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#7 日本と世界の物価から見えるもの

「 今ここで、しあわせを繋ぐ意味がある」〜 しあわせ探求庁です!
しあわせは何でできていて、どんな姿をしているのでしょうか? 私たち「しあわせ探求庁」は、デンマーク発祥の「対話」をもとにした手法を用いて「しあわせの地図」を描いていきます🇩🇰
 メンバー2人が実際に対話した記録を記事として毎週水曜日に投稿、導入部分は2人によるトークでお届けします。再生ボタンを押して放送をお聴きいただけると光栄です✨

🇩🇪収録時佐々木はドイツ在住だったため、ドイツに関する内容が含まれています


〜 以下の記事は、上の stand.fm 放送の続きです 〜

学生の海外旅行事情


対話では、特に欧米と日本の物価格差が開いて、日本人が海外に出づらくなってきているという話をしましたね。一度、具体的な数字も出しながら、欧米と日本の物価がどう違っていて、どんな影響があるのかを考えてみたいと思います。物が買えるか、食事ができるか、移動できるか、というのは物質的なことですが、やはり「しあわせ」にかなり影響がありますからね。

そうですね。透さんが対話で話していた、「カナダ往復の直行便航空券が10万円しなかった」というのにはとても驚きました。そんなに安かったんですか?10万円しないということは、学生バイトでも数ヶ月貯金すれば行けるということですね?

そうです。カナダへ語学留学した時の資料が実家に残っていたので見てみたのですが、たしかに 96,600円となっていました。直行便でその値段ですから、乗り継ぎ便でよければもっと安い航空券がありました。それが1996年のことですから、30年弱経ったわけですが、この30年で国際線の航空運賃は約3倍になっています。

昨年まで都内の大学に社会人大学院生として在籍していましたが、ある一人暮らしの20代の学生は、「パスポートは持っていない。海外になんかとても行けない」と言っていました。例えばヨーロッパへ一週間旅行するとして、乗り継ぎ便航空券が15万円〜20万円、ホテル代と現地での観光代を10万円とすると、合計30万円は彼らの2ヶ月分の生活費です。それでは行けないですね。海外旅行できている学生の多くは実家通学組だと思います。

確かに、航空券だけ買えばいいというものではないですからね……
 私たちが海外に出にくくなる一方で、最近は積極的なインバウンド政策により、海外の方が多く日本に来られていますよね。お金を日本で使ってくれるのは嬉しいですが、一方で地元和歌山でも中国資本に観光地のホテルが買収されていくのを見ると少し怖い気持ちになります。観光地で日本の給料に見合わない外国人観光客向け価格が一般的になると、日本人の国内旅行でさえ難しくなってきますよね。

外食から見る物価事情


私が昨年秋にスイスで生活していた時は、あらゆるものがひたすら高く、日本で働いて貯めてきた分とは比例しませんでした。当時は外食も控えて、帰国して「日本なら気軽に外食できる!」と思って楽しみにしていましたが、実際は思っていたより高くなっている気がします。透さんはどう感じていますか? 私が大学生の頃は、500円ランチとかがあったんですが、さすがに今じゃ厳しいだろうなと思います。

それはひょっとして地域差かもしれません。僕はドイツへ来る前、東京都千代田区で会社員をしていましたが、確かにワンコイン、つまり500円でそこそこのテイクアウトランチが買えました。よく行くラーメン屋さんも定番のラーメンは500円でしたね。ひょっとして、首都圏は競争が激しいから美織さんのいた和歌山より物価が安かったのかもしれません。

そうなんですか!首都圏の方が物価は高いと思っていましたが、競争が激しい影響もあるかもしれないですね。あとは、ランチ文化には男女差があるかもしれませんね。男性だと、一人で牛丼屋とかにパッと入ってパッと食べて済ませる、というような食事も結構一般的ですよね。女子同士だと、美味しそうなお店や評判のお店を予め見つけておいて何人かで出かけるということが多いような気がします。でも、少なくともヨーロッパには、そういう「数百円でパッと食べる」というような外食文化はないですよね。

外食から見る物価事情


知っている限りではないですね。イタリア人の友人が、イタリアは日本と同じく物価もお給料も上がっていなくて、日本円で500円程度でテイクアウトして食べられるファストイタリアンがある、と言っていました。物価が上がっていない国では外食文化が似ているかもしれませんね。この記事を書いている今日時点で、1ユーロがついに169円台をつけました。この間フランクフルトのラーメン屋さんでラーメンとビール一杯で約26ユーロを払いましたが、今だと4,300円ほどですね。

