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四月バカが本当になった!『化石大発見』/世紀の大発見①

藤子Fノートは一つの記事に一つの発見を込めたいといつも考えている。発見とは気づきだったり、新感覚だったり、新事実だったりである。

いつも読んでいるドラえもんには実はこういう背景があったのかとか、ドラえもん以外にもこんな深刻な話を書いているんだとか、ドラえもんとオバQで全く同じ話を書いているのか、など、そうした発見を共有して欲しいと考えている。


さて今回から全4回のシリーズで、「大発見」をテーマに、登場人物たちが様々な発見を通じて驚いたり、感動したり、はたまた…と悲喜こもごもする姿を、F作品から抽出していく。

まず本稿では「ドラえもん」から大発見をテーマとした作品があるのでそれを見ていく。


「ドラえもん」『化石大発見!!」
(初出:インスタント化石)
「小学六年生」1976年4月号/大全集4巻

話の流れとしてはエイプリルフールでの嘘から始まり、やがて奇蹟が起こるという「嘘から出たまこと」のハッピーなエピソードとなる。

以前エイプリルフールをテーマとした記事を書いたが、本作についても触れている。まずはこちらを読んでもらって流れを掴んでもらうとありがたい。


のび太は毎年のようにエイプリルフールで騙され続けており、四月一日はとても警戒しなくてはならない気の休まらない日である。

本作でもいかにも嘘っぽいスネ夫から渡された宝の地図を手がかりに地層のようなところを掘り進めたが、案の定何も出てこない。やはり騙されたというところから物語が始まる。

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すると、同じように穴を掘っている初老の男に気がつく。四月バカに騙されたので掘るのを止めるよう話しかけると、化石を掘っているのだと言う。

男の勘によればこういう穴だらけの泥岩層は有望なのだと。それを聞いたのび太たちは宝探しより面白そうといって岩肌を勢いよく掘ろうとすると、男は、

「そんなデタラメな掘り方があるかっ。貴重な化石をもし壊したらどうする!」

と激怒する。他愛のないシーンだが、さりげなく化石が出やすい場所、化石の掘り方をマンガの中に織り込んでいる。

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なぜ怒られたかよく分からぬまま帰宅してご飯を食べる2人。自分たちも騙してやりたいと考えていると、アジの骨や貝殻を見て、これを化石にしようと思いつく。

一度穴に埋めて「タイムふろしき」を被せると、あっという間に何億年もの月日が遡り、見事化石の一丁上がり! それをひと包み持って、化石のおじさんの元へと戻ると、まだ作業を続けている。

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そこで先ほど作った化石を、そこで拾ったと嘘をついておじさんに見せる。アジの骨と貝殻の化石だが、これを見て飛び上がるほどに驚く男。

「大発見だ! 化石はね、何億年も昔の生物の姿なんだよ。だから魚も貝もまだ進化しいない原始的な種類であるべきだ」

のび太たちのお昼ごはんの残り物の化石なので当然なのだが、これは世紀の大発見なのだと大喜び。

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おじさんは「わしも見つけるぞ」と再び化石発掘に精を出す。のび太とドラえもんは、四月バカ大成功ということで大笑い。さらに調子に乗って「もっと面白い化石を作ろう」と、ゴミ捨て場の傘や空き缶など何でもかんでも化石にして、これを持っていこうと考える。

もちろんさすがに信じないだろうから、そこでエイプリルフールと打ち明けてみんなで笑おうという算段である。


再び発掘現場に戻ると、道具を置きっ放しにして男の姿はない。そこで適当にゴミで作った化石を埋めておく。すると、おじさんが娘を連れて戻ってくる。娘は父親に「長い間の苦労が報われたわね」と嬉しそうに語りかけている。

そして娘はのび太の手を握って「本当にありがとう」と感謝一杯の様子。彼女の言うには、父親は子供の頃から古生物学者になりたかったのに、色んな事情から夢が叶わなかったのだという。歳を取ってから研究を打ち込み、今日の発見で苦労が報われたということらしい。

気軽なエイプリルフールのネタでは済まされないほどに、男は化石発掘に人生をかけていたのである。これに焦るのび太とドラえもん。早く打ち明けて謝らないと・・・!

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ところが嘘を告白しようと思ったところで、おじさんが「またも大発見だ!」と騒ぎ立てる。先ほどのび太たちが埋めたゴミの化石を見つけて、再び大興奮となっているのである。

・リンゴの芯の化石 → リンゴは近代に入ってきた植物なので古代の日本にリンゴがあったことになる
・こうもり傘 → 始祖鳥以前のコウモリそっくりの動物
・空き缶 → オウムガイの一種
・ほうき → 巨大なウミユリ

と、悉く大発見に結び付ける男。のび太が話しかけても「この発見で世界の古生物学会がひっくり返る」と大興奮して聞いてもらえない。そして父と娘で抱き合って感激するのだった。

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はち切れるほどの大声を出して、ようやく耳を貸してくれる男。そこで化石をタイムふろしきでゴミに戻して事情を説明すると、「なに!四月バカ!」と大ショックを受けて、ヘタヘタと力が抜けて腰を落としてしまう。

落ち込み切った男の近くに、ゴソゴソと一匹の虫が這ってくる。ヒョイと掴むとそれは三葉虫。男はそこで冷静になって、なぜ生きた三葉虫がいるのかと驚く。

この三葉虫は化石だったものがタイムふろしきで復元されたのである。おじさんは、ドラえもんたちが作ったものではないと確認すると、そこで顔を真っ赤にして大興奮。

「これは新種だよ。世界のどこからもこんな形の三葉虫は見つかっていない! それが生きて動いている!! 世紀の大発見だ!」

のび太たちのウソが、本物の大発見となったのである。

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ちなみに本作で大発見となった「三葉虫」はかなり有名な化石ではあるが、ほとんど日本では発掘されないという。カンブリア紀~ペルム紀に爆発的に増えた生物で、かなりの種類があって、一説には一万種にも及ぶという。本作が描かれた70年代には大量の新種が発見されたそうで、そうした事実が作品に影響している可能性がある。


さて、本作で描かれた人生をかけたアマチュア学者の大発見というモチーフは、また別の作品でも登場してくるので、これを次稿で紹介したい。


「ドラえもん」考察かなりたくさんやっています。


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