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特異サンプルからのブレークスルー仮説

鬼滅の刃から帰納法・演繹法を説明するという面白いセミナーがありました。ここでは、もう少し範囲を広げて「ブレークスルー仮説」の誕生から新方針決定までを深掘りして説明したいと思います。

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帰納法について

帰納法はいわゆる小さな存在のいくつかをピックアップして傾向を見て、それらから大きな集団の性質・傾向・法則などを定義します。

サンプル事例
「竈門さんの一家が鬼に襲われた」
「不死川さんとこの奥さんが鬼になって、自分の子供を殺した」
「胡蝶さんとこの娘さんが、鬼に喰われた」

▼上記から得られる前提

鬼は人を襲う、人類にとって有害な生物である。

▼前提から決定された方針・施策

鬼を退治する

このようにして帰納法から様々な前提をもとにルールや施策が実行されている。基本的に私たちが今運用しているプロジェクトなどは、先人が導き出した前提がベースとなっています。

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演繹法について

既存の前提に新しいサンプルを当てはめて、どう対応するか決めよう、というのが演繹法です。

新しいサンプル(事象)
「禰豆子は鬼である」

すでにある前提
「鬼は人を喰う、あるいは人を襲い、人類にとって有害な生物である」

▼サンプルを前提に当てはめ、生まれる「前提」

禰豆子は人を喰う、あるいは人を襲い、人類にとって有害な生物である

▼方針・施策

禰豆子を退治する

こちらが所謂「柱」たちがはじめ選択した施策であり、今までもこのようにして、鬼になった人々を退治する対象として、処置してきたわけです。

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特異なサンプルのデータ

炭治郎は、禰豆子は退治されるべきではないと言います。
しかし、それは同族の情であり、前提にしたがい今まで通りの処置をするべきだと柱たちは言います。

そこで提出されたのが鱗滝さんからのデータです。

特異なサンプルのデータ

禰豆子は2年間人を襲わず、今まで一度も人間を食べたことがない

ここで初めて、既存の前提を覆すブレークスルー仮説が出ます。

▼ブレークスルー仮説

人間にとって無害な鬼がいるのではないか

みんなその「仮説」の可能性を認知しました。
ただ、このサンプルは特例の「1例」であり、2年間そうだったとしても今このときからは判らないわけです。
このプロジェクトは非常に重要で、その施策如何では受ける損害は甚大です。念には念を入れてこのサンプルの事象を再確認する必要があります。
本当は別のサンプルもいくつか用意できれば尚良いですが、今はないので、同じサンプルで再テストを行うことになります。

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仮説の検証

不死川さんはそれをテスト検証しようと試みました。

サンプルの再検証

禰豆子は人を本当に襲わないのか

鬼の好む稀血を持った不死川さんは自分の血を出して、空腹状態の禰豆子を誘います。結果として、禰豆子はそっぽむいて襲うことはありませんでした。

▼サンプルにおける再テスト結果

禰豆子は人を本当に襲わなかった

▼新しい仮説

人間にとって無害な鬼がいるのではないか

上記の新しい仮説が証明されることになりました。

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新しい前提の追加で生まれる方針

こうして、特異点となるサンプルから新しい仮説が立てられ、親方さま(マネージャー層)は新しい前提と方針を打ち出し、柱(チームメンバー)もそれを承認しました。

▼新しい前提

多くの鬼は人を襲う、人類にとって有害な生物であるが、
稀に人を襲わない、有害でないものもいる

▼新しい方針・施策

有害な鬼か無害な鬼かを判断する
有害な鬼は退治するが、無害な鬼に関しては退治しなくて良い

この新しい方針ができたおかげで、無害で人間に協力的な鬼である「珠世さん」や「愈史郎くん」との連携も組めて、よりプロジェクトをうまく推進できるようになったのです。

現実のプロジェクトで置き換えるならば、今後まず有害な鬼か無害な鬼かを判断する際に判断基準や判断・承認フローも必要となるでしょう。

上記のような流れで、特異なサンプルから仮説はできあがり、新しい前提と方針・施策が生まれました。

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実業務の中でも、こういったケースはあります。
既存の前提や方針が絶対的であることはありません。時や場所によっても変化しますし、取得していたサンプルはごく一部であったという場合もあります。既存の前提を疑う心を忘れないようにしたいものです。

特異なサンプルがあったら、見逃さないことです。
そして見つけたときは、切り捨てずにデータを分析して検証してみましょう。新しい前提がみえ、ブレークスルー仮説が生まれるかもしれません。

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