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オンラインで演劇を観た③(10.24 シソンヌ「neuf」/11.12 大人計画「フリムンシスターズ」)

10.24 シソンヌ「neuf」(アーカイブ11.15まで)

本多劇場での単独ライブ。全公演を生配信するというよしもとの配信システム構築のスピードには驚くばかり。現地チケットは10000円だが配信は1000円という設定もありがたい。おかげで気軽にシソンヌ単独を初めて観れた。

オークラ(3人目のバナナマン、4人目の東京03と称される劇作家)が監修に入ってる時点で薄々気づいてはいたがやはりその構成の妙に唸ってしまう。オープニングコントはもろにコロナ禍を反映した作品だし、台詞でこのライブ自体を定義づけてしまってて完璧すぎた。妙に頭に残った<一人じゃないのよ>という言葉。これがこのライブ全体のテーマなようにも感じられた。じろうが演じるのは倒錯者ギリギリのエキセントリックな人物たちだが、彼や彼女は決してひとりじゃない。ひとりにさせてはおけない愛嬌があり、ひとりにしておけない周囲(劇中では長谷川忍が演じている)がいる。人と人との距離に思いを馳せざるを得なかったコロナ禍を経た、見事な演劇作品だった。

なんせ凄いのが幕間に用意された換気の時間。あの流れをぶったぎるある種のノイズをもコント中に取り込み、大きな笑いを生み出して見せた。強い。

11.12 大人計画「フリムンシスターズ」

松尾スズキ作の新作ミュージカル。長澤まさみ、阿部サダヲ、秋山奈津子が演じるそれぞれに欠落感と虚無を抱えた3人の女性が偶然と必然に導かれ出会い織り成す群像劇。正直、先日の炎上を受けても相変わらずな描写の数々(悪意のある"切り取り方"をされればもう一発退場になるほどに)でひやひやする部分もあったけどちゃんと最後まで観てみれば、ここ最近観たコンテンツの中で最も豊かに多様性を肯定する作品であった。彼のユーモアは時と場合によってほとほと擁護のしようがない程にダメなことも分かったうえで、やはり作品として自身のアティチュードを示す姿勢は劇作家の矜持を感じる。

(世間一般的には)歪だとされる意識に苛まれ、苦しむ姿が複雑に交差しながら作品は大きな物語へと育っていく。何がどう人生を引き裂き、どこに行き着くかも分からない社会の中、理解されないというだけで否定され糾弾される声。血筋や自分の信条からはみ出した価値観には一生優しい眼差しを向けられない人々。その双方が自由に共存している世界こそマトモであり、なおかつ異常である、という当たり前をショーアップして見せるエンターテイメントだった。複層的な意味を携えた終盤付近のメッセージ、演劇のみならずカルチャー全体の小さな声の集合体のよう。ストレートな大人計画もイイ。

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