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poppin HA-RA-JU-KU

こういうのには慣れている。
必ず私はその場から浮いてしまうから。
だから来たくなかったんだ。

呼び込みの声や誰かの話し声。
ジャンルが入り乱れたミュージックが
お店から流れてきてはまた流れていく。
私はここよ、と甲高い笑い声が
四方八方から飛び込んでくる。
そんなポップな視界が私を見下ろしていた。

「大丈夫だって。守野高だって。
 かっこいいらしいよ。性格も良いってサチが
 言ってたし。 
 ねえ、莉亜。行こ?」

早送りの様な橙子の台詞を思い出して
また気分が悪くなった。

私は莉亜という。

海外アーティストのファンの親が
海外に行っても馴染みが良いようにと
モデルの様な擽ったい名前を付けてくれた。

名前だけ可愛いでしょ。
名前だけ。
とんだ迷惑。
名前だけでイメージって馬鹿馬鹿しい程に
作られるって知ってる?

くるんと巻いた前髪に茶色の瞳。
艶々にいやらしく光るほんのり赤い唇。

はい、間違い。
終わってる。
全部違ってるから、その頭の中。

横に並んで6人はなかなか歩けない。
何でこんなに無理をして、対抗人を避けながら
横に並んで歩かなくてはいけないのか。
あー、全部全部無理。
初対面で6人並んで、インスタで今流行りの
シェイクを翳しながら16時の原宿を歩くとか。

守谷高校の3人の男子は
サチと橙子しか見ていない。
あなた達には私が見えてますか?
サチと橙子も思い出したかの様に
私に話をふるのがまた切ないのだ。
と言って、全く放置されて空気になるのも
なかなか悔しいもの。
きっと、今の自分は二酸化炭素でしかない。

男子がいないと、女子だけでこの隔たりは
あまり感じないのに不思議なものだ。
立体的に見れば、チョークで丸をつけて
簡単に分ける事ができるのだろう。
早くこの味気のない路上パーティーを
抜け出して、先週の録画してある8話目の
TVドラマでも見たい。
明日には9話目が放送されるのだから。

横のラインから外れそうになり
慌てて追いつく。

神様、いつか王子様が現れます様に。
こんな私だけを見てくれる
私じゃないとダメな王子様がきっと
どこかにいるはず。

さして美味しくもないクッキーが
散りばめられたカラフルなシェイクは
何だか色んな味がした。

莉亜ちゃん、ファイト。
1番左側の私が、小さく呟いた。


LOW

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