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U子、JUDOに出会ってしまう。『U子ちゃんの芸術指導』/ YAWARA!U子②

「オバケのQ太郎」の魅力の一つに、個性的なオバケ仲間の存在がある。連載開始当初は、オバケと言えばQ太郎だけだったが、空の上にオバケの国が存在し、Qちゃんにも家族がいることが後に判明する。

しばらくして、妹のP子は人間世界に留学することになり、ユカリさんという女子中学生の家に居候することになる。

さらには、アメリカからQ太郎のライバルとなるドロンパが来日。お隣の神成さんの家へと住むことになる。

こうしてオバケの世界は広がっていくのだが、Qちゃんはそれでも不満が残っていた。それは、自分にはガールフレンドがいないことである。ただ、厳密には完全にいなかったわけではなく、番外編ではミドリお姉さんと懇意になっている。


前稿『おてんばU子』では、Qちゃんが人間の女の子の友だちを探して文通作戦を試みるが、見事に全敗。そんな傷心のQちゃんの前に、突然女の子のオバケが飛んできて、すったもんだの挙句、Qちゃんの優しさが伝わって、友だちになる。

そして、U子さんは正ちゃんの友だちよっちゃんの家に居候することに。


前稿でも書いたが、「旧」オバケのQ太郎においては、U子さんはマイナーキャラ扱いで、「小学六年生」に都合5回登場するのみであった。

とは言え、この5回でU子さんはすっかり人間社会に溶け込み、柔道と出会い、柔の道を突き進み始める。ここで培われたU子の魅力は、やがて「新オバケのQ太郎」で開花することとなる。


本稿ではU子とその後の彼女のトレードマークとなる「柔道」との出会いが描かれる『U子ちゃんの芸術指導』をご紹介してきたい。

『U子ちゃんの芸術指導』
「小学六年生」1966年3月号/大全集11巻

乱暴なまでのガサツさがウリ(?)のU子。Q太郎がU子を尋ねてよっちゃんの家に行くと、二階から飛び降りて「オッス!」と元気が宜しい。今テレビで「7人のギャング」を見ていて、4人殺されてあと3人残っているので待ってくれと言われる。

QちゃんはそんなU子を見て、「もうちょっと優しく日本女性らしくならないものか」とよっちゃんに相談すると、自分のおばさんに躾けてもらえばいいとアドバイス。おばさんは、お茶・お花・お琴の師匠をしているのだという。


そこへ「お待ちどお。やっと7人死んだわ」と言ってU子が戻ってくる。さっそくよっちゃんに紹介状を書いてもらって、師匠しているおばさんの家へとU子を連れて行く。

QちゃんとしてはU子だけ預けて自分は帰るつもりだったが、一人じゃつまらないと言われて、二人で習い事を教えてもらうことになる。

ここから、礼儀作法・お茶・お琴・お花と習っていくのだが、礼儀とか作法から一番遠い場所にいるU子とQちゃんなので、案の定、滅茶苦茶なことになってしまう。

いかにもオバQ的なボケの畳みかけが行われていくので、これを一応全部拾っておこう。


①礼儀作法

・Qちゃん「早いとこおっぱじめようや」
・深く頭を下げるお辞儀→そのまま寝てしまう
・襖の開け閉めは足で(U子)

②茶の湯

・U子「お茶なんてガバチョと飲んじゃえばいいんでしょう」
・言葉の始めと終わりに「お」と「ございます」をつけると丁寧→「おシェーでございます」→よそ様のマンガを真似してはなりませぬ
・茶菓子をパクパク食べてしまう
・お茶を飲んで「おしぶい」「おまずい」
・インスタントコーヒーを茶釜にぶち込む

③お琴

・指が無いのでツメをつけられない→猫を連れてきて引っかかせる
・エレキギターのように引いて、モンキーダンスを踊る


ここまで、U子とQちゃんでボケ倒し、師匠の先生もアングリ。Qちゃんだけを陰に連れて行き、「U子をおしとやかにするために来たのに自分からそんなことでどうするのか」と問い質す。

一度は「そうでした」と反省するQちゃんだったが、それもすぐに忘れてしまうようで・・・。


④お花

・U子「花なんか花瓶におっ立てればいいんでしょ」
・生花入門に「投げ入れ」とあるのを見つけて、実際に遠くから花を投げ入れようとする
・大量の花を「投げ入れ」ると、誤って師匠の口にの中に投げ込んでしまう。さらに倒れた先生に対して、芸術的だということでそのまま放置
・前衛生花に挑戦し、空き瓶や空き缶、壊れたヤカンなどを木に括りつける

と、ここまでやりたい放題をした挙句、U子たちは追い出されてしまう。Qちゃんは「いつかはこうなる予感がしてたんだ」と感想を述べるが、確かにいつものQちゃんのパターン通りである。

QちゃんはU子に「日本的な奥ゆかしさを身につけて欲しかった」と真意を説明すると、U子は「Qちゃんのために自分の力で日本的なものを身につけるわ」と素直に答える。少しはガサツな自分を認識していたのだろうか。


彼女がどうなるか楽しみなQ太郎。するとさっそくU子がやってきて、今お稽古から帰ってきたところだという。もっと練習したいけど相手がいないというU子。果たして彼女はなんの稽古をしてきたのか・・。

そう、それが柔道(JUDO)である! U子は「最も日本的な柔道を始めたのよ」と言ってQちゃんを放り投げる。


Qちゃんのオーダーは「日本的な奥ゆかしさ」だったが、「奥ゆかしさ」の部分はすっかり忘れ去られ、「日本的な」武術の道を選んでしまったようである。

もともと腕力に自信あったおてんばU子さんは、ここで初めて柔道と出会ったわけだが、その後まるで水を得た魚のように柔道にのめり込んでいく。そして今回のように練習台にされて、迷惑を被るのはQちゃんということになる。

次稿では柔道にハマり、どんどんと強くなっていくU子について見ていきたい。


「オバQ」の紹介しています。


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