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僕の人生を変えちまった、罪なアルバム9選(前編)

 現代日本のスーパースター、星野源はかつてこんなことを言った。 

音楽で世界は変えられない。でも音楽でたった一人の人間は変えられるかもしれないと思う。たった一人の人間の心を支えられるかもしれないと思う。

 僕も本当にそう思う。『イマジン』があっても戦争は絶対になくならないだろう。しかし、いくつかの音楽は人ひとりの人生を変える。現に僕は人生を完全に変えられてしまった。

 時には熱狂の渦に落とし込まれ、時には神の啓示のような感動を受けた。冗談ではなく本当に。

 今回は、僕の人生、もしくは音楽の趣向を定めることになった9枚のアルバムを紹介してみようと思う。


1.Michael Jackson: "The Essential" (2005)

https://www.amazon.co.jp/Essential-Michael-Jackson/dp/B0009XNUK0

 のっけからベストアルバムで恐縮だが、間違いなくこのアルバムは僕の人生を大きく変えた。

 2009年6月25日、マイケル・ジャクソンは亡くなった。当時、世界中が悲しみに暮れ、僕の母親もテレビで「マイケル・ジャクソン特集」なるものを見ながら泣いていたのを覚えている。僕は当時小学3年生だったが、子供ながらに「これはただ事じゃない」と思ったものだ。

 次の日も、その次の日も、マイケルの特集は続いた。テレビをつけると、必ずマイケルがテレビに映っていて、BSを見ても、いずれの局かは必ずミュージックビデオを流していた。テレビをつけるたびに流れるそれらに母親は必ず大きなため息をついて、まじまじと画面を見つめるので、僕もその映像をずっと見ていた。


 僕がはじめて意識的に見たミュージックビデオは、『スリラー』だった。はじめはマイケルが狼男になって恋人を襲うシーンで始まるので、これは映画かなにかか?と思った(実際、それは劇中映画のワンシーンなんだけども)。いざ曲が始まると、マイケルは恋人の前で楽し気に踊る。その後すぐにゾンビが登場し、マイケルもゾンビ化。そしてあの有名すぎるダンスをして映像が終わる。

 今でもあの感情を覚えている。鳥肌が立つほどの恐怖と興奮。ほんの13分半であったが、人ひとりの人生はたった13分半で変わってしまうのだ。生まれてはじめて見たホラーフィルムはもしかしたら『スリラー』かもしれない。僕の映画への興味と、ダンスミュージック、なんなら洋楽全般への興味はこの瞬間に、僕の体内に流れ込み、血となり肉となり、僕の興味の行き先を完全に指し示してしまった。

 次の日、母親と近所のTSUTAYAに行き、このCDを買った。待ちきれずに帰りの車内でジャケットを開封し、ディスク1を入れた。すろと1曲目の"I Want To You Back"が流れた瞬間、一瞬で恋に落ちた感覚に陥った。足を動かさずには聴いていられないポップさ。続く"ABC"や、ソロデビュー後の"Rock With You"も本当にすごかった。

 今では「どの曲も最高だ!!」なんてことはめったに思わないが、この時ばかりは確実にそう思った。ベストアルバムなんだからそんなのは当たり前かもしれないが、これはただの「ベストアルバム」ではない。あの「マイケル・ジャクソンのベストアルバム」だ。誰が何と言おうとこれは最高なのだである。

 家につき、ソロ転向後の曲も聴いた。"Thriller"はもちろん、"Billie Jean"や、"Beat It", "Bad", ”The Way You Make Me Feel", "Smooth Criminal"なんかも最高だ。こんな神の啓示のような曲たちを1時間で聴いてしまった僕の精神状態が心配になる

 それからというもの、 車ではこのアルバムが永遠に流れ続け、僕はどんどんと沼にハマっていくことになる。

 今ではかつてほど聴かないが、昔とは違った形でもマイケルを楽しむようになった。例えばマイケルの発音は本当に聴きとりにくい。"Bad""Come On"という歌詞は「しゃもーん」にしか聴こえないし、"Black Or White""Boy, is that girl with you"という歌詞は「ぼうい、どぅい、とぅーゆ」にしか聴こえない。こういうところも愛おしい。キング・オブ・ポップよ、安らかに。

【おすすめ収録曲】
・I Want You Back
・Rock With You
・Wanna Be Startin' Somethin'
・I Just Can't Stop Loving You
・Remember the Time
というか全部だわ。マイケルを聴いてくれ!


