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弾けんばかりの躍動感と繊細な愁いのバランスが心を震わせるに十分…★劇評★【ミュージカル=モーツァルト!(古川雄大・涼風真世出演回)(2021)】

 才能が肉体ではなく精神に宿っているのだとしたら、それはその人物の才能と言えるのか。その答えは絶対的に「言える」だ。自堕落な肉体としての自分を覆い隠すほど高レベルな作品や成果を才能から享受しているのだとしても、それは誰にも分からない。「才能」というものに実体はなく、その人物がもう一人の自分を自分の中に創り出しているだけかもしれないし、すべては精神の中の物語だ。しかしながら、その精神と肉体、あるいは実態と才能の分離を物語の中に組み込んだ時、モーツァルトの人生はそう読み解くことでしか理解できないような説得力を持つこともまた確かだ。象徴的なかたちでこの考え方を採用したミュージカル「モーツァルト!」は、だからこそ、知られざるモーツァルトの苦悩を的確に表現し、権力者たちのパワーゲームの中で自由への飛翔を望み続けたモーツァルトの真実の姿と、才能という得体の知れないものの実態を描き出すことに成功したのである。2002年に日本初演され、井上芳雄や中川晃教が演じ継いできたそのミュージカル「モーツァルト!」が、新たなツートップとして2018年に誕生した山崎育三郎と古川雄大のWキャストで3年ぶりに再び演じられている。2人とも昨年放送されていたNHK連続テレビ小説「エール」への出演で、日本のミュージカルへの世間の目を熱くさせた功績を引っ提げてのホームグラウンドへの凱旋となり、劇場は連日沸いている。特に2度目のモーツァルト役となる古川は弾けんばかりの躍動感と、繊細な愁いのようなものの表現のバランスが心を震わせるに十分で、悲しみのために爆発してしまう寸前のようなスリリングな緊張感もたたえる演技で観客を魅了。3年前の初出演の時より数段の進歩を見せていた。(画像はミュージカル「モーツァルト!」とは関係ありません。イメージです)
 ミュージカル「モーツァルト!」は4月8日~5月6日に東京・丸の内の帝国劇場で、5月14~17日に札幌市の札幌文化芸術劇場hitaruで、5月25日~6月7日に大阪市の梅田芸術劇場メインホールで上演される。緊急事態宣言発令下での劇場での上演については不明です。公演公式サイトなどで最新の情報をご確認の上お出掛けください。

阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でも読めます。舞台写真はブログでのみ公開しています。
★「SEVEN HEARTS」のミュージカル「モーツァルト!」劇評ページ

★ブログでの劇評は序文のみ掲載し、それ以降の続きを含む劇評の全体像はこのサイト「阪 清和note」で有料(300円)公開しています。なお劇評の続きには作品の魅力や前提となる設定の説明。古川雄大さんや木下晴香さん、市村正親さん、山口祐一郎さん、涼風真世さんら俳優陣の演技や、小池修一郎さんの演出に対する評価などが掲載されています。

 なお、ミュージカル「モーツァルト!」の「山崎育三郎・香寿たつき出演回」も既に掲載済みです。
★阪清和のエンタメ批評ォ応援ブログ「SEVEN HEARTS」ミュージカル「モーツァルト!(山崎育三郎・香寿たつき出演回)(2021)」劇評=2021.04.24投稿

 今回の公演では、ヴォルフガング役とヴァルトシュテッテン男爵夫人役がダブルキャスト(モーツァルトの幼少時の姿で才能の象徴的偶像としても登場するアマデ役は子役のトリプルキャスト)となっており、さまざまな組み合わせが組まれていますが、超人気公演であるため取材機会も限られます。この両バージョンではカバーできない「山崎育三郎・涼風真世出演回」や「古川雄大・香寿たつき出演回」の劇評は掲載できません。それらの組み合わせの劇評をご希望の方には大変申し訳なく思っておりますが、なにとぞご了承ください。

【注】劇評など一部のコンテンツの全体像を無条件に無料でお読みいただけるサービスは2018年4月7日をもって終了いたしました。「有料化お知らせ記事」をお読みいただき、ご理解を賜れば幸いです。

★ミュージカル「モーツァルト!」公演情報

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