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【ショートストーリー】も書いてみた

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喜び、悲しみ、悩めるとき、そこにはショートストーリーがあったりなかったり🍀
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#恋愛小説

【ショートストーリー】40 君へ

【ショートストーリー】40 君へ

雨が降れば世界が1.5倍繊細に見えた。

聴こえたと言ったほうが正しいかもしれない。鉄の塊が通り過ぎる音の輪郭はいつもより尖っている。雨の音がそれぞれの音に妙な奥行きをもたせた。

足元はどうだろうか。濡れたスニーカーから確実にしみ込んだ雨水をつま先で感じ、けっして気持ちのいいものでないのに、足裏で感じる地面の傾斜と、溝ぶたのなんとも言えない人工的なラインを明瞭な差で感じ取れるのだから不思議だ。

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【ショートストーリー】34  ほの暗い幻灯のなかで愛(かな)しみのアイを叫ぶ

【ショートストーリー】34 ほの暗い幻灯のなかで愛(かな)しみのアイを叫ぶ

テールライトが四つコンビニの駐車場に灯る。
僕は君の車の助手席へ移る。無駄な動作なんかなかった。テールライトが二つになり、それもまた、すぐに消えた。

季節の変化を僕たちは陽の短さで知るんだ。
切実な問題だった。
「お疲れさま‥‥今日はどうだった?」

君は僕の問いかけと同時に、いつものように頬を僕の右腕に寄せる。
「まだ、ちょっと明るいよ、ほら」

拒むわけでも嫌がるわけでもなく、その空間に言葉

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【ショートストーリー】15        メタセコイアの提案

【ショートストーリー】15    メタセコイアの提案

秋晴れだった。見通しのよい直線の道路で、風が変わった気がした。僕はあかりに呟いた。

「ねぇ、あかり。次にすれ違う車の色で、これからのこと決めよっか」
「え、何それ。そんなことで私たちの未来を決めていいの?」
「そんなこと?運命とか宿命とか信じるんだろ?だったらもう未来は決まってて、この賭けだってデキレースだよ。最初から決まってる」

ロードスターは、二人を乗せてその低い車高からいつもとは違う緑の

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