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厚労委(連合審査):子ども・子育て支援法改正案 質疑(中島克仁2019/03/28)

子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案【内閣・文部科学・厚生労働連合審査会】※要旨

改正経緯/政策立案・決定過程

○中島克仁委員 会派としても、私個人としても、幼児教育・保育の無償化、子どもに予算を手当てしていくこと自体に異論はない。本改正案が子ども目線であり子どもの明るい未来に資するものかどうか、改正に至った経緯、また内容について、確認したいところを質問したい。
 まず経緯だが、社会保障と税の一体改革で社会保障分野への配分やスケジュールが決まっていたところ、一昨年の総選挙前に突如その使い道が幼児教育・保育の無償化へと変更された。子どもを取り巻く環境にはさまざま課題はあるが、幼児教育・保育の無償化が消費税増収分の大優先となる理由について改めてお尋ねしたい。
○宮腰光寛少子化対策担当大臣 少子高齢化、そして「人生100年時代」にあり、社会保障のあり方も大きく変わらなければならない。お年寄りだけではなく、子どもたち、子育て世代、さらには現役世代まで、広く安心を支えていく全世代型社会保障への転換をなし遂げる必要がある。これは平成24年の社会保障と税の一体改革の中でも確認されている。
 今回の無償化は、その重要な第一歩として、消費税引き上げ分の使い道を見直し、子育て世代・子どもたちに大胆に投資するものであり、子育てや教育にかかる費用負担の軽減を図るといった少子化対策と、生涯にわたる人格形成の基礎やその後の義務教育の基礎を培う幼児教育の重要性の観点から実施するものだ。
 その財源負担については、未来の世代に回すことなく、安定財源を確保した上で進めるため、消費税率引き上げの増収分を活用することとした。
○中島克仁委員 全世代型社会保障の確立、子育てにかかる費用が軽減されることは、誰でも喜ばしいことだとは思う。であれば、まずは誰もが希望する保育園・幼稚園に入れるような体制を整えるのが優先だ。そうでなければ、無償化された結果、入れない人・入れる人の格差がさらに広がってしまう。
 加えて、経緯については、3月10日の本会議で安倍総理に「今回の幼児教育無償化は一昨年の総選挙の政争の具として利用されたのではないか」と質問したところ、「自民党において、政権を奪還したときから、公約の中に幼児教育の無償化を進めていくと申し上げており、私の独断あるいは政争の具といった指摘は当たらない」と総理は強弁されたが、3月20日の内閣委員会で、消費税増税分の使途変更について「全く政府として検討されていない」と政府参考人も明確に答えていた。
 幼児教育・保育の無償化については財源を確保しながら段階を踏んでという議論は「骨太の方針2017」にも書いてあるが、一気に無償化するとは全く書いていない。実質、一昨年の安倍総理の解散、その記者会見で突如としてあらわれた。これは間違いない事実だ。
 昨年の2月、我が会派代表の野田佳彦の「社保・税一体改革の精神を政争の具にはしないとご理解いただいているか」という質問に対して、総理は「政争の具にはしていないが、選挙の争点にした」と、本当にひっくり返るような意味不明の答弁をされている。
 改めて大臣に伺いたい。全世代型社会保障を築いていく、子どもに重点的にとおっしゃったが、優先順位を変更したのは総理が言ったからなのではないか。
○宮腰光寛少子化対策担当大臣 総理と野田議員とのやりとりについては承知していないが、平成24年に成立した子ども・子育て支援法の附帯決議においては「幼児教育・保育の無償化について検討を加え、その結果に基づいて所要の施策を講ずるものとすること」とされており、政府としては財源の確保などの検討を行いながら平成26年度から段階的に無償化を実現してきた。これまで生活保護世帯あるいは住民税非課税世帯を中心にして年間4500億円程度の公費を投入し、段階的な無償化を進めてきた。
 今回、新たに全世帯を対象にした無償化に踏み込むことになったわけだが、この方針については決して総理の独断で決められたものではなく、段階的に無償化を行ってきて、今回、消費税引き上げ2%の財源の一部を安定財源として行うとしたものだ。
 今回の引き上げの2%の一部というのは、その一部については、国債の償還に充てる、あるいは地方にとっては臨時財政対策債償還に充てる、その一部を活用して今回の無償化に充てることにしている。
 とりわけ3から5歳児の幼児教育・保育の重要性に鑑み、あるいは少子化対策として負担軽減を行うことの重要性に鑑み、今回、無償化を進めることにしたものだ。
 今回の引き上げの2%の一部というのは、その一部については、国債の償還に充てる、あるいは地方にとっては臨時財政対策債償還に充てる、その一部を活用して今回の無償化に充てることにしている。
○中島克仁委員 先日の内閣委員会では、一昨年の総選挙の前に使い道を具体的に変更する政府内での検討の場はなかったと明確に答えている。
 冒頭にも言ったように、幼児教育・保育の無償化、子どもに手当てをしていくことはいいことだと我々も思っているが、ただ、何かしっくりこない。
今回の法改正が、大人のためのものではなく、子どもにとってどういうものなのか、深い議論をし、結びつけ、つないでいかなければならない。本来であれば、どのような形で進めていくのか、財源も含めて、消費税の増収分の使途も含めて、政府のみならず国会の場で十分にその内容とあり方について検討していくのが先だ。政策の企画立案過程や政策の意思決定過程が全く不透明な状況の中で審議が行われることは大変遺憾だということだけは明確に伝えさせていただきたい。

