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第5回 子供に会社を継がせたいならこれはNG【親族承継論】


学生の皆さん、こんにちは。
入学式から数えると、すでに5回の講義をお届けしていますが、ヤメ大はどうでしょうか? 
いろいろな感想があることでしょう。
もしかしたら「話が回りくどい」「もっと簡素に書いてほしい」といったことを感じている方がいるかもしれません。この点については、あえてそうしている面もあり、弁解をさせてください。

今の世の中では、とにかく時間をかけないで済ませることが良いこととされているようです。『タイパ』なんて言葉も生まれています。2時間も映画を見るのは時間がもったいないから、2倍速で観る人もいるだとかで、本当に驚きます。
本をはじめとする文章の世界も同様です。いかに、簡単か、手っ取り早く学べるか、が求められています。だから「成功するために必要なたった一つのこと」みたいな単純化されたコンテンツが量産されています。世の中全体として、こらえ性が足りなくなっているようです。今の感覚としては、このヤメ大の一回の講義でさえ長すぎるというのでしょう。おそらく、ちゃんと最後まで読める人はもうマイナーな存在です。

この時短で簡略的に学ぼうとする姿勢、はたして学習の効果というものさしで見たらどうでしょうか? 私は絶対よくないと確信しています。浅い学びをいくら積み重ねても意味はありません。
深い意味まで理解することで、はじめて血肉になるはずです。そして、読者にそんな価値を届けるためには、著者は情理を尽くして語らなければいけません。すると程度のボリュームになることは避けられません。そうしてはじめて、読者を学びの世界に引き込む独特の空気のようなものが漂う文章になると私は思うのです。

たとえば昨今、行政や経営支援団体は中小企業の事業承継を推進することに注力しています。そんな彼らのメッセージを簡素化したらどうなるでしょうか。
「社長は早く会社を次代に譲ってください、以上。」です。
とっても短いですね、シンプルですね。
ところでこれで「了解!」と社長は会社を次に譲れますか? 社長を辞められますか? 
とんでもないですよね。むしろ「ふざけんじゃねぇ!」って怒りますよね。
人は正論だけじゃ動けません。また、頭だけでわかっていても動けないのです。

皆さんが将来することになる会社の着地の決断は、あまりに重大なものです。これ以上重たい決断は人生において他にはないという方も多いことでしょう。
そんな決断をするためには、思考や感情の成熟と、困難を突破するための具体策が必要です。とてつもなく大きなエネルギーが必要なのです。
ヤメ大は、学生のみなさんが触発され、魂のエネルギーが沸き立つような学びを目指しています。
正しい知識を伝えることを目指しているのではありません。こういうものは、簡素に要点だけを伝えるようとしては、到底かなえられません。それゆえ、ときに回りくどいものを感じさせるかもしれませんが、イライラせずにお付き合きたいのです。


支持率下落中の親族承継



さて、本日は第5回目の講義です。
会社の着地の各論に突入しており、前回は廃業論を紹介しました。今回は社内承継を語りましょう。おそらく2回に分けることになると思われます。
まずは言葉の定義を整えておきましょう。事業承継という言葉は、広い意味と狭い意味で使われているようです。広い意味の場合、会社を誰かに継がせること全般を指す時があります。子供や従業への承継だけでなく、外部の会社に売却するM&Aの場合も含めるときです。一方で、内輪への承継だけに限定する時もあります。この場合は、社内承継という言葉と同じ意味になります。
今日は狭義の事業承継である社内承継を取り上げます。社内承継では、会社を身内の人間に譲ることでゴールとなります。身内の人間には大きく2タイプいて、子供をはじめとする親族の場合と、血縁がないスタッフの場合があります。
本日は、前者の親族に継がせるケース、特に子供に継がせるという視点で語らせていただきます。


一昔前は、父が社長で子供がいれば、その子が会社を継ぐのが当然でした。しかし、今はそんなステレオタイプの事業承継が行われる割合はものすごく減っています。かつては6,7割が親族内での事業承継だったというデータを見た記憶がありますが、帝国データバンクによる2020年の集計では34.2%まで落ちています。2位の内部昇格(従業員承継)は上り調子で34.1%まで迫っていたので、ヤメ大を連載している2024年では、すでに首位を陥落している可能性は高そうです。個人的には、いずれM&Aにも抜かれる日がくるだろうと予想しています。


