見出し画像

いのちのやくそく ・ こどもたちのみらい 「Cちゃんについて」 144

ーーーー
いのちのやくそく 」(池川明、上田サトシ著、2016年8月1日、センジュ出版より発売)より抜粋して、少しずつ「マガジン『いのちのやくそく』」に書いています。

今回は、「Cちゃんについて」を書いています。(144ページ)
スピリチュアル・ミッドワイフの活動を始めて、多くの親子と関わるようになって、わたしたちが生きる目的は何気ない日常のほんのちょっとした幸せを、家族で分かち合うことなんじゃないかと思えるようになりました。

アルジャーノン・プロジェクトに書かれている「いのちのやくそく」を読んでダウン症の赤ちゃんを出産された方のエピソードも、ご一緒にお読みいただけますと幸いです。

ユーチュブに「23週でうまれた赤ちゃん」のお話がアップされています。合わせてお聞きください。
ーーーーー


数年前、NHKの「あさイチ」という番組で放映された番組では、「出生前検査」について「出生前検査でお腹の中の胎児がダウン症と判断されたとき、あなたならどうするか?」という難しいテーマを取り上げていました。

胎児が81分の1の確率でダウン症と診断された東尾理子さんと夫の石田純一さんが勇気を持って出演されており、おふたりの心の中の葛藤や周りの人たちのさまざまな反応が取り上げられていて、大変興味深い内容でした。番組の中では、ダウン症の胎児を対象とした妊娠中絶などについても紹介されており、倫理的にもいろいろと考えさせられたのでした。


これまでたくさんのご家族とお会いしましたが、中でも、Cちゃんの家族はとくに印象に残る家族でした。

それはCちゃんがまだお母さんのお腹の中にいた頃のことです。ある日、Cちゃんのお母さんが街を歩いていると、明らかにダウン症とわかる子どもを連れたお母さんが反対側から歩いてきたそうです。

「あんな子どもには生まれてこないでね」

お母さんは思わず、お腹の中のCちゃんにそう言ったそうです。
それまでお母さんは妊婦検診のときに、エコーでお腹の中のCちゃんの写真を撮っていました。いつも顔が正面を向いていたのですが、その日を境にCちゃんは顔を反対側に向けるようになったのです。

そして羊水検査をしたところ、お腹の中のCちゃんが「21トリソミー、ダウンシンドローム」だとわかります。それを聞いたお母さんは、妊娠中絶を使用かどうしようかと悩んだそうです。

しかしお母さんはご友人の励ましもあって、気を強く持って出産することを決意しました。出産して子どもの顔を見た瞬間、嬉しさで気持ちがいっぱいだったそうです。それでもCちゃんのお祖母さんは、初めはCちゃんを受け入れることが難しかったようで、お母さんは家族にも受け入れてもらえず、近所の人にも相談できず、家の中にこもってしまいます。家から出かけるのは病院へ検診に行く時だけという生活になってしまいました。


お母さんは出産という大変な時間の後でも、不安な気持ちを抱えたままでいました。生まれてきたCちゃんも、そんなお母さんの気持ちを察していたのでしょう。僕がCちゃんに出会ったのは、生後4ヶ月のそんなころでした。

Cちゃんは、顔の筋肉の動きに微妙な震えがありました。身体も少し縮こまっているようでした。何かに怯えているような、不安を抱えているような感じで、息も絶え絶えでやっと呼吸をしているというような、弱々しい感じに見えました。しかし、手を顔の上にかざすと、顔の筋肉が少しずつ柔らかくなっていくのを感じました。

「大丈夫だよ」
心の中でそう言いながら身体に気を流そうとするのですが、Cちゃんは心に壁を作って開こうとしない様子です。

「この子、なんて言っているかわかりますか?」
そうお母さんが僕に聞きました。
僕は耳を澄ましてCちゃんの声を聴きます。そして少し間を置いてから、

「『わたし、生きていていいのかな?』と言っているようですよ」
と、言葉にして伝えました。

すると突然、お母さんの目から涙が流れてCちゃんの服の上にポタリと落ちたのです。その瞬間、Cちゃんが抱えていた何かが解き放たれたようでした。

「オギャー。エンエン。オギャー。エンエン」
それまでやっと息をしていたようなCちゃんが、突然大きな声で泣き出したのです。その泣き声は心の中に抱えていた感情が溢れ出てくるような嗚咽でした。