幼児教育・保育の質の議論

○中島克仁委員 次に、本改正案において政府は、幼児期の教育の重要性と少子化対策を推進する一環としている。「幼児教育無償化の制度の具体化に向けた方針」には、少子化対策と、生涯における人格形成の基礎を培う幼児教育の重要性を、車の両輪として掲げている。
 生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育とは、一体何を意味するのか。認可外保育施設を初め、今回無償化の対象となっている施設は既に生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の場所となっていると考えているのか。それとも、さらなる教育の質の向上が必要と考えているのか。
 加えて、今回、「新しい経済政策パッケージ」第2章の「人づくり革命」で幼児教育・保育の無償化があるわけだが、今回の無償化が「人づくり革命」にどのようにつながるのかご答弁いただきたい。
○宮腰光寛少子化対策担当大臣 幼児期の教育は、子どもの基本的な生活習慣を形成し、道徳性の芽生えを養い、学習意欲や態度の基礎となる好奇心を養い、創造性を豊かにするなど、生涯にわたる人格形成の基礎を培う上で重要な役割を担っている。
 また、幼児教育の重要性についてはさまざまな国際的な研究においても重要性が認められており、国際的な共通認識になりつつあると承知している。
 こうしたことから、幼児教育の質が制度的に担保された幼稚園・保育所・認定こども園を対象とするとともに、やむを得ず認可外保育施設等を利用せざるを得ない人がいることから、こうした方々も負担軽減の観点で対象としている。あわせて厚生労働省を中心に認可施設への移行促進や児童福祉法に基づく都道府県等の指導監督の充実を図っていく。
 「人づくり革命」なのかどうかという質問だが、「人生100年時代」を見据えてしっかりと人への投資を行うことで、我が国の社会保障制度を、子どもから子育て世代、現役世代、高齢者まで、広く安心を支えていく全世代型へと大きく転換していくものだ。幼児教育・保育の無償化はその重要な第一歩として、子育て世代・子どもたちに大胆に政策資源を投入し、社会保障制度を全世代型へと変えていくという考え方に基づき実施するものであり、「人づくり革命」を進めている中で人への投資をしっかり行っていくという観点から行っていくものと考えている。
○中島克仁委員 政府は今回、幼児教育の重要性と少子化対策を車の両輪とおっしゃるわけだが、幼児教育の質、またどういう教育が我が国の幼児教育としてふさわしいのか、そういう議論は同時進行で進めていかなければいけない。しかるに、今回の法律案にはその内容が全く含まれていない。
 政府がよく根拠に出されるペリー就学前プロジェクト。教育的効果、さらには40歳時点での経済効果、就学前教育を受けた子どもとそうでない子どもに明確な違いが出ていると。ただ、このペリー就学前プロジェクトの期間は2年、授業は午前中2時間、週に1回の家庭訪問90分、さらに生徒1人当たり6人担当、その先生は全て学位を持った専門職という内容だ。政府として今後、幼児教育・保育の無償化、そして幼児教育の重要性を鑑みるならば、こういう体制を念頭に置いているのか見解をいただきたい。
○宮腰光寛少子化対策担当大臣 ご指摘のペリーの就学前計画は、2017年12月に閣議決定した新しい経済政策パッケージの策定過程においても、幼児教育の効果に関する研究例の一つとして参考されたものだ。
 幼児教育の重要性については、ペリー就学前計画だけではなく、OECDなどさまざまな国際的な研究においても指摘されており、また我が国においても文部科学省の中央教育審議会の答申において指摘されているなど、国内外を問わず共通認識になりつつあると承知している。
 質の高い幼児教育、幼児期の発達が、その後の学校段階における学力や社会情緒面に大きな影響を与える。その後の人生における健康、労働市場への参加、貧困等の防止に、長期的な影響を与えるということが明らかになっていると思っている。
 我が国においても、いろいろな意味で幼児教育及びその振興の重要性は国民的な共通認識になっていると思っている。これらに基づき、この幼児教育の重要性に鑑み、今回、無償化を進めていくことにしたものだ。
○中島克仁委員 質問を終わるが、子ども目線で、子どもにとって、そして我が国にとって、幼児教育がどうあるべきか。そういうビジョンが全く示されていないことは問題だということを指摘して質問を終わります。

(以上)

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