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君の目は綺麗な再開発のように。

「ウソをつく人は嫌い」という嘘をつかれた。

前の彼女は既婚者の変態とがっつり不倫していたのに、平気でこんなことを言う人だった。
だから別れて「よかった」わけだけど、なぜか僕の心と体はそれを受け入れなかった――。

新しい彼女も整形マシンだった。
彼女の家で部屋飲みをしていたら、昔の荷物が入った棚をのぞく流れになった。なんでそんな流れになったのかは結構酔っていて覚えていない。
すると、期限の切れた運転免許証が見つかった。
「慌ててたからすっぴんで行ってさ。大体こういうの、変に映るじゃん?」

はっきり言ってそういうレベルじゃなかった。
二重のキラキラした目で彼女が必死になっている。
そこに映る彼女は狂おしいほどのたれ目で一重まぶただった。

そういえば、この子も「ウソをつく人は嫌い」と言っていた。
嘘ではなく、顔の再開発をしていただけなので、しょうがないのかもしれないが、とにかく気持ち悪くて別れた。
結局ルックスかと言われた。違う。
一重が嫌なんじゃなくて、嘘をつかれたことでもなくて、後ろめたい人生がさも「普通だよ」「普通だけど」みたいに振るまわれたから。
僕の心だって整形したいよ。

最後の彼女は違った――。

休みの日。日比谷あたり。僕のスマホが鳴る。
「やべっ、取引先からだ。ちょっと出ていい?」
「ねぇ私と仕事、どっちが大事なの?」
「え?」
「私と仕事、どっちを選ぶの?」
僕はユキを選ぶしかなかった。

すぐにこのセリフを言う子だった。
「私と趣味~」
「私と男友達~」
「私と実家~」
もうせいせいしていた。

そんなある日、僕は心臓発作で倒れた。隣に彼女がいた。
「……ユキ、ごめん。心臓に病気を持ってて」
「え。そうだったの」
「救急車、呼んで……くれないか」
「私と自分の命、どっちが大事なの?」

は? と思った。
「私と自分、どっちが大事なのって聞いているの」
「……僕が死んでも……いいのか」
「答えて! どっち?」

僕は「……ユキ……」とつぶやくしかなかった。
「ありがとう。好き」

ユキが笑っていた。
最後まで絶対にウソをつかなかった。




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