神保町古書店街

神保町古書店の歴史は学生から始まった。
上級生は使い終えた教科書を売り
下級生はそれを買う。

今でいうマニアやオタクたちが専門書を買い、
喫茶店に飛び込み、
脇目もふらずに時をわすれ
読みふける。

その喫茶店は思索の邪魔をしない静かな音が流れているであろう。

コーヒー1杯で何時間も居座れる、
そういう場所であろう。

腹を空かせた学生の懐に優しい
飲食店や喫茶店が立ち並ぶようになった。

これが今の神保町の質感を作り上げた礎。
私にはそう見える。


私はあまり本を読まないのだが、
それでも手元に置いておきたい本がある。
私が河北秀也さんを知ったのは10年前。
駅で見かける麦焼酎「いいちこ」のポスターを手がけた
アートディレクターだ。

私は河北さんの著作「デザイン言論」という本が欲しかった。
デザイン界のバイブルとも呼ばれているらしい。
しかし1989年のものなので書店では販売されていない。
インターネットでの販売はされていたが、
非常に高価で注文をためらっていた。
私は散策ついでに神保町の古本屋に探しにいった。

当時付き合っていた彼氏を引き連れ、美術系の書店を数件周り、
大量に積まれた本の山や、本棚の隅から隅まで探した。
まるで発掘作業のように。

一旦喫茶店で休憩をして、再び探し回った。
疲れで集中力が無くなり、頭がぼんやりとしてきた。

やはり見つからない…。諦めて帰ろうとしたとき、
店外に置かれたワゴンセールの中に安い単行本に混じってその本はあった。。。
値段は800円。


最近もう一冊、神保町の古書店から取り寄せた本がある。
どうやら最後に残っていた1冊らしい。

梅崎幸吉作品集。

感度の鋭い目で日常を切り取って表現すると、
あのような作品になるのだろう。
人間性からも作品からも熱いエナジーをを感じる。

長く手元に置いておき、折に触れてページをめくる…
そういう本になることだろう。


画像2


神保町古書店街はそういう本に出会える街。

少し不思議な本との縁や
ちょっとした奇跡が起きそうな…そんな街だ。




この記事が参加している募集

買ってよかったもの

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?