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『真夏の心霊体験談。』

小学校低学年くらいの頃。

夏休みに家族で旅行したときの話しです。

その日は観光を終え日も暮れて、道すがら 今晩泊まる宿を探していました。

細い山道の脇には渓流が流れていて、山林に囲まれていたこともあり 鬱蒼としていて、とても薄暗かった。

その頃は携帯やスマホもない時代だったの で、「泊まれる宿があったらそこにしよう」と父が車を走らせ
しばらくして、とある一件の宿に到着しました。



夕方で、そろそろ日が暮れると言うのに
旅館の外観も、 ロビーも、客室の明かりも全部真っ暗で、 ほかの旅行客の騒ぐ声がまったく聞こえてこない...

不思議に思いましたが、みんな 観光の疲れを癒すために、客室で料理を食べたり温泉に浸かったりして休んでいるのだろう、少し早めの消灯なのだろうと思いました。

旅館のフロントにて 呼び鈴を鳴らし少し待ったあと、奥のほうから女将さんがやってきて、「いらっしゃいませ。ようこそおいでくださいました」と、快く迎え入れてくれました。


鬱蒼とした山あいの細い道。

土地勘もなく、これから夜になるし、暗くて道中も危険と判断。
これ以上、先に進んでも宿が見つかるかも分からなかったので、両親と姉と自分、家族四人でこの旅館に泊まることにしました。





女将さんに案内され、たくさんある客室を 通り過ぎ、薄暗い館内をずっと奥のほうへと進んでゆく。そこは 旅館のロビーから直線距離でだいぶ離れた、なんの変哲もない、端っこの小さな客室でした。

駆け込みの素泊まりでしたが、用意できそうな簡単な料理を女将さんに頼み、客室でテレビを見ながら食事をとったあと、母と姉と自分の3人は 旅の疲れを癒すべく、温泉に浸かることにしました。

この時点で、窓から見えた外の景色は すでに真っ暗 …

父はビールを飲んで、運転の疲れもあり、 「俺はいいから三人で行ってきな。」と
そのうち横になって眠ってしまいました。

大浴場に向かう際も、館内の明かりはほぼ消灯しており…
なんだか心細くなるような、異様な雰囲気が漂っていました。。

自分はまだ幼かったので、母と姉と同じ女湯へと入り、温泉で疲れをゆっくりと癒したのでした。
しかし、お客は自分たち家族以外、誰もおらず…
真っ暗に静まり返った館内を 部屋へと真っ直ぐ戻ることにしました


突然、旅館の外から大きな轟音がして
窓ガラス越しに見てみると
催しものとして、打ち上げ花火が何発か、夜空に上がっている様子でした。

周りに人の気配もなく、宿泊客の歓声もない……

とても静かな催し物だな…と
子どもながらに思った記憶があります


館内の照明も 窓の外もとにかく真っ暗で
非常灯のライトだけが、緑色にうっすらと怪しく照らし出され… 心なしか 不気味さを醸し出している気がした。




幼い自分は、父はどうしているだろうか…?
驚かせてやろうかといたずらに笑みを浮かべて
戻ってくるなり、そのまま勢いよく客室のドアを開け、思い切り襖も開け放つと…
何やら父の様子がおかしいことに気が付きます


居眠りからいま起きたのは違いないのだが、
父は青ざめた顔をして

「変な夢を見た!」

「白い服を着た女の人と小さな子供に首を絞められて、危うく窒息するところだった…!!」

「あれは夢だったのか……?」

と…
寝汗びっしょりになり 声を荒げている様子...

「どうせ酔っ払ってヘンな夢でも見たんでしょ」と
母と姉と三人でひとしきり笑いましたが、父はその悪夢が どうにも腑に落ちなかったようで、その晩は ずっと顔をしかめていました。




~ そして翌日 ~

チェックアウトのため、朝起きて旅館のフロントに向かうと
昨日まったく気配を感じなかった大勢の旅行客が、ロビーでくつろいだり、それぞれに雑談をしていたり、これから出発の準備をしているところでした。

昨日の館内、 
" 人の気配がなく、真っ暗闇に静まり返った様子 " とは思えないくらい
ロビーはお客さんで賑わっていました。

ふと... 

館内の窓から庭園や外を眺めて見ると
この旅館はどうやら「新館」と「旧館」、二軒の建て物が、手前と奥に立ち並んでいるようでした

どうりで。

自分たち家族はどうやら「旧館」に案内されたらしく、他のお客さんはほとんど「新館」に宿泊しており
ホテルの館内が暗くて誰もいなかったのはそのせいだったのです。


昨日の父の不思議な体験が気になった母は、受け付けの際に、冗談半分で昨夜の笑い話しの一件を 女将さんに話しました。 

そしてさらに冗談を交えて尋ねました

「この旅館って、過去に何か事件や事故ってありませんでしたよね?(笑)」
と その話しを振った途端、女将さんの表情が 曇りだし、こう言いました

「実は... この旅館の旧館で以前、火災が起こり...煙に巻き込まれて 一組のご家族が亡くなっているんですよ...」

それを聞いた自分たち家族四人は、

「 (あぁ、あの部屋だったのか...…) 」 


と妙に納得した様子で、

訳アリの一件を打ち明けてくれた女将さんと旅館の玄関前で別れの挨拶を交わし、
早々に その場を立ち去ったのでした……。

…………

………

……


山あいの渓流を吹き抜ける風は、
真夏の眩しい日射しに反して、涼しげな冷風と草木の生い茂った匂いを、微かに纏っていました。


心なしか背筋が寒くなるような...
なんとも言えない 後味の悪さを感じたことを、今でも覚えています。


あのとき。

部屋に戻るのが遅くなっていたら
父はいったい、どうなってしまっていたのだろうか……。




長文・駄文で拙い文章ですが

最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

この話しは、家族間の思い出話しで
いまだに… 語り草になっています


ちょっとだけ
大袈裟に書いているのは、内緒です。(笑)



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