挑戦者が現れました

戦いましょう。

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最近の記事

〈seeker〉乱闘ホテル

〈Mu_K(formless)の場合〉 真実とはなんだろう。それを考えて、今8750万年が経っている。その歳月を、真実を積み重ねることだけに費やしてきた。真実を積み重ねることは力を得ることである。これまで、戦いに勝利するということは真実を積み重ね、力を得てきた。 一方で俺は混沌を求めていた。真実をストイックに積み重ねるのは、俺が誰よりもそれを否定してほしいと感じているからかもしれない。或いは……俺はずっと真実を追い求めてきたが、真実でない状態を知らずに、そういうものとして真実

    • 王国レキシコン・バトル

      俺は王だ。今日も世話係が身の回りの支度を行なっている。 「王様、ほ、ほんとうにこんな服でいいのでしょうか......」 新しく入った世話係がおずおずと尋ねる。 「かまわない」 「わ、わかりました......」 煌びやかな服には興味がない。俺の興味は、いつも生命の輝きにあった。国で一番の腕を持つ仕立て屋にも作れないもの、それを作ることができる者はあらゆる場所にいる。生活のために、生きていくために文字通り命を削って作られた服。そういうものに心が惹かれた。縫製が得意でないものが作

      • 仮面の男

        辺りは暗くなっていた。どんよりと鬱積した心情とは対照的に人々は幸福そうに往来している。 ふと奇妙な感覚を覚えた。外は半そででも歩けるほどの暑さなのに、妙に寒いのだ。しかし周囲を見渡せど誰も寒そうなそぶりは見せていない。数秒の時間を要したのち俺は自身に何が起きたのか思い出した。 一人の男が路地裏を歩いていた。男は仮面をかぶっている。聡明そうな黄色の瞳とわずかに緩んだ口は正面を向いている。 俺はそいつを見て直感的に、生命を脅かすほどの力をそいつが秘めている、そう判断することが

        • 割れる存在

          気づけば木製デスクが視界に入ってきたようだ。ここはどこで、僕は誰なんだろうと自明の問いを発する。答えを理解していながら、問うことをやめない。 いつもこうなのだ。ふらっと世界に崩れ墜ちるように、意識が問いを生む。やわらかい肉塊を二枚に裂くと、世界が浸み込んできて、僕は安心する。そして僕は人間の言葉を話して、笑って、この世界で交流する。デスクの裏に手を当てると、そこだけちょっとひんやりと感じた。でもやがてその冷たさも頭にわずかな刺激を与えたきり、それは塊となって形を失い、網膜

          鏡の世界の料理店

          店主に誘われて入ったその空間は、鏡の裏の世界のようだった。表通りからは中の様子を窺うことはできない。扉の向こうは奥行きがあってり、カウンター席とテーブル席がいくつか並んでいる。 カウンター席の天井には毛糸のような素材で編まれたカラフルな紐が店内を彩っている。顔立ちの似た店主が2人、ネパール語とヒンディー語で会話している。 テーブル席に座ると2種類のラジオ番組が流れていることに気づいた。注文を終え、料理を待っているとき、2人の店主は何を話しているのか分からないが、ずっと独り

          鏡の世界の料理店

          反転世界のペテン師

          誰もいない高架下のベッドに横たわっていない。足元には靴と、着古した服が落ちていない。高架の上から滴が垂れてくることもない。よいしょ、と言いながら身体を起こそうと思って活動を開始しない。 思考に集中しよう、と脳内ベッドから認識世界地図を広げない。クリアに整序された思考が開始しない。 ふわふわメロンパンの夢が支配的なdream cityを闊歩しない。売り子の目は金魚のようで、スマートボール台のようではない。売り子のエンゼルは虚無空間にテニスボールを投げていない。赤と黒のルーレッ

          反転世界のペテン師

          ジャバランジャバラン

          暖かい風が頬を撫でた。都会の中で穏やかな空間を求めた人々が川にやってきている。俺もまたそのうちの一人だ。川辺には砂浜が広がっている。 ザクっ、ザクっと一歩踏みしめるたび歩いているんだという感覚がひろがる。 足があって、ちゃんと歩けているんだ。左、右、左、右、左足より前に、右足より前に。 歩くということが何か分かっていないが、歩けているんだということは分かる。 地面を見て歩いている。落ち込んでいるわけではなく、確かなものとして道を舗装している。 ざくざく......ざくざく

          ジャバランジャバラン

          2022年8月23日

          身体は実体を空中に溶かし、私の意識は文字と同化するようである。 私は世界だ、今、世界と合一化している。押し寄せる世界に同化して一人の人間としての記号を失い、全体性に飽和する。 ここでは私を隔てるあらゆるものがなかった。生身で没入している。 深く、深く、意識の底に沈静している。水面が本質を映す。 音のない、鍾乳洞のような静謐な空間だった。

