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2021年5月の記事一覧
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_幼少期_2
その頃の僕は大人の評価が中心だった。だから、同年代の子供たちが、僕をどう見ているのか考えていなかった。
幼稚園では、絵を描いている子の席にそっと机を寄せて、極力顔を見せないように一緒にお絵描きをして、おもちゃを振り回して泣き喚く、感情の制御が利かない子には極力近づかないようにしていた。
子供たちの間では、静かに、息を殺して、自分が空気そのものになろうとしたんだ。
だけど、その態度がい
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_幼少期_3
「……うぐぅっ」
沈黙を先に破ったのは大川くんの方だった。手からモップが落ち、苦し気に体を「く」の字に曲げて地面に膝をつき、そのまま地面に反吐《へど》を吐いた。
「げええええええぇっ」
決壊した川のように勢いよく吐き出された吐しゃ物。吐き出された黄色い汁がびしゃびしゃ地面に跳ね返り、大川くんの丸い顔に降りかかる。
あまりのことに僕は固まった。
呆然としていると、大川くんの吐いた吐し
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_幼少期_4
あれから様々な検査を受けて【問題なし】の結果をもらい、病院……というよりも、母から解放された。
しばらく幼稚園に行かなくていい。と、言われた僕は、母と二人っきりで家の中に閉じこもるような、息が詰まる生活になるかと想像していたのだが(父は大手不動産会社の役員で、家にいることが稀だ)……。
「俊雄。お母さん、がんばるからねっ! 良い子でお留守番していてね」
と、いやに張り切って、外によく出
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_幼少期_5
なにも知らないことが、幸せだというのなら、あの時の僕は確かに幸せだった。
風呂に入り、背中を流し合い、父の手の平に絶対的な信頼と安心を感じていた時代。
シャンプーの香りに交じって、父の細い体から少し甘くて優しいミルクキャンディーのような匂いがした。
父が僕といることを喜んでいる。
人が強い感情を持つとき、様々な匂いが出ることを病院で知り、父との交流で今、確信を持った。
「お父さん」
「
【加筆・修正ver】杉藤 俊雄 は××したい_幼少期_6
幼い僕が母に連れてこられたのは、公民館だった。
一番大きな会議室の前で、僕は立ち止まり、母は眉を寄せて怪訝な表情を作る。
部屋に入る前から廊下に流れ出してくる、強烈な悪臭と、会議室にひしめくたくさんの人の気配に体が動かなくなった。
なに、このニオイ、くさい。
思わずスーツの袖口を鼻に当てようとすると、母の手ががつりと僕の手を掴んだ。
「だめよ。化粧が落ちちゃうわよ」
「うん」