なぜ、子供を中心とした親族への承継数は減っているのか。
理由の一つは、個人の生き方を優先する世の中になったことでしょう。家や家業を守るよりも、自分がどう生きたいかを優先させたとしてもそれが許される風潮になったと感じませんか。「土曜や日曜も休めない自営業なんて嫌だ」なんて言って、サラリーマンを選んだりします。
もう一つの大きな理由は稼げなくなったことでしょう。戦後から長く続いた経済成長という環境では、会社経営は「おいしさ」がありました。普通にやれば売り上げは増えるし、手元にお金も残せます。しかし、成熟社会となればそうは問屋が卸しません。昔のように楽に稼ぐことはできなくなりました。業界の先行きも見えません。とても子供に「会社を継げ」なんて言えない。こう考える社長が増えました。

会社を継ぎたがらない子供にYESと言わせることはできないか?


「子供に会社を継がせたいのですが、子供のほうは継ぐ意思がありません。どうにかなりませんか?」
たまにこんな相談を受けます。
これに対して、本人の意思をコントロールする方法はないし、無理強いはしないほうがいい、といったものが多くの場合での私の回答です。
無理やり社長をやらせれば、本人は被害者意識を持ち続けることでしょう。そんな状況でよい経営ができるわけありません。無理強いをした先代が後継者に恨まれて終わりです。

もし、真に子供に社長を継がせたいと思うならば、子供が小さなころから仕込んでいけなかったのでしょう。
社長である親が生き生き働き、社長業のすばらしさ、経営の面白さを身をもって語り続ければ、子供は「自分も将来社長になるのが当然だ」と思い込んだかもしれません。
「疲れた」とか「社長はたいへんだ」なんて愚痴を日々聞かされたら、子供は社長になんてなりたくなくなります。
そんなわけで私は、子供が大人になってから社長にさせようと思ったところで、もうすでに勝負はついてしまっていると考えられます。

こう言われてしまうと元子もないないですね。ただ、すべての子が、会社を継ぐか否かを明確に決められているわけではありません。YESとNOの間にいる子供だってたくさんいるはずです。

この場合であれば、まだチャンスはあるのでしょう。
しかしこのときも、強制をしてはいけません。先代社長が積極的に会社を継がせようとするとロクなことにならず、かえって逆効果になりがちです。

子供に本を読ませたいという親に対して、思想家の内田樹氏が「だったら禁書にすることだよ」と答えたという話を聞いたことがあります。親が本を読めと言えば言うほど、子供は本から逃げようとします。しかし、「この本は読んではいけない」と言ってその本を机の上にでもおいておけば、「何が書かれているんだろう?」と思った子供は興味を抑えられなくなって本を手に取るということです。どこか事業承継の話にも通じるものがあります。
こんな話もありました。

どの本だったか忘れてしまいましたが、その本の著者は親から「会社を継いで社長になれ」と迫られたそうです。著者は、いつも父親は上から押しつけてくることが許せず、そのときも反発して会社は継ぎませんでした。でも、もし親に頭を下げられて「頼むから会社を継いでください」とお願いされていたら、そのときはNOとは言えなかっただろうなと記していました。
継がせようとしてはいけません。先代社長としては、「あなたに会社を継いでほしい」という意思を表示し、「会社を継げる」という選択肢を目の前に置いてあげるくらいにとどめるべきです。それで継ぐか、継がないかは、あくまでは本人次第なのです。

積極的に会社を継がせようとすると、本来だったら会社を継いでくれるはずの未来を逃すことになりかねません。継がせたい気持ちからくる言葉や行動はストイックに抑えてください。


親の下で働くことに嫌気がさした子供は、会社を飛び出していった・・


話を進めましょう。
運よく子供の後継者がいたとします。事業承継を進めていくうえの難しさは、どのあたりにあるでしょうか。
親子関係ゆえの難しさ。これに尽きるような気がします。

もちろん親子だから良い面、やりやすい面もあります。でもそれ以上に、血がつながりや、距離が近い関係である親子だからこそ、状況が難しくなってしまっているケースが目につきます。

一度は息子が家業に入って「社長のところも後継者ができてよかったね!」なんて周囲から言われた。でも、いつしか息子が、親の下で働くことに我慢がならないようになり、会社を飛び出して去ってしまった。こんな話は巷に掃いて捨てるほど転がっています。
頭ごなしに叱られたり、年がら年中小言を言われたり、自分の思うようには一切やらせてもらえなかったり。ストレスが許容範囲を超えてしまったのでしょう。親子関係だからこその、ある種の「過剰さ」が起きやすいのです。これがもし、相手が血のつながらない従業員であれば、そこまでお互いぶつからないで済んだりするのでしょう。でも、親子では歯止めがきかなくなってしまいがちです。


経営者の適性がないのに継がせるのか?


