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「なんていやらしい改造!!」『改造チョコQ』/運転は難しい③

皆さま、自動車の運転は好きですか??

自動車と言えば、若い人の車離れとか、高齢者の免許返納とか、車業界にとってはあまり嬉しくないニュースが続いている気がする。気のせいか以前より自動車のCMも見かけなくなっているようにも思う。

一昔前は自動車を持つことは若者のステイタスだったし、ドライブは必殺の動くデートスポットだった。もう、今はそんな時代じゃないのだろうか?

僕自身全く車の運転をしないこともあり、TOYOTAの社長が変わることくらいしか自動車業界の最新状況を掴めていないわけだが、きっと他の業界同様様々な問題もあったりするのだろう。


藤子作品では運転に関する作品は、多いようで少ない。定期的に車を愛用しているのは、スネ夫のパパか、スネ吉兄さんくらいではなかろうか。

むしろ藤子キャラたちは、運転を苦手としてるケースが多いようだ。

のび太のパパは何年たっても実地試験で落ちて免許すら取得できていない。「チンプイ」のエリのパパは何年もかけて試験を突破したが、性格的に運転に不向きで、事故を危惧してママやワンダユウじいさんに運転を全力で止められていた。

そうした記事を書いたので、宜しければご参照下さい。


本作では運転免許の話題から離れて、のび太が運転に挑戦し、これまた一苦労するようなお話をご紹介する。ただし、これまでの作品とは異なり、運転の楽しさもきちんと強調しているお話でもある。


「ドラえもん」『改造チョコQ』
「小学五年生」1982年12月号/大全集11巻

『ミニカー教習所』と同様に、本作もミニカーに乗車して運転するお話。ただし今回のミニカーは、本作発表時に子供たちの間で一大ブームとなっていた「チョロQ」ならぬ「チョコQ」となっている。

チョロQは1980年の年末商戦に投入されたタカラのミニカーシリーズのこと。小型軽量が特徴で、10円玉を車体後部に差し込むとウイリーするというギミックが大変に受けた。

もろチョロQ世代の僕も数台持っていたし、さらには愛読していた「コロコロコミック」にて「ゼロヨンQ太」というチョロQを題材にしたマンガもあったりして、とても身近なおもちゃだったのだ。

子供たちのブームに目ざとい藤子先生が、このチョロQ人気に目を付けたのはさすがの一語に尽きよう。


「ドラえもん」の世界でもチョロQ(作中ではチョコQ)は大ブーム。ジャイアンやしずちゃんまでチョコQでレース遊びをしている。そしてこの手の最新のおもちゃを遊ばせたら天下一品のスネ夫も、チョロQの改造マシーンをいくつも所持して、みんなに自慢する。

スネ夫と違って、この手のおもちゃブームについていけないのび太は、スネ夫から改造チョコQを触るなと意地悪され、いつものように「自分もアッと言わせるような大改造をしてみせる」と大見えを切ってしまう。

バカにされて悔しいのもわかるが、深く考えずに口から出まかせしてしまうのがのび太の悪い癖である。


帰宅し唯一持っているチョコQの改造に着手するが、バラバラに壊れてお終い。結局、よ、よ、よ・・と泣くことになり、いつものようにドラえもんが助け舟を出してくれる。

そこでドラえもんが取り出しのが「未来のチョコQ」である。なんとゼンマイひと巻きで40キロ走るという。これをベースに、「万能改造自動ドライバー」を使って、思った通りの改造車を作ろうということになる。


作業しやすいようにビックライトで大きくして、人が運転できるように改造した後、スモールライトでミニカーに戻す工程を踏む。ライト二種をヘッドライトにしてしまうミスはありつつ、改造チョコQは完成。

のび太も小さくなってチョコQに乗り込み、さっそく運転を開始する。最初はアクセルを踏みすぎて壁に激突しかかるが、すぐに慣れて、運転する喜びを感じるのび太。

けれど、自分が楽しくなってくると人に見せびらかしたくなるのものび太の悪い癖。そこで、チョコQに乗って、バカにしたスネ夫とジャイアンの元へと走り出す。

のび太が調子に乗ると、かなりの高率で痛い目に遭う。今回もドラえもんは、なんか悪い予感がして仕方がない。・・・そしてこの予感はもちろん的中することになる。


スネ夫の家では、広い庭を一周するチョコQ専用のコース場が作られている。池越えがあったり、ジャンプ台が付いていたりと、チョロQファンの子供たちが心から羨ましくなるようなコース設計となっている。