4,300円と言えば、僕が社会人大学院生時代に好きだった、「鉄板焼き居酒屋」のコースがちょうどその値段ですよ。嘘だと思われないように、引用してしまいますね。料理7品にデザート、さらに飲み放題2時間がついて、4,290円です。これがまた、美味しいんですよ。
 ドイツでのラーメンとビール一杯と同じ値段というのは、信じられないを通り越して、日本が経済的におかしくなってきていると感じます。ヨーロッパで同じメニューのコースなら、軽く1万円を超えるはずです。

日本の物価は本当に上がっている?


美味しそうですね!私も鉄板焼き大好きです!しあわせ探求庁のオフ会に……

それはおいておいて、今透さんが言ったように「日本が経済的におかしくなってきている」と思う人は少数派かもしれませんね。note で留学を終えて帰った人の記事などを見ても、「やっぱり日本は何でも安くていい!」という感想が大勢のように思います。
 私も最初はそう感じていましたが、就職活動を通してお給料の額を見ているうちに、これは喜んでいてはいけない事態だ、と思うようになりました。ニュースなどを見ていると、「物価高対策」とか言っていますが、世界的に見ると日本の物価はあまり上がっているとは言えないのではないでしょうか?

そうだと思います。局所的に見れば高くなったものはあるんだと思いますが、全体的にかつ欧米と比較すれば、ほとんど上がっていないというのが実際のところだと思います。会社でもらうお給料は基本的に物価に影響を受けるはずなので、参考までに見てみると、1994年から2024年までの30年間で、大卒初任給の額はほぼ変わっていません。

「新卒初任給」という考え方そのものがないアメリカとの比較は難しいのですが、それでも比較してみると、アメリカでは過去30年間で大卒初任給が倍になっています。次の note の記事が、周辺事情を詳しく取り上げてくれています。

G7 ではイタリアと日本が最下位を競っている感じですね。日本の物価がそのままでアメリカの給料が倍になったということは、アメリカ人が日本に観光に来る時は同じ金額で倍の物が買え、サービスが受けられる、あるいは半分の金額で済むということですね。実際には為替レートも変動しているので、その差はさらに大きくなっています。

安売り競争の行く末は?


「しあわせ」は精神的なものとはいえ、経済的な基盤がなければ成り立たないことも確かなので、この経済的格差はしあわせにも影響してきますね。最近、地元のスーパーを見ていて気づいたことがあるんですけど、日本はむしろこの時代に、さらなる「安売り競争」に向かっているような気がします。
 本来なら今はマイバッグ持参が普通で、レジ袋は有料なはずなんですけど、レジ袋が有料化され始めていた頃、あるスーパーが「うちはレジ袋無料です!」っていうやり方で集客しているところがあって、それはちょっとずるいなぁって思っちゃいました。
 お給料の話に戻ると、物価が上がらないのに、お給料だけが上がっていくことはあまりないですよね?

普通はないと思います。歴史から学びたいところですね。あとはよく、「みんなが海外に行くわけではないから、日本は日本でいい。お給料が安くても、物価が今のままなら生活には問題ない」という意見を聞きますが、それって違いますよね。美織さん、美織さんの生活のどのくらいが海外に関係なく「日本だけで完結」していますか?

確かにそうですね……来ている服、使っているスマホ、乗っている電車を動かしている電気の火力発電に使われる石油……純日本製のものなんてほとんどないですね。これって、弱くなった日本円で海外から仕入れているっていうことですよね。

それでも日本での小売価格があまり変わっていないということは、輸入品を卸したり販売したりしている会社の社員の給料に影響しているということですね……だからお給料上がらないんですよね。お給料が上がらないから安いものしか買えない、そこで売って利益を上げるために「安売り競争」に走る、だからお給料はなおさら上がらない、構造的にまずいことになっていますね。

そうなんです。経済学の人がどう考えているか、学術的な見解を聞きたいですが、大枠はそういうことだと思います。実際は、どこまで政治が介入して国際政治的に問題ないかわかりませんが、政治主導で物価を上げていって、生活困窮家庭には補助金を出す、という方向で進めていかないと、じきに日本は「経済的鎖国」の状態になってしまうと思います。

