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学校の裏山初登場!『スリルブーメラン』【裏山作品リスト付】/事件はいつも裏山で①

「ドラえもん」の中で有名な「場所」と言えば、土管が積んである「空き地」が真っ先に思い浮かぶが、その次は「学校の裏山」ではないだろうか?

学校の裏山は、自然を残す小高い山で、てっぺんに千年杉と呼ばれる高い木が生えている。ウサギがいたり、恐竜の化石が発掘されたりする。山全体がのび太にとって憩いの場所であり、子供たちの遊び場でもある。しかしその一方で、何かと事件が起こるいわく付きの場所でもある・・!

そこで今回から数回に渡って、「ドラえもん」の学校の裏山を舞台とした事件の数々を紹介していきたい。


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ところで、「ドラえもん」の舞台は東京(練馬区)だが、その東京には裏山に該当する場所は見当たらない。

これは「ドラえもん」が1970年代に始まった漫画だから、ということは理由にならず、いくら時代が遡っても山が東京に現れるわけがない。しかも都心とは思えない大自然が残されている。

一説には、裏山は藤子先生が少年時代を過ごした高岡市の中心部にある古城公園内にある山がモデルではないかと言われている。藤本少年が通っていた学校の裏に位置していて、千年杉と呼ばれた高さ十数メートルの杉が生えていたという。

つまり、ドラえもんでの「学校の裏山」は、実際の東京ではなく、藤子先生の思い出が色濃く反映された場所なのである。


ちなみに「ドラえもん」を見て、東京にあんな山があるわけない、と怒る人は見かけない。それは誰しも、子供の頃の原体験として、学校近くの自然で遊んだことのある人がほとんどだからだろう。極端な話、学校の裏には必ず山(自然)があるものなのだ。


さてここで、「ドラえもん」のお話の中で、「学校の裏山」がそれとわかるように登場している話を一覧にしてみた。まずはそれを見てもらいたい。

「学校の裏山」登場作品
『スリルブーメラン』79.5
『ゴルゴンの首』79.8
『宝星』80.6
『異説クラブメンバーズバッジ』80.11
『のび太救出決死探検隊』80.12
『森は生きている』81.1
『ポラマップスコープとポラマップ地図』81.5
『のび太のスペースシャトル』81.6
『コンチュウ飛行機にのろう』81.8
『スベールガス』81.9
『なんでも空港』81.9
『うら山のウサギ怪獣』81.9
『タイムカプセル』81.11
『おやゆび姫をおいかけろ』82.1
『スネ夫のおしりがゆくえ不明』82.9
『大ピンチ!スネ夫の答案』82.9
『のび太航空』82.9
『ゼンマイ式潜地艦』83.7
『さらばキー坊』84.4
『大砲でないしょ話』84.5
『合成鉱山の素』84.5
『宝さがしペーパー』85.1
『断層ビジョン』85.2
『へたうまスプレー』85.4
『男女入れかえ物語』85.7
『スネ夫の無敵砲台』85.10
『けしきカッター』86.3
『世界の昆虫を集めよう』86.7
『全体復元液』89.11

今のところ29作品確認できているが、見落としがあることも十分に考えられる。今後見つけ次第加筆していくつもりだが、もしご指摘いただける方がいればコメント欄に残して貰えると助かります。

なお、太字になっているタイトルは既に記事にしているものと、この特集記事で紹介するものである。

今回リスト化してみて意外な発見だったのは、「裏山」の初登場が1979年と連載開始から10年近く経過した後だったということだ。それまで裏山と思しき自然溢れる丘が出てくることもあるが、明示はされていない。

79年の初登場後、何かと裏山が舞台となる作品が増えていき、1981年9月と1982年9月では3作同時に描かれている。自然を生かしたお話だったり、空を乗り物で飛ぶような話では、かなりの割合で裏山に向かっている。


