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将棋を通じて培われたもの
「将棋やってて良かったんやろな」
時々そう思うことがあります。10年くらい前から大会には出ておらず(一度だけ助っ人で参加した団体戦を除く)ネットで少し指す程度ですが、大学の将棋部に所属し学生やアマチュアの大会によく出場していた頃の経験が役立っているという実感があるのです。
今でも交流のある学生時代の友人は皆将棋部出身者なので、将棋のおかげで一生付き合える仲間が多くできたのは間違いありません。ただ、それは他の課外活動でも同様だった可能性があります。将棋部だったからこそ得られたのは、重要な場面における決断力です。
将棋の指し手は自分で決めるしかありません。しかし、それが悪手で相手に咎められると、自分の決断のせいで負けることになります。将棋は自分と相手の戦力や布陣が完全に公開されているので、不確定要素はありません。すなわち、負けるのは絶対に自分のせいなのです。
そんなゲームなので、小学生の頃はポンポンと決断良く指せていても、ほとんどの人は経験を積むにつれて慎重になります。これはじっくり考える力がつくと同時に、苦い思い出が決断力を鈍らせる一面もあるように思います。私の場合は特に、相手が強豪だと自分を信じられず手が伸びなくなったような気がします。
しかし、いつまでも決断を先延ばしにすると、持ち時間がなくなってしまいます。ゆえに、先の見通しがわからなくても、しかるべきタイミングで腹をくくり、自分を信じて決断しなければなりません。
これは人生も同じです。与えられた時間は有限であり、リスクを嫌ってあらゆる決断を先延ばしにすると、ただ老いていくばかりです。
私は器用に生きられるような人間ではなく、いろいろと失敗もしてきましたが、幸いなことに人生の節目での決断は概ねうまくいっているように思います。それで、将棋を通じて培われた決断力が役に立っているような気がするのです。
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