さんは困る(笑)。そして
「そんな…意識が低いことに、合理的な理由があるとか…そんなことはわかりませんよ」と苦笑する。

「皆さんがそう思うように、相手は皆さんのこと、すごく仕事やりたがりで何でも自分で巻き取る人だとか、意識高すぎて意味がわからないとか、思っているかもしれませんよ(笑)」ってさらに言ってみたよ。

そのうえで
「今わかっていることは、相手が何を持ってそうしているのか、皆さんには一つもわからない、ということだけですよね。だったらこれが本当に課題の真ん中なのかなんて、決められますか?」

とても素直ないい人たちなのでそれをずーんって受け止めてくれた。
そして顔を見合わせて途方に暮れた(笑)。
この人たちはまだリーダーではない。まもなくリーダーになるであろう人たちだ。「来るべきその日に自分がリーダーになったなら、そこで向き合う必要がある課題について、今から取り組んで見よう」というのがこの場だ。

なので

「むずかしいですよね。だから今、やってみるんです。この場を使って、同僚たちと協力して試行錯誤するんです。わたしも手伝うので。上手くいく案をキレイに発表することが大事ではなくて、いろんな可能性を探って、実践的に学ぶことをやるんですよ。」

相手が変われば済むのに~、相手の意識を変えるのが解決策だ~なんてことを言っている場所はたくさんある。そんなの解決策でもなんでもない。願望とか妄想とかそういうやつ(笑)。
そこを眺めているうちは、課題がどこにあるかすら、わからないと思うよ。

これ、親子だって夫婦だって一緒よねえ。



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