#中学生男子
【ショートストーリー】41 なべぶたに口
フェンスを乗り越え、たんぽぽの綿毛に息を吹きかけるだけで良かった。
でも、楽になれそうな気がしたんだ。
「おい、ちょっと待てよ、おい!」
右腕が焼けたように熱くなった。
痛みじゃない。それは熱のようだった。
大学生かな?そう思った。
「何してんだ、危ねえだろ?」
ぼくは何も考えていなかった。思ったより綿毛が翔ばなくて、その時は何だか体よく全部終われそうな気がして線路にいただけだ。
フェンス
【ショートストーリー】21 タクシーと海
中学2年生の夏。僕は沖縄へ行った。
一人の大学生と旅先で知り合いになり、オリオンビールみたいな泡のでるジュースを片手に、青い空と青い海を眺めた。
米軍の基地が広がっている景色、反戦の詩が大きな意味をもつには僕は幼すぎた。
同じ中学生が立派な平和宣言を語っていた気がする。でも、平和や正義は僕にとっては戦隊もののように勧善懲悪な世の中の薄っぺらい真理だった。
人は平和ボケだと言うかもしれない。