松尾スズキ「命、ギガ長ス」
北九州芸術劇場・小劇場で松尾スズキプロデュース 東京成人演劇部vol.1「命、ギガ長ス」を観た。大人計画始動から26年、改めて楽しく芝居をやりたい(要約)という思いから立ち上げた演劇部が今回のプロジェクトとのこと。その1本目となる本作は安藤玉恵との二人芝居。福岡は、松尾スズキ生誕の地・北九州でわずか200人キャパの会場で!規模感もまさに始まりたての劇団。一体どんな作品が飛び出してくるのかと期待いっぱいだった。
そもそも2019年においてしょこたん語を引用してのタイトルである。一体どんな大味でラフな笑いが飛び交うのか、と思わざるを得なかったのだけど、内容はあぁ今僕は松尾スズキの芝居を観ているんだ!と叫びたくなるような濃密なものだった。(ほぼ)2人×2役で8050問題を抱えた親子とそれを捉えたドキュメンタリーを制作する女子大生とその相談に乗る教授を演じるミニマルな小編成な演劇作品だが、終始笑いと毒で空間は支配され続ける110分。
シリアスで敬遠されがちな題材を真剣に描くことで溢れてくるオカシサをこれでもかとたっぷりクローズアップして面白く仕立てる。多くの松尾スズキ作品に透徹された笑いの美学は今回もしっかりと。どんな場所にあっても人は呆れるほどにタフだし、気が遠くなる程に人生は長くて、チョー暇。そんな本質をくすぐり倒して、「トラウマも悲壮感もない美しい無職」という最強のキャラクターまで生み出してしまった笑。ここまでやられると、なぁ!
台詞回しもさることながら、松尾スズキはやはり"動き”も素晴らしいのだと再確認する。特に足のビヨビヨ感!それに呼応して、安藤玉恵も22歳と80歳の女性をすこぶるキュートに演じきってた。やはりプロの芝居のガチな鍔迫り合いで、ラフさは全く感じなかったのだけど、ダンスシーンで安藤さんのカツラが取れてしまったのはめちゃくちゃ演劇部ぽかったなぁ。さて、次の松尾作品は秋の映画「108」と、来年博多座での「キレイ」かな!楽しみ!