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背中にそっと手を添えてくれるような一冊「マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ」

この度、人生の友である大好きな本のお話しを書く『志庵の読書ブログ』というカテゴリーを作ってみました。
心に残った本やおすすめの本を、ご紹介していければと思います。

さて、記念すべき『志庵の読書ブログ』第1回目。
私は普段から読書好きを公言していますが、実はここ数ヶ月本を読めなくなっていました。
「本は心の栄養」と言うように、読書は心に活力を与えてくれます。

紙を捲りながらたくさんのことばに触れることは、知らなかった世界を知るきっかけになったりもします。
ただ本当に心が忙しかったり弱っているときは、その大好きな読書でさえできなくなってしまうのです。
読みたいのに読めない…これは相当に苦しい。
そんな読書スランプを少し抜け出せそうな兆しが見えてきたときに、いつも読む一冊を今回はご紹介したいと思います。


この本に出逢ったとき、私は心身ともに疲れ果てていて、それこそ読書スランプに陥っている真っ只中。
”ことば”に救いを求めるように入った本屋さんでふと手に取ったのが、
古内一絵さんの『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』でした。


■物語のあらすじ
商店街を入った路地裏で、夜だけひっそりと営業しているカフェ「マカン・マラン」。
店主でドラァグクイーンのシャールが振る舞う、一人ひとりの体質にあわせてブレンドする飲み物や、旬の食材と野菜をたっぷり使った手料理、心に溶け込む言葉に背中を押され、さまざまな悩みを抱える人達が自分を見つめ直し、新しい一歩を踏み出していく物語。


まだこれから読まれる方もいらっしゃるでしょうから、少しだけ内容に触れさせてもらおうと思います。

シャールさんの作るお料理はどれも凄く美味しそうで、本の中から香りまで伝わってくるようです。
そして伝えてくれることばは、いつでも優しさに満ち溢れています。
もしこんなお店が実際にあったなら、私はきっと毎日でも足繫く通ってしまうことでしょう。

シャールさんは言います。
「この世界に、本当になにもかもから自由な人なんて、どこにもいないわ。誰でも、何某かの負荷を抱えて生きているものよ」

「誰だって自分の荷物は自分で、背負わなきゃいけないのよ」

「苦しかったり、つらかったりするのは、あなたがちゃんと自分の心と頭で考えて、前へ進もうとしている証拠よ」

「足りなければ、満たせばいい。空っぽならば、埋めればいいのよ」

「どんなに色々なものが足りなくたって、誰もが自分の人生の女王様よ。あたしもそう。もちろんあなただってそうよ」


どんなときでも味方でいてくれる存在の有り難さと、自分が自分の味方で在り続けることの大切さ、そして簡単じゃないからこそ人生は面白いのだということを教えてくれるのです。自分を労り、必要なものを食べ、自分の人生に責任をもって生きていくことが、なにより大切なことなのだと思います。

枠にはまることができなくてどこか生きづらさを感じていたりして、枠にはまらないということが”個性”とか”多様性”とか”自分らしさ”という枠になっていったりして、また生きづらくなったりして。
久しぶりにこの本を読んで、そもそも自分は何者でもなくてただのひとりの人で、たったひとりの自分なんだと気づいたとき、少しだけ背負っている荷物が軽くなったような気がしました。

毎年長く寒い冬を越え春の気配を感じ始めるとき、終わりの見えない暗闇に光が差し込み始めたとき、シャールさんに逢いたくなります。
優しく包みこんでくれるそのことばたちは、心の栄養となり明日への活力になってくれるのです。

情報に溢れた社会に疲れたら、スマホやパソコンを閉じてこの本をそっと開いてみてください。
シャールさんはいつでも美味しいお料理を作って待っていてくれます。
優しく暖かいことばで背中を押してくれるはずです。
また少し頑張ってみようかな…そんな風に思えるかもしれません。


『志庵の読書ブログ』第一回目は「マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ」をご紹介しました。
実はマカン・マランはシリーズはあと3作あります。
「女王さまの夜食カフェ マカン・マラン ふたたび」
「きまぐれな夜食カフェ マカン・マラン みたび」
そしてシリーズ完結編、
「さよならの夜食カフェ マカン・マラン おしまい」

私は大好きな本のシリーズが終わりに向かうのが寂しくて、完結編をなかなか読めないという困った癖をもっております故、この”おしまい”も未だしっかり積まれております。
今回こうしてマカン・マランをご紹介したことでようやく最後の完結編を読んでみようと思えました。また一歩踏み出せそうです。

次回の読書ブログを書くのも愉しみです。
お読みいただきありがとうございました。














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