「俺だって好き好んで口を出しているんじゃないんだよ。あいつは活力がないし、自分で動かないから仕方ないんだ。こんなんじゃ社長は務まらないよ。あいつのためだ。」なんて声も聞こえてきそうです。はたしてそうなのでしょうか。

では、質問をさせてください。「子供が後継者としてふさわしくないのであれば、どうして会社を継がせようとするのですか?」と。
能力ややる気が足りないのに、その人間が会社を継ぐという前提がよろしくない気がします。こういうのは不幸の元です。

こういうときは冷静になり、一度自分に立ち返ってみましょう。
社長であるあなた自身の価値観や哲学はどんなものでしょうか。ここが土台となります。会社の着地についてどんな考えを持っているのか、何を基準に後継者を選ぶのか。自分の軸を再確認することからはじめませんか。

いずれにせよ、子供がいるからといって必ずしも継がせなければいけないわけではありません。アニメ映画の名作を連発したスタジオジブリの宮崎駿氏は、社内に子供の吾郎氏がいましたが、結局彼には継がせませんでした(「自分にその力はない」と、吾郎氏も継ぐことを避けたがっていた様子です)。最終的に会社は、日テレに売却されました。

世間一般の常識にとらわれず、自由な発想をしてみればいい。そして最後は自分の責任で決めればいい。これが、オーナー社長が実施する中小企業の事業承継です。


なぜ後継者は育たないのか?


親である社長の積極性が、人材育成の面でもマイナスに作用するケースは多いいようです。
社長が積極的になり、その分後継者の子供が消極的になる。こんな関係性を目にすることがあります。これでは人は育ちません。

人というのはどんな時に成長するものか、考えてみましょう。

社長であるあなたは、社長になってから大いに成長したはずです。そうでなければ会社経営なんてできないし、ここまで会社を潰さずに続けることはできなかったでしょう。
では、何があなたを成長させましたか?
自主性、意欲、わくわく感、現場体験、自分なりの工夫、トライ&エラー……きっとこのあたりが要因であるはずです。成長は、自分なりにいろいろと試行錯誤してきた結果ではありませんか。

後継者に対して「自主性や意欲などが足りない」と不満やもの足りなさを感じていらっしゃるのかもしれません。
しかし、だからといって社長が口を出し、手をだしたら逆効果なのです。創意工夫の精神を奪う結果になるだけです。

好き勝手やった経験が会社を飛躍させる


私は、後継者として会社を大きく成長させた社長を何人も知っていますが、みな社長になる前に自分なりに考えて行動をしていました。好き勝手やっていたという表現に近い場合すらあります。

奈良で伝統産業を営む家業を飛躍させた中川政七商店の13代の社長もその一人です。
彼は社長になる前、第二事業部を担当していました。親である先代は第一事業部にいて、第二事業部のある建物からは場所が少し離れています。それで先代の目が届かないのをいいことに、先代には適当な報告だけして、自分が思うように変えてしまったと語っていました。

千葉で、土産ものの製造から販売までを手掛ける事業を構築した諏訪商店の諏訪社長も同様です。社長になる前の専務の時代に、考え方が合わない幹部などの人員整理を断行したそうです。

社長になる前に“やんちゃ”をしたことがある社長は「あのときの経験が、自分の成長や後の会社の発展に生きた」と口をそろえて語るが面白いところです。

私の見立てでは、その取り組みの是非はどうでもいいのです。たとえば、幹部を辞めさせたことが良いことか、悪いことかの問題ではありません。後継者候補の人間が、自分なりに「これが大切だ」「こうするしかない」と考え、行動を起こしたことに意味があるのです。成長のために必要なことは、これではありませんか。

育つのを待つのが社長の役割


とはいえ、先代が後継者に行動を起こさせようと動いても意味はありません。繰り返しますが、逆効果です。
結局、先代社長としては、後継者候補をほったらかすしかないわけです。環境と機会くらいは与えて、後は待つしかない。ここがしんどいところです。人は人の成長をコントロールできないのです。

よく手持無沙汰で、時間をもてあましている後継者を見るに見かねて、業務を与えてしまう社長がいますが、よくありません。
後継者には経営者になって欲しいのであって、現場のルーティン業務ができるようになって欲しいのではないはずです。そんなもので後継者の仕事をしている感を満たしてはいけません。だったら、「自分は何の仕事もできていない」と気持ち悪さを感じさせたほうが100万倍マシでしょう。

