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むしろドラえもんが前のめり!『珍加羅峠の宝物』/藤子Fの宝探し⑧

「ドラえもん」には宝さがしのエピソードが多いなあと気がつき、他の作品も色々と調べていくうちに、藤子先生は、膨大な数の宝探しエピソードが描かれていることが分かった。

思えば「宝島」や「インディー・ジョーンズ」「ONE PIECE」などを始めとして、冒険をして財宝を見つけるというストーリーは、エンタメの王道である。宝探しは、子供たちが喜ぶ一大テーマなのである。


これまで「藤子Fの宝探し」と題して、7本の記事を書いたが、ここまで紹介できていない「ドラえもん」の宝探しエピソードがいくつか残されている。

もう宝探しは飽きたよと思われるかもしれないが、後少しばかりお付き合い下さいませ・・・!


『珍加羅峠の宝物』(初出:宝さがし)
「小学六年生」1973年8月号/大全集1巻

「ドラえもん」において「宝探しをしたい」と言い出すのはのび太であることが多い。さすがに何度も言ってくるので、『南海の大冒険』では、ドラえもんに「それにしても君は宝探しが好きだねえ」と呆れられている。


ところが、初期ドラにおいては事情が異なる。むしろドラえもんの方が宝探しの野望を強く抱いているのである。

何度も書いているが、連載開始直後の「初期ドラ」では、ドラえもんはのび太の保護者としての立ち位置を確立しておらず、むしろ強引に自らの欲望に突っ走ったりして、騒動の中心になったりする。

下記の作品などが一例だ。


本作において、宝さがしを始めるのは、のび太ではなくドラえもん。いきなり「ものすごおく良いこと思いついた!」と大はしゃぎして、のび太から100円を借りると、それをすぐにポイと遠くへ捨ててしまう。

当然騒ぐのび太に、「宝探し機」という100m以内にある宝を見つけ出す道具を出して、そのテストをすると言い出す。

ところが「宝探し機」を持って空き地を歩き回っても、ちっとも反応しない。100円とはいえ、のび太の現在の全財産で、「冗談じゃない」と再度騒ぎ始めるのび太。

そこでドラえもんは気がつく。この機械は千円以下のものは宝と認めないということを。ま、それは当然で、いちいち落ちている小銭で反応されても困るというもの。むしろ1000円以上を宝として良いものか疑問に思うところである。


100円で取り乱すのび太に、ドラえもんは「もうすぐ億万長者にしてやるから」となだめすかし、実はこういう本を読んだんだと言って、「埋もれた財宝」というタイトルの書籍を見せてくる。『南海の大冒険』で「宝島」を読んで興奮するのび太と何ら変わらないのである。

「埋もれた財宝」によれば、日本中に宝物が埋まっているという伝承があるという。ドラえもんはそこに目を付け、「宝探し機」を使えば簡単に大判小判がざあくざくだと、夢を語る。

「もし1億円見つけたら、二人で分けても5000万円!」と皮算用するドラえもんとのび太。のび太は「さっきの100円は君の分から返してくれよな」と細かいツッコミを入れる。


よせば良いのにジャイアン・スネ夫・しずちゃんにこれから宝探しに行くと宣言。「本気?」としずちゃんにもコケにされ、3人に大いに笑われる。「1億円見つけたらこっちが笑ってやるさ」と、決意を新たにするドラえもんとのび太。


ドラえもんが着目したのは、「珍加羅峠」という山で、幕末の頃幕府の重臣が二千万両余りを埋めたという記録が残されているという。

ちなみに「ちんから峠」という童謡が存在しており、「ちんからホイ」という掛け声が印象的な曲である。「ちんからホイ」と言えば、大長編の「のび太の魔界大冒険」において、魔法を使う時の呪文として採用されている。ちんからというフレーズは、藤子先生お気に入り一節だったに違いない。


宝さがし機が反応するのは、宝からの距離が100m以内になった時。それは広大な山において、簡単に見つかるものではない。あてどなく、山奥へと進んでいくと、土を掘っている音が聞こえる。「先を越された」と騒ぐのび太たちだったが、それは単純に畑を耕しているだけであった。

その後も全く反応が無い中歩き続け、嫌気が差したころにキーンコーンカーンと宝探し機が強く反応する。期待を胸に音が鳴る方へ走る二人。機械が指し示したのは、意外にも山間にある農家の庭である。

宝が出たらこの家の人に分ければいいということで、さっそく掘ってみると、ツボが出土する。喜びを噛みしめて中を見ると、出てきたのは預金通帳。出てきたツボは、こちらの農家の金庫であったのだ。


「あてにならん」とのび太は言うが、通帳を見つけたということは、宝探し機は優秀だということになる。さらに捜索を続ける二人だったが、やがて機械がかなり大きな反応を示す。

今度こそと走っていくと、機械が示したのはリュックを背負って山歩きをしている男性である。リュックの中には一億円が詰まっているというのであろうか・・。男性は「余計なお世話だ」と言って、逃げるように走り去ってしまう。


誰がお金を持っていようがその人の勝手だろうが、ドラえもんはリュックの男を「怪しい」と決めつけて、後をこっそり付けていくことにする。すると男性は、先ほどツボを掘り当てた農家へと入っていく。

会話をこっそり聞くと、リュックの男が大金を用意していて、「是非これで山を売って欲しい」とお願いしている。ところが農家の男性は、「ご先祖から伝わった山なので売らない」と突っぱねている。

リュックの男は山を買うために、大金を持ち歩いていたのである。事情が分かって、その場を離れるドラえもんたち。


山での捜索を再開するのび太たち。けれどさっぱり機械は反応せず、しまいには土砂降りに遭ってしまう。こうなるとのび太は愚痴全開。

「大体始めから僕はこんな話信用してないんだ」
「僕の百円返せっ!」

二人は大雨の中、大口論となるのだが、そこで再び「宝探し機」が強く反応する。のび太は期待していないが、ドラえもんには手応えがあるようだ。


しばらく進むとがけ崩れが起きていて、道が塞がっている。この土砂降りのせいだろうか。機械はその土砂の中を強く刺し示す。「ここだ」と狙いを定めて、二人が土砂を掘っていくと、中から見覚えのあるリュックが出てくる。

そしてリュックを背負った先ほどの男性も発掘される。どうやら、山崩れに男性が巻き込まれて、あやうく生き埋めになりそうなところを、ドラえもんたちが掘って助けたことになったようだ。

男性はほんのお礼だと言って、リュックから札束を二人に手渡す。パッと見100万くらいの大金である。狙っていた徳川の財宝とは違ったが、ひと財産掘り当てたのは間違いない。


家に戻り、のび太とドラえもんをバカにしたジャイアンたちに、札束を山の中で掘り出したと自慢する。俄かに信じ難いが、「少なくともウソではない」とドラえもんも追従するのであった。



さらにもう一本、ドラえもん主導の「宝探し」エピソードがあって、一気に紹介しようとも思ったのが、長くなりそうなので別記事といたします。次回も乞うご期待・・・!


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