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のび太の地震訓練とは?『地震なまず』『地震訓練ペーパー』/地震に備えろ!③

90年後の今日。

2112年9月3日は世界中で最も有名なネコ型ロボットドラえもんの誕生日である。おめでとうございます!!

本稿では残念ながら、ドラえもんの誕生日とは全く関係お話をご紹介いたします。

ここまで「地震に備えろ!」と題して、地震に関する2本の記事を書いた。

2作とも子供たちの身近な恐怖である地震をテーマに、「怖がる主人公とバカにする友だち」という構図を作っている。人工的に地震を起こすと、主人公をバカにしていた友だちも、地震を結局は怖がるというオチとなっている。

全く違うようなお話と思いきや、共通項のある二作なのである。

本稿では、「ドラえもん」における地震エピソードを一挙2作品見ていく。同じパターンを繰り返していく藤子作品の特色を見て取ってみたい。


「ドラえもん」『地震なまず』
「小学五年生」1981年6月号/大全集9巻

本作は極めてシンプルなストーリーで、これまでの2作同様、地震を怖がる主人公→バカにする友だち→人工地震で友だちも怖がる、という流れとなる。

ざっと確認がてらストーリーを見ていこう。

冒頭では珍しくのび太がスネ夫の家で、スネ夫と二人漫画を読んで遊んでいると、ゴゴゴゴと比較的大きな地震が発生。のび太は「キャアアー」と顔色を一変させ、部屋中をドタバタ所狭しと慌てて走り回る。

そのままなぜか大きめのくずかごに頭を入れてしまう失態を晒す。地震を怖がるにもほどがある。のび太は「このことを誰にも言わないで」とお願いするが、意地悪なスネ夫は聞く耳持たず、言いふらそうということでしずちゃんに電話をしようとする。


のび太は大急ぎで「ドラえも~ん」と泣き叫びながら帰宅。訳を話して、「みっともないから早く何とかして欲しい」と懇願する。どら焼きとお茶でティータイム中だったドラえもん。「しまらない話だなあ」と言いながら、「地震なまず」というなまず型のロボットを出す。

このなまずは、狙った人物の足元に潜り込み、その人物が「ジシン」という言葉を出すと、その人の足元で暴れ出すという。おそらくは、個人的に大地震を体験することができる訓練用の道具ではないかと思われる。

これをさっそくスネ夫の足元に送り込めば、スネ夫が誰かに地震の話題をした場合に、揺れ出すので地震の話は続けられなくなるという狙いである。この道具の本来の用途とは違ってそうだが、今回の場合はピッタリの道具だ。


スネ夫を探しにいくのび太たち。スネ夫はみんなに言いふらそうとしたものの、電話が通じないので直接みんなに伝えるべく外に出てきていた。都合の良い展開ではある。

さっそくスネ夫の足元に「地震なまず」を潜らせる。スネ夫がジャイアンを見つけて、先ほどののび太の失態を話そうとする。ところが「地震が・・」と切り出した途端に自分の足元がゴゴゴと大揺れ。

たまらず「地震だあ」と逃げ出して、道端のゴミ箱に体を突っ込んでしまう。くずかごに頭を入れたのび太と同じ反応で、それを見たジャイアンに大笑いされる。


この調子で別の友だち(おそらく安雄)に話そうとすると、またまた地震が起こり、ドブに体を突っ込んでしまう。そして「臆病だなあ」と笑われてしまう。

悔しいスネ夫。彼はこのような不思議な事態となると、この世界で唯一ドラえもんの仕業だと気づく質(たち)なので、今回もその方向で思いを巡らす。「どうも、あの言葉(地震)を口にするとあれ(地震)が起こるんだ」と察する。

それでは口に出さずに紙に書いてみたらどうだろう。「じしん」と試しに書いてみると、特に異変は起こらない。これでいけるとスネ夫は確信し、しずちゃんに話して、今度こそのび太をバカにしようと試みることに。

ここまでして一人の友だちをコケにしようとするスネ夫。意地が悪いのか、執念深いのか、よくわかない男だ。


そしてしずちゃんに対してしゃべり出す。「のび太と漫画を読んでいたらこうなった」と言って、「じしん」と書かれた紙を見せる。その様子を見ていたのび太たちは、「あ~うまく考えたな!!」と驚く。

スネ夫はそのまま話題を続ければ良かったのだが、のび太たちに

「へへん、おつむの良さにかけては、自信があるんだ」

と調子づいてしまう。ところが彼が発した自信もジシンと発音されるため、地震なまずは「地震」という言葉として反応、いつものようにゴゴゴとスネ夫を揺らす。

スネ夫はまたしても地震を怖がり、よりによってしずちゃんのスカートの中に頭を潜らせる。「キャーッ、嫌い嫌い」と真っ赤になって逃げようとするしずちゃんなのであった・・。


