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ドラえもんでしょ?(笑)と言う人に見せてやりたい。【のび太の宇宙小戦争:リトルスターウォーズ2021】

 最近、僕のTwitterのタイムライン上でこの映画が絶賛されていて、SF好きとしては見なくては!!と思い、思い切って鑑賞。

 結果から言うと、すごくすごくよかった。

 ちなんでいうと、僕は原作も読んでいないし、1985年のバージョンも見ていない。その辺はご了承いただきたい。

 タイトルからもわかるように、元々は2021年に公開される予定だった本作。まる1年間の延期がされて、今年の3月4日にようやく日の目を見た。

 しかし、この映画、運がよいのか悪いのか、ウクライナ対ロシア情勢を強く彷彿とさせるような作りになっていた

 つまり、国同士の争いや、スパイ活動、共通の敵を倒すための同盟、などなど、到底子供が鑑賞中に瞬時に理解できるような設定ではなく、本当にこれはドラえもんなのか…?と思ってしまうほどの重厚感

https://www.fashion-press.net/news/66882

 ドラえもんの原作者である、藤子・F・不二雄先生自身の作品における「SF」を「サイエンス・フィクション」ではなく、「少し不思議」と提唱していた。つまり、日常の中にある少しだけ不思議な物語というわけだ。

 この物語も、日常の中に潜む少し不思議を描いている。しかし、ドラえもんのテレビでの通常回とは異なり、本作での「日常」というのは、「戦争」であるのだ。その中でひょうきんなキャラクターたちや、指程度のサイズしかない民族たちとの出会いなどの「少し不思議」を体感するが、その根本にあるのは、「戦争」という現実なのだ

 これこそが、この作品の面白みを増幅している。

https://cinema.ne.jp/article/detail/49158

 ところで、ドラえもんは妙にリアルなところがある。普通のSF作品であれば、「みんなで敵を倒すぞ~!」となるのが一般的であると思うのだが、この作品は一味違う。スネ夫が物語中盤まで、戦争に参加することを渋っているのだ

 このスネ夫の役割は非常に大きい。僕からするとだ。

 ここでいうスネ夫というのは、有事の事態に怖気づくような、非常に普遍的な人間の弱い部分を表している。しかしそれは決してネガティブな意味ではなく、人間だれしもが陥ってしまう可能性のある弱い立場を示している。

 つまり、自分たちの国が攻撃されて、それに対して怖いからといって黙ったままでいいのか?なんとか立ち向かっていくべきではないのか?

 まるでウクライナの人々の心情を代弁しているかのようなこの強いメッセージは、平和ボケしている僕らにこう問いかける。「君たちは戦う覚悟はあるのか?」と。

 しずかちゃんが怖気づくスネ夫を置いて、一人で戦車に乗り込むシーンで口にするこのセリフがこのメッセージを、一言で、端的に示している。非常に象徴的なセリフである。

そりゃあ私だって怖いわよ…!
でもここで負けるのはあんまりにもみじめだわ…
なんとかやれるだけのことをするしかないのよ…!

https://cinema.ne.jp/article/detail/49158

 負けることを、「みじめ」っていうのがいいよね。

 「嫌だけど戦う」んじゃなくて、自分の威厳を守るために戦う姿勢。しずかちゃん、やっぱかっこいいっす。


 あと、この映画のSF作品のオマージュもすごく面白い。

 破滅寸前の故郷の星から、一人だけ連絡船に乗って逃がされるっていうのは、完全にスーパーマンのオリジンのオマージュ(スーパーマンは、滅亡の危機にあったクリプトン星から、家族の助けがあって唯一逃げ出せた人物)だし。

 「反乱軍と帝国軍」っていうのはもう完全にスター・ウォーズのオマージュだし、戦闘機との撃墜合戦というのもスター・ウォーズだし、敵を一発で吹っ飛ばす武器(ドラえもんではスモールライト)を取り返すっていうのは、なんかローグ・ワンっぽいしね。

 あと、町中が監視されてるってのは、ジョージ・オーウェルの『1984年』(1949)っていう小説ぽかった。絶対原作者の藤子先生は影響受けてると思うんだけどさ。


 敵陣のボスのギルモアの結末もすごく納得できたな。

 決してのび太達や、パピによってではなくて、あくまで国民の手によって成敗される。これこそが国家のあるべき姿だよね、ということが子供にも伝わるようにコミカルにわかりやすく表現されている。圧政や独裁ではなく、国民全体が主体となった民主主義であるということ。

 この辺もこの映画のすごく愛おしいポイントだな、と思いました。

https://news.ameba.jp/entry/20220304-932

 

 ここまでまとめてみたわかったけど、やっぱりこの映画、子供向きではない。ただ、子供に届いてほしいメッセージがふんだんに詰まっている。

 藤子先生はドラえもんという子供に親しまれてるツールを用いて、こういう意見を届けようとしていたんだなぁ、と強く感じました。

 たいへんな傑作です!ぜひ劇場で!


 また明日!


小金持ちの皆さん!恵んで恵んで!