夜もヒッパレ、ごきげんよう。

久しぶりに終電が過ぎても吞んでいる。徹夜する日の会話は決まって全然楽しくない。
「マウント取るなっていうけど、そんな人生無理だよね」
「食物連鎖ピラミッド見たことないのかって、思う」
「そもそもマウント取るなっていうマウントだし！」
「哲学じゃん」
元々腫れぼったいまぶたがどんどんと閉じていくのが体感で分かる。

だからといって、この空間やこの仲間たちが嫌いなわけじゃないし、まぁそこそこ楽しい。

こうやって令和を迎えた。
いつのまにか5年半が経つなんて思ってもいなかった。

結婚式の二次会で泥酔して、新婦の友人を背中から殴って以来、お酒を抑えている。
その人が今の彼氏だ。
「人生で初めて背中を殴られたよ」
「背中は急所じゃないと、思ったから」
「そんな冷静なヤツが人、殴るなよ」

彼氏の帰りが遅いので決まってチェーンのカフェで夜の時間を潰す。残業が迎えの他国籍カップルが言葉を教え合っている。
吊り橋効果が伝わるのか、ひやひやしている。
外国の学者の説だった気がするけど、信じているのは日本人なだけが気がするけど。

と言っていると、彼氏から連絡がきた。
「やばい。人轢いた」
レンタルシェアバイクでおばさんにぶつかったらしい。
おばさんは血を流していると、声を震わせている。
「いま、行く」
現場に向かった私は、パトカーの数に驚いた。
「通報した男、逃げたらしいぞ」
「！」
目が丸くなって、酔いがさめた。