ここでは、スネ夫とジャイアンが、どちらがゼンマイをなるべく少なく回してチョコQをコース一周できるかを競っている。

そこへ、のび太の操縦するチョコQがコースに侵入してくる。いつの間にか相当なドライビングテクニックを身につけたのび太は、コースを思うがままに乗りこなし、スネ夫とジャイアンを驚かせる。

よせばいいのに、のび太がチョコQから降りてきて、ジャイアンたちのレースごっこを「遅れてる、ダサイ」とバカにしたため、二人はカンカン。「なんでえ、こんなもん」と言ってのび太のチョコQを拾い上げると、遠くにぶん投げてしまう。

さらに、ジャイアンたちはたくさんのチョコQを小さくなったのび太に向かって次々と走らせて、のび太を轢かせるという非道ぶりを見せる。「あんまり威張るからだ」と、返り討ちに遭ってしまうのび太なのであった。


遠くに投げられてしまったチョコQを探しに、トボトボと歩き出すのび太。小さくなっているので、その道のりは険しい。そこへ心配になったドラえもんが助けに来てくれる。

のび太が酷くジャイアンたちにイジメられたことを聞くと、ドラえもんは「許せない!カタキはとってやるぞ!!」と頼もしく反応してくれる。


ここまでの展開を整理すると・・・

①のび太がバカにされる
②のび太が調子に乗ってバカにし返す
③ジャイアンたちにバカにした仕返しをされる

という、定番の進行。

そこに追加で、
④ドラえもんの力を借りてジャイアンたちに仕返しをする
という流れとなる。

仕返しがいつもより繰り返される展開であるのだ。


ドラえもんも小さくなったチョコQに乗り込み、スネ夫宅へと逆襲に向かう。チョコQのヘッドライトにしてあるビックライトを使って、スネ夫たちのチョロQを巨大化させて、二人にアタックさせる。

さらに庭の石をチョコQで跳ね飛ばし、ジャイアンたちにぶつける。そして逃げ出した二人をロープで縛りあげると、二人は「許してくれェ、悪かったよォ」と泣いて詫びるのであった。

これにてのび太の仕返しは終了。気も晴れたので、ここで退散すればよかったのだが、さらにもう一人見せたいと言って、しずちゃんの家に向かうことに。いつだってしずちゃんの気を引きたいのび太なのである。


さて、ここまでの流れ。

①のび太がバカにされる
②のび太が調子に乗ってバカにし返す
③ジャイアンたちにバカにした仕返しをされる

④ドラえもんの力を借りてジャイアンたちに仕返しをする

そこに⑤しずちゃんにも自慢しにいくが追加される。

「ドラえもん」は良いことと悪いことがゆりかごのように交互に描かれるのが一つの特徴なのだが、この追加の⑤自慢は、流れ的に非常に危うい行動である・・。


しずちゃんの家に着き、改造チョコQを見て欲しいと大声を出して呼び出すのび太。しずちゃんは何事かと家から出てくるのだが、のび太の姿はない。右往左往して、小さくなってチョコQを運転しているのび太を見つけるしずちゃん。

小さくなって下から見上げる形となるのび太たち。その角度だと、のび太たちの視線はしずちゃんのスカートの中に向かうことになる。

・・・ということで、

「なんていやらしい改造!!」

としずちゃんに激怒され、「けっしてそんなつもりじゃ・・・」と言い訳するも、顔は半分にやけ顔ののび太とドラえもん。

そして次の瞬間、グシャとチョコQはしずちゃんに踏み潰されて、大破の憂き目に。「だから言ったのに」と、ドラえもんの悪い予感は、結局大当たりとなったのであった。


のび太が案外運転が上手であることがわかる一作。けれど、運転はともかく、ドラえもんの道具を借りて楽しくなってくると、人に自慢しようとするのが、のび太の欠点。

そしてこの欠点のため、のび太の車は、二度と乗れないくらいにスクラップになってしまうのであった。



「ドラえもん」のレビューしています。


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