それではまず、記念すべき「学校の裏山」初登場回を見ていこう。

『スリルブーメラン』「テレビくん」1979年5月号/大全集19巻

本作は「テレビくん」での連載開始第一話目である。ここでは、裏山全体の構造がわかるカットはないが、千年杉がきちんと登場する。

冒頭、のび太がカップヌードルを食べようと思った直前に、スネ夫から「ジャイアンが呼んでるぞ」と声が掛かる。スネ夫はみんなに「学校の裏山」に行くようふれ回っている。始めて裏山を言及したのはスネ夫なのであった。

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慌てて付いていくと、10メートル以上と思われる木のてっぺんにジャイアンが上っている。

ジャイアンは「今まで誰も登ったことのないこの木を征服したぞ」と意気揚々。おべっか使いのスネ夫は、そんなジャイアンに拍手を送り、「みんなでジャイアン君の勇気を褒めたたえよう」と集まった皆に呼びかける。

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するとのび太は「なーんだ! わざわざ人を呼び出したのは、こんなことだったの」とデリカシーの無い発言をしてしまい、案の定ジャイアンは「お前登ってみせろ!!」と激怒する。

ラーメンを食べるためと言って一度その場から離れて、ドラえもんに頼ると「スリルブーメラン」という道具を出してくれる。

投げると手元に帰ってくるブーメランに着想を得た道具で、モニターで探した行きたい場所に移動し、決められた時間を経過すると戻ってこられるというもの。危ない場所に短時間行って来れるので、安全にスリルと味わうことができるという仕掛けである。


早速30秒間にタイマーをセットして千年杉のてっぺんへと飛ぶが、ジャイアンの姿はなく無駄骨となる。家に戻ってモニターでジャイアンを探すと、自宅でまんじゅうを食べている。

そこで今度はスリルブーメランを一秒にセットして、ジャイアンの部屋に飛び込んで、残っていたまんじゅうを持って帰ってしまう。

これで楽しさを知ってしまったのび太は、メモリを20秒にして超高層ビルの屋上に飛び、時間となる直前に飛び降りて、その途中で部屋へと戻ってくるようにする。まるで「エスパー魔美」のテレポートのようで、子どもの頃からのお気に入りなシーンである。

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次に動物園のライオンの頭の上に飛ぶが、20秒にセットしたままだったので、20秒間逃げ回ることに。タイムの長さ次第ではスリルを味わうどころの騒ぎでは無くなってしまうことがよくわかる。その後は一秒ずつあちこちに飛び回るのび太。

するとジャイアンがのび太を呼びに来る。そこでドラえもんにモニターで見ていてもらい、千年杉の下に来たら機械を操作しててっぺんに移動させようと打ち合わせる。

ところが部屋にいたドラえもんは、押し入れからチョロと現れたネズミにびっくりしてタイムマシンでどこかへ行ってしまう。ドラえもんの大声を聞いたのび太のママが部屋まで上がってきて、モニターに映る海を見ながらスイッチを押してしまう。

するとのび太は海の底へとジャンプし、背後からサメの影が迫ってくる。

サメにズボンを食いつかれながら裏山へと戻ってくるのび太は、「どうだ、僕なんかこんな大冒険してるんだぞ」と騒ぎたて、ジャイアンたちは逃げ出すのであった。

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本作では千年杉が写るコマで、背景に数軒の家が建っているのが見える。初登場では裏山の高さの設定が低く、高岡の古城公園の雰囲気に近いのではないかと想像される。

少し余談になるが、高岡には仕事で短時間滞在したことがある。この時は「まんが道」愛読者でもあったので、どうしても高岡大仏が見たくて、少ないプライベートの時間をそちらに振り分けたのだが、何とこの時改修中で見ることが叶わなかったという苦い思い出がある。

あれから高岡を訪れることもなく、こんなことなら、古城公園で学校の裏山を体験してくるんだったと、今さらながら後悔しているのであった。


さて、学校の裏山関連の作品検証は、次回に続く。


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