本作の展開は、ここまで見てきた通りに、これまでの2作品と全く同じ流れの作品である。具体的に、地震を怖がる主人公→バカにする友だち→人工地震で友だちも怖がるである。

さらに、自信と地震の言葉遊びは「キテレツ大百科」の『地震の作り方』にも登場していた。これまでの類似作品と考えて良いだろう。

ちなみにこのラスト一コマでは、電柱に「藤子スタジオ」という看板が貼ってある。



「ドラえもん」『地震訓練ペーパー』
「小学三年生」1984年6月号/大全集15巻

さてさらに3年後に再び地震をテーマとした作品が描かれる。

こちらは「ドラえもん」における2作目の地震のお話なので、また別角度で描かれていくのだが、これまでの作品と全く共通項がないわけでもない。

冒頭では、のび太が部屋で寝転がっていると、ママが一階の廊下でドシンと派手に転んで尻もちをつく。するとグラグラと少しだけ家が揺れ、これをのび太は地震と勘違い。

「地震だ!!」と飛び起きたのび太は、ダダダダと外まで一気に逃げ出して、電柱にしがみ付くという慌てよう。トンガリのパパが転んで地震と勘違いしたキテレツと全く同じ反応である。

ママとしては転んだくらいで地震と間違えられたので、失礼な!と怒り、必要以上にビクビクするのび太に説教開始。

「地震が来ようが津波が来ようが、山のように動かない肝っ玉を持ちなさい!!」

といつになく大仰な言葉で発奮を促す。この大げさぶりが、ラストへの伏線にもなっているので、注目しておいてもらいたい。


さすがに訓練が必要ということで、ドラえもんは「地震訓練ペーパー」という座布団大の紙でできた敷物を出す。目盛りが付いていて、ここで震度を調節する仕掛け。

「地震訓練ペーパー」にのび太が座り、震度1から少しずつ大きい地震を体感させていく。「1」は余裕だが、「2」「3」と上げていくと、たまらず怖がって逃げ出すのび太。


ここから本格的な訓練開始。逃げるのを許さず、大きな地震の揺れに耐えていく。すると少しずつ慣れていき、むしろ揺れを楽しむ余裕が出てくる。そしてついに震度7でも立てるようになる。

続けて、不意に地震が来た場合の訓練に切り替える。「地震訓練ペーパー」に寝転がり、寝込んだところで機械を作動させる。当然、反射的にビックリして飛び上がるのび太。しかしながら慣れとは恐ろしいもので、その内大きな揺れの中でも眠り続ける能力を獲得する。


自分はどんな大地震でも大丈夫ということで、今度は友だちにも訓練させようと考える。しずちゃんの家に行き、無理やり地震訓練を始めるのだが、間違えてしずちゃんのママが「地震訓練ペーパー」を踏んでしまい、持ってきたケーキとジュースをまき散らしてしまう。

続けてスネ夫の家に行くと、ちょうどスネ夫が巨大な戦艦のプラモを完成させたばかりで、これを地震で壊してしまう。ジャイアンにも踏ませてビビらせるのだが、怒ったジャイアンは「地震訓練ペーパー」をビリビリに破ってしまう。

風に飛ばされ散り散りとなった「地震訓練ペーパー」を、道路の通行人や自動車が踏んで、大騒ぎ。みんなを訓練させる目的だったのに、友だちや無関係な人たちまでに迷惑を掛けただけなのであった。


その夜。居間で家族みんなでTVを囲み「パーマン」を見ていると、大きめの地震が起こる。「大きいぞ!!」ということで、のび太以外の3人はダダダと家の外へと逃げ出す。

地震が収まり、冷静となるパパ、ママ、ドラえもん。ところが部屋に戻ると、のび太は地震に全く気が付かなかったように、そのままパーマンを見続けて笑っている。

「逃げ遅れて家の下敷きになったらどうする!!」とパパ。そしてママは、

「どうしてあんたは、そうのろまなの!!」

と大激怒。最初は「山のように動かない肝っ玉を持ちなさい」と言っていたはずだが、いざ肝っ玉を示すと怒り出すのは、少々納得できないところである。

地震に慣れるにも大事だが、度を超すのも良くない。適切に怖がり、適切に冷静になる。そんな対応が求められるのであろう・・・。


さて、ここまで地震に関係するドラえもん2作品を見てきた。余談ではあるが他にも地震が出てくるお話がある。

まずは『くせなおしガス』(「小学五年生」1974年11月号)。ここではパパの貧乏譲りのクセが誇張されて、大地震のようになる。他にも、大長編『のび太の魔界大冒険』では、地震が日常茶飯事の世界が出現している。



ドラえもん、お誕生日おめでとうございます。色々と考察させてもらってます。




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