「お母さん。ごめんなさい。こんな身体で生まれたくなかったよ。ちゃんとした身体で生まれてきて、お母さんに喜んでもらいたかった。死んでもいいと思ったけど、本当は生きたかった。お母さんと一緒にいたかったんだ」

僕には赤ちゃんの泣き声が、そんなメッセージに聞こえたのです。Cちゃんは心を閉ざして、お母さんの気持ちに添いたかった。きっとお母さんの不安な気持ちや中絶を考えたことも知っていたのだと思います。お母さんのことを思う気持ちでいっぱいだったのではないでしょうか。

それでも、生まれるということ、生きるということをお母さんに喜んでもらいたかった。自分が生きているということに意味を持ちたかったのです。
Cちゃんは、それから5分以上もの長い間、泣いていました。

「もう抱いてもいいですよ」
泣き止んでからそう言うと、お母さんはCちゃんを腕の中に抱き上げました。

「わあ。なんて軽い」
Cちゃんは、それまで抱えていた感情を涙と一緒に手放して、身体も軽くなったようでした。それまで心の奥に押し込んでいた気持ちが、思いっきり弾け飛んで出ていったようでした。Cちゃんがそんなに大きな声で泣いたのは、そのときが生まれて初めてだったそうです。

それからCちゃんの家族は、Cちゃんをしっかりと育てていくと決心しました。そんなお母さんとお父さんの気持ちに応えようと、Cちゃんも生きる気力を強くしたのだと思います。

それから何度かCちゃんに会いましたが、Cちゃんは会うたびに元気になっていきました。目がクリクリっとして愛くるしい表情になって、何かを我慢するような感じではなくなっていきます。成長のスピードも思ったより速く、お母さんも、

「可愛くて、可愛くてしょうがない」
と満面の笑みを浮かべるようになったのです。
Cちゃんのお母さんからは、以下のようなコメントをいただきました。

ーーーー
まず最初に上田先生にお会いした時のことが印象的でした。娘を見て、すごく我慢しているとおっしゃって、手を背中にかざされました。
すると、それまであまり泣くことがなかった娘が大声で長く泣き出したのです。娘はそれまで我慢していたようで、泣くことで初めて感情を表現したようでした。そしてそれ以降は、好奇心旺盛な愛らしい表情を見せるようになったのです。

わたし自身はプログラムを受けるまで、とにかく不安がつきまとい、
「何か娘にいいことをさせなければ」という気持ちでいっぱいで焦っていました。しかし、先生と出会ってからは少しずつですが、娘に過度な期待を押し付けたり、焦燥感にかられたりすることが少なくなっていったように思います。

そして娘の努力している姿を見て、周囲も娘を受け入れるようになりました。娘は4歳(2016年当時)となり、これからどのように成長していくのか楽しみです。
ーーーー

ダウン症や障害を持つ子どもを育てるというのは、健常児を育てるのに比べて大変な苦労や労力が必要で、経済的にも負担があると思います。そうしたお子さんを受け入れられずに苦悩される家族の方々もいらっしゃいます。

それでもそうした状況での育児を通して、幸せを感じている家族もいるということを知っていただきたく、ここでご紹介させていただきました。障害を持っているお子さんを迎えたからこそ、家族の在り方を思い、幸せな家族となっていった方々も、間違いなくたくさんいらっしゃるのです。


【お知らせ・おすすめの拙書】

何かとお得な無料メルマガ情報の申し込み
オンライン瞑想会の詳細
「整え親方の整え部屋」(コミュニティFM番組)の放送予定
・『パワースポットのつくりかた』購入
・『いのちのやくそく』購入


よろしければサポートお願いします!いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせて頂きます。