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実はのび太のパパは運転が得意?『ミニカー教習所』他/運転は難しい①

藤子F先生って自動車の運転免許証を持っていたのだろうか。乗り物が好きだったのは、メカなどのデザインを見ていれば間違いないと思うし、ドライブを描いた話もある。

一方で運転免許がなかなか取れなくて・・・という話題の作品も多い。これからいくつか見ていくが、運転するのが難しいという描写は、かなり真に迫っていて、何か作者の感情がこもっているように思えてくる。


ということで具体的に、まずは代表的な「運転が難しい」エピソードからご紹介しよう。

「ドラえもん」『ミニカー教習所』
「小学六年生」1977年6月号/大全集5巻

冒頭、がっかりした様子でのび太のパパが帰宅してくる。ママに小声で耳打ちすると、「またダメだったの。まあ、良かった」と安堵の表情を浮かべる。パパは「ダメで良かったということがあるかっ」とプリプリする。

のび太がその訳をママに聞くと「運転免許の試験に落っこちた」という。のび太の「またあ!?」という反応から、パパが試験に落っこちるのはこれが最初ではないらしい。

ママは「パパの動かす車なんて危なくて乗れないので、これでいい」という考えだが、のび太はドライブ・マイ・カーの憧れを隠せない。


のび太とドラえもんは、なぜパパが落っこちてばかりか考える。ドラえもんは、のび太に似て運動神経が悪いので下手なのだと主張。この話を聞いたパパは、会社が忙しく教習所に行けず、練習不足が原因だと反論する。

こう言っている傍から教習所に行けばいいと思うのだが、パパは車を練習できる庭もない、などとほぼ屁理屈をこねて、「練習さえできたらなあ」などと嘯く。何かと理由を付けて勉強しないのび太そっくりなのである。


そこでドラえもんは「ガリバートンネル」を使って小さくなって、ミニカーで練習すればいいと考える。さっそく庭に運転練習用のコースを作る。交差点や信号機も用意するなど、わりと凝った作りである。

のび太はパパに練習させる前に、自分が試運転をすると言い出す。ドラえもんは「心配だ」と一言。そしてこの心配はすぐに当たってしまう。


ミニカーと言えど、用意した車両は、オートマチックではなく、ミッション車で、これは初乗りの小学生が乗りこなせるものではない。

なお、本作が描かれた1970年代は、まだまだAT車が主流となっておらず、AT限定免許などもなかったはずである。

ドラえもんが、「静かにクラッチを繋ぎ・・」など、妙に詳しく運転のアドバイスを送るが、いきなりアクセル全開で走り出し、カーブでも減速しないものだから、コースから外れてしまう。そして、信号も無視して突っ走り、そのまま庭の壁へ激突してしまう。


ところが、コースに戻らず「自由に走り回る」とのび太が宣言すると、確かに家の庭なら誰にも迷惑掛からないという話になり、運転の調子が出てくる。

教習所では、隣に座る指導員から減点方式でチェックが入るため、余計に緊張して、伸び伸びと運転できない気持ちになったりする。不自由さから、固くなってかえってうまく乗りこなせないということもあるのだろう。

草むらの中を飛ばし、ゴミの山をスタントカーのように乗りこなす。のび太は枠を外れたことで、意外にも運転の才能を開花させたようで、同乗するドラえもんも、「とばせとばせ、全速力で」とノリノリなのであった。


車の音を聞いて庭に飛び出してくるパパ。自分のために練習コースを作ったと聞いて、涙をこぼして喜ぶ。

実際に乗ってみると、パパも教習官の束縛から解放され、思いの外運転が上手である。のび太と違って、きちんとコースも外れないし、速度も十分。思わずドラえもんも、「鮮やか!」とパパの運転を褒める。

この調子なら次の試験合格は間違いなし。パパは自信がついたということで、普通の道路にチャレンジしたいと言い出す。

のび太たちは、対向車も歩行人もいない庭と違って、外は危ないので止めた方がいいと指摘するが、「ミニカーなら人を跳ねる心配もない」ということで、一般道をミニカーで走り出していく。


ところが走行してすぐに、ドガチャガと派手な激突音が聞こえてくる。子供のダンプカーのおもちゃに衝突し、パパの乗ったミニカーは大破。「やっぱりパパに運転は向いてないのかな」とのび太。

どうもパパは、本番で失敗してしまうタイプのようである。ママが、パパの運転に乗りたくないと言っていたが、夫のこうした性格を直感的に見抜いていたからなのだろう。


さて、のび太のパパはその後運転免許を獲得できたのだろうか。本作から実に9年後、まだ相変わらず教習所に通っている事実が描かれる。

『四次元若葉マーク』
(初出:「お子さま練習カー」と「四次元若葉マーク」)
「小学三年生」1986年3月号/大全集15巻

こちらは簡単にご紹介する。

本作では、パパが教習所から帰ってきて、教官から「あんたみたいな下手くそな運転しないほうがいい」と悪口を言われたらしく、イライラしている。この時ものび太に「僕に似て運動神経が鈍い」と指摘されている。

パパは自由に伸び伸び練習したいということで、ドラえもんは「お子さま練習カー」という、名前のわりに本格的なスポーツカーを用意し、さらに「四次元若葉マーク」という貼ると四次元世界に入り込めるシールを付けてあげる。

晴れやかに、伸び伸びと運転の練習に飛び出すパパ。ところが、同じく四次元若葉マークを貼ってのび太が町へと繰り出していくと、パパの運転する車と正面衝突。四次元同士だとぶつかってしまうのであった。

パパは息子を轢いてしまい、「やっぱり運転は止めた方がいいかなあ」と一言。四次元世界のたった一人の歩行人を跳ねてしまうようであれば、運転中止が賢明ではないだろうか・・・。


「ドラえもん」の考察をしています。


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