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オオガミさんとお似合いになりたい

今日もひとりでつけ麺をすすって帰るだけの日々。

新卒採用で入社した会社も、早3年が過ぎた、と周りには言われるけれど――。俺は途方もなく長い砂漠を歩くような感覚がある。

それもそうだ。
入社翌日には挨拶として先方に送ったメールに社外秘のファイルを添付し、誤爆。さらに翌週の歓迎会では一次会でガチガチになって無言。酒が入った二次会で挽回しようと思ったが、記憶なくすほどの嘔吐カーニバルを開催し、タクシーで連行。

わずか1週間ほどで仕事終わってる、シゴオワ認定をされてしまった。もちろん業務を無難にこなすことはあっても最初の印象とイメージがあるから難癖を付けられたり、自分でもうミスはできないと縮こまってしまい「ホウレンソウ」を怠ることが増えた。

どれも全部全部俺が間違っているんだけど。
わかってることをわかってくれない環境がもどかしく、どんどんと自分のマイナス要素を固めたマトリョーシカを作り出して殻にこもっていった。

結果として、無表情のつけ麺ズズズ、夜20時になっている。

そんな会社で居場所のない俺だが、一丁前に職場で恋をしている。
オオガミさんという1個上の先輩で、俺は浪人をしているから同じ年齢だ。

オオガミさんは狼に育てられたらしく、昔ドキュメンタリー番組に出演したり、体験をもとにした映画も作られたことがあるらしい。
でも、あまりヒットせずそれを知っている人は会社以外では少ない。

とにかく静かで冷静だが、繁忙期や夜になると怒りをあらわにするところが好きだ。
あざとさのない人間くさいというか、オオカミっぽさに惹かれているのだと思う。あとはシンプルにルックス。
キリッとしたクールビューティー系の同世代と出会ったことがなかったから、余計に夢中になるのだろう。

でも、2度ほどフラれて、3回ほど噛みつかれた。
他にも告白をしたりアプローチをしたりした社員がいるらしいが、どれもダメだったみたい。
俺が「仕事ができない」からフラれたわけではない。
オオガミさんのハードルが高いのだ。

満月のあす。久々に部署飲み会がある。
本当ならばぼっちの俺は顔を出したくもないが、もう一度告白するチャンスだ。
満月はオオガミさんの盛りの時季だと教えてもらった。

チャンスはもうない。
なんとかオオガミさんに噛まれないようにしたい。


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