実際のところ、先代からチャンスをもらって、積極的に創意工夫して成長する人間もいれば、受け身の姿勢のまま全然育たない人間もいます。どうしようもありません。社長が我慢して見守ったけど、後継者が成長しなかったら、あきらめるしかありません。どちらにせよ先代が、口や手を出せば成長の芽をつぶしてしまうのですから。


子供に気を使いすぎる親も・・



子供との関係で社長のほうが強い場合を想定して話を進めてきましたが、実は、逆のケースも増えている気がします。
子供のほうが強いのです。子供が親に向かって「こうしろよ。だからオヤジはダメなんだ」なんて言い放っちゃったりする会社です。仕事におけるインターネットやITの重要性が高まり、若い人のほうがそれを使いこなせることが、要因の一つになっている気がします。

子のほうが強いケースが増えているのは、なにも中小企業経営に限ったはなしではありませんね。子供にたいして親の方が気を使って、その発言や行動にびくびくしている親子はいます。

こういう関係に陥る原因は、「責任」を明確にできていないことによるのではないでしょうか。誰にどんな責任があるのか。これがおかしくなってしまっているのです。
後継者や子に、責任を与えていないのに、権限だけあげるから、相手は好き放題言えるのです。責任だけを先に与えてはいけません。
だいたい、子の暴走を許す社長は肚を括れていません。たとえば「子供に会社を辞められては困るから」と、ハレ物に触るように子と接するのです。それでは子供が余計に増長します。子供だけでなく、スタッフとの関係性でも同じです。

肚をくくるためには、最後の落としどころを受け入れることでしょう。会社の着地ならば廃業でしょう。
いざとなれば会社をたためばいい(たたむしかない)と、覚悟しておけば、弱みに付け込まれることもなくなるはずです。やはり退路という視点が重要なのです。



親族内承継における社長と株式の問題


社長という役割、機能を譲ることについての論点を語ってまいりました。いわばソフト面です。これからはハード面たる形式を整えるためのお話をします。

形式上、子供を社長にするには、どうしたらいいか? 登記の代表取締役を息子にすればいいだけです。株式を占有しているであろうオーナー社長ならば簡単にできます。

問題は、株式をどうやって承継させるかでしょう。

そもそも株式を承継させる必要があるのかという議題があるのでしょうが、やはり中小企業の場合、社長が100%の株式を押さえておくことが基本です。株主総会の特別決議ができる3分の2があればいいんじゃない?という人もいますが、あくまで100%です。少しであっても、株式を他人にもたれているということは、面倒を引き起こすことがあるし、社長の自由を害するリスクがあると考えておいてください。
このセオリーに従うのであれば、子供への社内承継をするならば、後継者の子供にすべての株式を譲ることになります。

では、そのタイミングはどうするか。本来ならば、子供に社長のイスを譲るときに、株式も渡したいところです。でもそうすると、お金や税金の問題が生じがちです。株式の価値が高くなっていると、その株式を子供に贈与したら大きな贈与税がかかります。
一方、贈与税を避けるために売買にすれば、後継者は買い取り資金を用意しなければいけません。そこまではしたくないというケースが多いでしょう。

ただし私は個人としては、たとえ子供が後継者の場合であったとしても、後継者は先代から株式を買い取るのが筋だと思っています。「株式はタダでもらって当然」と考えるべきではありません。そこには甘えや馴れ合いが生まれてしまいます。本当に会社を継ぎたいなら買い取るべきです。それくらいの覚悟が必要です。厳しいことを言っているのは、自分でもわかっています。それでも、会社の価値すら分かっていない後継者が、「親に会社を継がされた」などと言っているのを目にすると、脳天チョップを打ちおろしたくなるのです。

現実的な落としどころとしては、大きな課税を避けることを前提に、贈与で生前に株式を後継者に渡せるだけ渡し、残った部分は相続で譲られるように設計するケースが多いのかもしれません。株式を持った先代社長が亡くなったときに、後継者である子供が株式を承継するというパターンです。



「株式をすべて譲らない」という先代の心理


もし先代社長の存命中に、すべての株式を子である後継者に譲れる場合、あなたは気前よくすべて譲渡できますか?