この間友人とちょっと話したのですが、それでも休日に新宿や渋谷を歩くと、結構賑わっていて高価なレストランにも人が入っているそうです。note の街でもみなさん海外旅行にそこそこ行っている。結局、「経済的にうまく行っている層」の姿だけがメディアに出てきてしまうので、本当に生活するだけで精一杯のかなり厚い層が見えてこないということだと思います。

日本の適正物価と給料


実現可能性はさておき、透さんはどのくらいの物価が日本にとって適正だと考えていますか?あくまで理想論を言うならば、ですが。

そうですね、やはり今の2〜3倍くらい、目安としては、吉野家の牛丼並が1,000円、マクドナルドのセットが1,500円、大卒初任給が50万円、というところを目指さないと、健全な経済と人材の国際的な流動性を保てないと思います。日本が物価と給料を上げている間に他国もさらに上がっていきますから、僕の感覚では年率12%、6年で物価を倍にするくらいのペースで上げていって、ギリギリ間に合うかどうかだと思います。

物価上昇は複利計算になるので実際は複雑なのですが、おおよそを計算する方法として、「72の法則」というのがあります。72を年率パーセントで割った数字が、「複利で倍になるのにかかる年数」です。なので、年率 7.2% で物価が上がれば倍になるのに約10年、12% なら約6年ということになります。

「代弁者」 と 「リーダー」


こういう時、主に人口という意味で国が小さいフィンランドやデンマークは、「小回りが効く」のかもしれませんね。日本は支える人口が多いので、例えば物価上昇に伴う生活困窮者への補助金といっても、相当な金額になってしまいますね。そして、選挙前とかに駅前での演説を聞いていると、やはり「物価高対策」「生活を守ろう!」という感覚なんですよね、政治家も。

そうとも言い切れないかもしれませんよ。僕も友人に政治家がいるので少し肌感覚が分かるような気がします。政治家はとにかく、「票を集めないと選挙には勝てない」わけで、かつ若い人の投票率が低いとシルバー層を取り込める政策でないとそもそも政治の舞台に上がれないわけです。どうしても「物価高対策」「生活を守ろう!」になってしまうんでしょうね。政治家の本当の意見とは別のところで政治が動いている部分がありそうです。

実際は、ここで我々が話したようなことを有権者に説明して、「みなさんの気持ちは分かります。でも今は積極的に物価を上げて給料の連動を促し、及ばない部分は補助金で対応します」と強力に引っ張って行くような「リーダー」が欲しいところですね。

そう期待します。その意味では、「リーダー」ではなく、有権者の「代弁者」のみに徹してしまっている政治家も多いということですね。 今回は「しあわせ」から少し話題が離れてしまったような気がしますが、透さんはどう思いますか?

「しあわせ」 と経済はやはり関係が深い


離れてしまったとは思いませんよ。僕が 1997〜1998年にオーストラリアに留学していた頃は、円が強くオーストラリアドルが80円台前半でした。何を買っても、何を食べても安くて、「自分の持っているお金の価値が高い」ことが、思っていた以上に「しあわせ」な感覚を得るのに直結していることを感じました。経済面だけが全てではないにせよ、今の状況が続けば、日本人の幸福度は経済に足を引っ張られてさらに低くなるように思います。

そうかもしれませんね……あとは、以前『#5 ワークライフバランスは誰のため?』の回で話したように、日本での娯楽や楽しみ、友達付き合いが外食やテーマパークなど消費と直結している部分があるからなおさら物価を上げづらい、という点があるのでしょうね。経済面での強力なリーダーシップと併せて、文化面でも見直しを少しずつ進めないと、日本の幸福度を上げるのは難しいかもしれませんね。

そうかもしれません。それでは次回は、美織さんが東京で新しい仕事を始めた直後の回になるので、「転職」をテーマにお届けしようと思います。

「 今ここで、しあわせを繋ぐ意味がある」〜 しあわせ探求庁でした✨
 また来週水曜日にお会いしましょう!
(2024年5月29日)

しあわせ探求庁|Shiawase Agency
  
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  (miori @しあわせの探究
オランダ支部:佐々木 透
  (ささきとおる🇳🇱50歳からの海外博士挑戦
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