          ふとした瞬間に思い出す人

          もう細部の記憶はバラバラになっているが、まだ鮮烈な感情だけは昨日のことのようにじんわりと胸を刺す。 以前にも言及したことがあったかもしれない。他者とかかわる上で、衝突は避けられないものだと思う。衝突した時、どうすればいいんだろう。誰もが一度は通る道じゃないかな。 謝って、許されて、またもとの形に戻っていく。 こんな感じの儀式めいた過程を経て、関係は修復されてきた気がする。 それがうまく機能しなくなるのはいつ頃からだろうか。 「罪を罰されないことが何よりの罰に思われた」と

          ふとした瞬間に思い出す人

          日常系の

          二十五メートルプールが二つほど横に並べて入りそうな空間に、その空間は無である、人が詰め込まれている。規則的に配された白い机、椅子がそれぞれの個体に与えられ、我々は任意の席につく。みな俯いては世界の中に沈静している。機械的に進行する講義、ここには誰も乗っていない。虚無に沈み神経を侵されていく。忙しなく震える空気に、耳を塞ぐ柔らかなクッションはなく、鋼鉄の壁を構築する。ふと視線を感じて顔を上げる。女だった。 なに? 目で問いかける。 彼女は何も発さなかった。代わりに悪戯っぽく

          日記をつけて起きたことn選w

          本屋に寄った。書棚には多くの本が納められている。 派手なポップが書店を覆っている。 やっぱ本を探すの、やめようか。 文具コーナーに目をやると、丁寧な装飾が施された日記帳が売っている。 パラパラとページをめくると、日付と曜日が指定され、すこし窮屈な感じである。 「こういうの、1日書き忘れるとやめちゃうんだよなー」 一般的なことを言うなって?いやたまに“共感”を喚起したくなるんだよ。noteって”そういう”場所な気がする。アイコンも記事のヘッダーも、タイトルも全部…… いま、私

          日記をつけて起きたことn選w

          互いを消し合う

          私がAという選択をした時、同時にAをしないという選択をしている。そうした選択の連続の結果が今の私を作っている、ということになるわけだ。しかし果たして私は私なのか。どうして選びとられた側だと私は判断できるのか 選ばれなかった側だという可能性を無意識に否定しているよな。 選びとる「私」とは誰なんだよ。いやそもそも私ってなんだよ。っていう私ってなn…… 帰ってこれません。。迷子になりました いや、だからなにって話だけどさ。それ言ったらおしまいだけど、気にならない?選ばないと

          雑記

          何かを探すように視線を地面に彷徨わせ、時折かがんでは何かを拾っている女性を道端で見かけた。 あまりにもその様子が必死だったので、大事なものをなくしたのだろうかと声をかけようと思った。 その視線の先に何があるのか見てみると、タバコの吸い殻だった。 それを素手で拾っていたのだった。飲食店でバイトしていたときに床に落ちた他人の飲み終わった空のカップとかを素手で触ったりしてたんだけど、そのときすごく惨めな気持ちになった。(ゴミを袋の外に捨てたり、家庭ゴミを持ち込んだらダメだぞ!

          人形

          「私の家族を探しています」というツイートが私の趣味垢に流れてきた。内容を見てみると、どうやらその「家族」というのはぬいぐるみのことらしかった。なるほど、ついにぬいぐるみも家族に含まれるようになったか。まあ別に他人の価値観をどうこう言うつもりはないし、軽くスルーした。 それから数日後のことだ。このツイートの影響かどうかはわからないが、無性にぬいぐるみを見に行きたくなった。近所にぬいぐるみを売っている店はないか調べると、テディベア専門店というのがあった。行くしかない。私は自転車

          僕、田中太郎。大学一年生。趣味のない平凡な人間だ。 僕はかつて、おびえていた。もしも僕の中身が別人に乗っ取られてしまったらどうなってしまうのだろうと。 どうしてこのような思考に至ったか話そう。大学に入学してから、一週間がたった日のことだ。早くも第一回目の講義が始まった。席が近くの人とまず自己紹介をする。「えと僕、田中太郎っていいます。趣味は……え~……え~と……ありませんが、よっ、よろしくお願いします」 ひどい自己紹介だ。でも、思うんだ。こんな自己紹介何の意味があるんだよ

          他者への依存とは

          これを見ている人の中に、他人に依存している人はいるかい。今日は他人に依存している人の話。 だれしも何か依存する対象はあるだろね。それは物かもしれないし、はたまた人かもしれないね。 物に依存することと、人に依存すること。この二つには決定的な違いがある。物は持ち主が触れたり、話しかけたりするのをただ静かに待ち続けている。物は人がとる行動にただ身をゆだねる、水のような存在だ。 人に依存すること。人は物のように静かじゃない。絶えず何かしらの意志に突き動かされ、何かを求めて行動する

          他者への依存とは