「会社影響力を保つため、いざというとき後継者の暴走を止めるため、一部は先代の手元に残しておいたほうがいい」
ちまたの顧問税理士や専門家(もどき)は、こんなアドバイスをすることをセオリーとしている様子です。すべての株式を後継者に渡すな、ということです。

私は、このアドバイスが嫌いです。
先代社長の会社への執着を助長する恐れがあるからです。
アドバイスとしての理屈は間違っていません。でも、この正しさは、会社に対して影響力をもち続けたいという隠れた願望と結びつきやすいのです。
人間には支配欲があります。影響力を持つことは気持ちがいいことでしょう。しかし、いつまでも会社にこだわり続けては、社長は自分の次の人生と向き合えません。

会社を譲るのであれば、すべて後継者に委ねればいいのです。逆にそれが嫌ならば、完全燃焼できるまで自分が社長でいればいい。中途半端はやめましょう。

会社の方から見ても、やめた先代に口を出されるのは、ロクな結果になりません。後継者としては、「だったら自分でやれば」とヘソを曲げます。あなたが「形式上は社長を退いても、会長として会社への影響力を保持してやろう」という思惑であれば、後継者はにおいを敏感に感じ取ります。これでは本当の覚悟は生まれないでしょう。
株式をすべて手放すか否かという表面上の話にとどまることなく、社長のマインドまで掘り下げてチェックしていただきたい論点です。




相続で株式を譲るなら、相続税をチェック


先代社長が株式を持ち続け、相続を原因に株式が後継者に渡るケースを見てみましょう。
先代の相続が発生したとき、いかに後継者に株式が承継されるようにしておくか、事前の仕込みが大切になります。遺言などを活用して、スムーズに株式をしかるべき人間に届けられるようにしておいていただきたいところです。

株価が高くなっているときは、税金のことも考えなければいけません。そもそもあなたは、自社の株価を知っていますか? 費用は掛かるでしょうが、顧問税理士に計算を依頼してみることをオススメします。
そこまでせずとも自社の株価が高いか否かの雰囲気くらいは押さえておいてください。簡単な話、バランスシートの純資産が大きくなる会社の株式は株価が高いのです。この場合、株式の承継については常に税金の問題がついて回ります。

一番怖いマイナスの事業承継


先ほど株価の話をしました。純資産が大きくなれば株価が高くなるのとは逆のパターンだってあります。
借金が大きくて純資産がマイナス(=債務超過)になっているケースです。こんな会社の事業承継だって想定しておかなければいけません。むしろこちらの方がより慎重な行動がもとめられます。なのに、世間ではほとんど語られることがないのです。

まず、債務超過の会社を継がせるべきなのでしょうか。
原則的な答えは、NOです。後継者が課題な負債を背負わされることを意味します。後継者が社長になって経営していけば、利益を出し、いずれ債務超過が解消できる目途がつくのであれば継いでもいいでしょう。
しかし、そんな目途が立っていないのに、債務超過の会社を引き継ぐというのはある種の自殺行為だったりします。

世間には、会社が債務超過なのに、子供が会社を継ぐのが当然だと思っている社長がいたり、何も考えないで債務超過の会社を継いで後になって地獄を見る後継者がいたりします。申し訳ありませんが、危機感が足りなすぎると思わずにはいられません。

また、会社が債務超過の場合は、社長の相続も要注意です。相続をすると、資産だけでなく、負債や義務まで引き継いでしまします。一般的に、社長は会社の借金の連帯保証をしているので、亡くなった社長を相続すれば、連帯保証まで引き継ぐことになります。これは本当に怖いんですけどね・・・。このあたりはまた後日の講義で触れることになるでしょう。



あらためて、債務超過の会社の事業承継は危険です。よく注意しなければいけません。
ただし、手がないわけではありません。事業と負債を別々に切り離し、事業だけを後継者に引き継がせるやり方だってあります。分社手法なんて名付けていますが、これをうまく使えばいろいろできます。このあたりもいつかお話できるといいですね。今の時点では「債務超過の会社をただ無策で継がせちゃダメ」とだけ押さえておいてください。

次回も社内承継の話が続きます。
今度は社内の経営幹部や従業員に継がせる場合です。


事務局からの連絡


①今回の宿題

今回は特に宿題はありません。
任意でお時間ある方は、感想や気づきを書き出していただくことをオススメします。

②入学金の納付手続きについて

払っても、払わなくてもいい入学金(税込8万8000円)は随時受付中!!
ご納付は、リンク先のシステムで決済してください。
  → 入学金決済システムへ

③次回の講義

次回も来週の金曜日にアップする予定です。


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