2.Michael Jackson: "Bad" (1987)

https://www.amazon.co.jp/Bad-Michael-Jackson/dp/B00000269M

 マイケルの"Bad"は僕がはじめて聴いた「オリジナル・アルバム」というやつだ。オリジナル・アルバムとはスタジオで録音されて、アーティスト本人が発表するもの。ベストアルバムとは違い、いろんな時期に制作されたものが集められることはまれで、非常に近い時期に制作された楽曲群が収録される。

 しかし僕はこれをはじめて聴いた当時はこんな言葉は知らずにいた。今思えばそうだったというだけだ。このアルバムは母親のCDコレクションの一部だった。これは母親がニュージーランドに住んでいた時期に、発売日近くに買ったものらしく、おそらく初版なんだろう。

 "Bad"という大名盤を初版で聴けるなんて僕も恵まれた人間だが、自分の部屋にこのアルバムを持っていき、CDプレイヤーから爆音で流した。ほとんどが知っている曲だった(例のベスト盤に入っていたから、ていうかベスト盤に11曲中8曲収録されるってこのアルバムなんなんだ)が、"Speed Demon"や、"Liberian Girl"や、"Just Good Friends"は、このアルバムではじめて聴いた曲だった。僕にとってこれらが大傑作というわけではないが、どのアーティストもベスト版ばかり聴いていた僕にとって、オリジナルアルバムを聴くことがどれだけ大切かを思い知るきっかけになった。

【おすすめ収録曲】
・Bad
・The Way You Make Me Feel
・Smooth Criminal
・Dirty Diana


3.Blues Brothers: The Blues Brothers: Music from the Soundtrack (1980)

https://www.amazon.co.jp/Blues-Brothers/dp/B000002J5K

 ブルース・ブラザーズは僕にとって、ブルースとロック、ソウル、R&B、そしてブラック・ミュージックの導入になった存在だ。

 ジェームズ・ブラウン、キャブ・キャロウェイ、アレサ・フランクリン、レイ・チャールズという帝王レベルのアーティストがゲスト出演しているために、サウンドトラックはあまりに豪華だ。このCDも母親がニュージーランドで購入したものだった。マイケルで完全にポップスとR&B、ブラック・ミュージックに傾倒していた僕はこのアルバムにも簡単に恋に落ちてしまった。

 モータウンやソウルにも手を出した僕はもうまったくもって後に引けなくなる。こんなにも素晴らしいミュージシャンたちに遭遇して、他のジャンルを聴くことなど久しく無理に等しかった。

 ギターなどのロックサウンドに魅了されたのもこのアルバムがきっかけかもしれない。最終曲の"Jailhouse Rock"は、言わずとしれたエルヴィス・プレスリーの名曲のカバーだけれども、この曲のギターソロ部分はなんども繰り返し聴いたものだ。たぶんこの辺からロック脳が形成されつつある。

【おすすめ曲】
・Shake a Tail Feather(レイ・チャールズ)
・Everybody Needs Somebody To Love
・ The Old Landmark(ジェームズ・ブラウン)
・Minnie The Moocher(キャブ・キャロウェイ)
というか全部だよ!!


4.Perfume: ⊿(トライアングル)(2009)

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AB-%E5%88%9D%E5%9B%9E%E9%99%90%E5%AE%9A%E7%9B%A4-Perfume/dp/B00295R0XO

 Perfumeの2作目のアルバム。『トライアングル』。

 え、なんで急に?

 という声が遠くの方から聴こえてきたが、僕の音楽の趣向に新たな風を吹き込んだのは間違いなくPerfumeだ


 僕がPerfumeにハマったきっかけは、カウントダウンライブ2014-2015だったことは今でもはっきりと覚えている。

 曲目は"Cling Cling"と"Dream Fighter"と"チョコレイト・ディスコ"だったことも覚えている。この時のパフォーマンスが伝説的だったというわけではないが、なんとなくその曲の良さと明るさが気に入ってTSUTAYAでアルバムを借り、どんどんツボにハマっていき、アルバムの初回盤を全部買い、シングルの初回盤を全部買い、ファンクラブに入り、ライブツアーに通うことになっていく。

 そう、このアルバムこそ僕がはじめて聴いたPerfumeのアルバムだ。マイケルの一件で、「オリジナルアルバムこそ至高!」という思考に陥っていた僕は、当時出ていたベスト盤的扱いの"Perfume Global Compilation "LOVE THE WORLD""には手を出さなかった。


 このアルバムのいいところは「緩急」だ。Perfumeは緩急のアーティストだと誰かが言っていたが、このアルバムこそ、そのイメージ通りの出来だ。"love the world"から"NIGHT FLIGHT"までは眩暈がするほど素晴らしい曲が続くが、"Kiss and Music"と"Zero Gravity"は実験的すぎるのか、やや微妙な曲が続く。しかしそのすぐあとに"I still love U"と"The best thing"というPerfume屈指の名曲が続く。しかしその後には"Speed of Sound"が流れて、「あれ…」という不思議な感情になるアルバムだ。実に緩急が優れたアルバムだと思う。

 "love the world"や"Dream Fighter", "I still love U"は本当に素晴らしい。テクノポップ史に残るべき名曲だ。これらのようなテクノポップの後を辿って、僕はディスコだったり、最近の先鋭的なポップサウンドにも手を出せるようになった。Perfumeの音楽はそんな音楽的土壌を僕に与えてくれた恩人なのである

 

 そして音楽とはなんにも関係ないが、僕がのっちガチ恋になってからすでに7年ほど経過している。でものっちさんの美しさは本当に揺るがない。ずーっと美しい。今年で34歳を迎えるとはとても思えない。僕がのっちさんの好きなところを挙げるだけで9200字ぐらい必要なので今回は省くが、寡黙でマイペースでありつつも、しっかりとした自己を持っている人だと思う。そしてとにかく美しい。これからも健康でいてください、永遠の推しよ。


 長くなったので、続きは明日で!


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