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私は、もう二度と届かない言葉を知っている

「ブログやったら?そのヘッタクソな絵でさ」

それが私の人生を変える言葉


旦那が死んだ後の出来事を、面白おかしく話す私を見て
ブログでも書いたらいいじゃないかと友人が会話の中でポロッと出した言葉


私は旦那のことを愛していたし
これからも愛し続け
仲のいいおじいちゃんと おばあちゃんになる予定だった


なのに
彼は突然心臓が止まって死んだ
結婚4年目の41歳の夏


仲良し夫婦だった私たちは
出会って10年、初めての長いケンカをし
子供を連れて実家へ帰省している中
週末話し合うことになった矢先に
その週末を迎えることなく

彼は死んだ

私の話し相手は彼だけだった
彼だけいれば良かった
彼と話している時間が一番好きだった


棺に書いた言葉は
「ゴメンナサイは?」

私は続くはずだった会話の先を失くした

届けたくても届かなくて
聞いて欲しくても聞いてもらえなくて


行き場のなくなった言葉を
どこかにぶつけるように
私は周りに声を出すようになった

出さなくてはいられなくなった

内にこもった言葉と共に
一緒に死んでしまいそうだったから



今の気持ちや考えていること
最近の出来事や愚痴
欲しいもの困っていること

何でもかんでも
自分の気持ちを何も隠すことなく
人に話すようになった



そんな会話の中から出た「ブログしたら?」

ブログを始め

縁が広がり
世界が変わった

ただの一言
何でもない一言

言った本人でさえ
「そんなこと言ったっけ?」と言うほどの些細な言葉

そんな些細な言葉で
世界が変わった


ヘッタクソな絵で書き始めたブログは
200ページ近くのエッセイコミックで出版され
取材を受けることも増えた

誰かの力になれていることもある
「ありがとう」という言葉を沢山もらった


これは
軽口の中で出た些細な言葉を
私が拾った結果

私が今まで大事にしてこなかった人との会話

彼が死んで
隣の人と言葉を交わすことの愛おしさを知った


その何気ない会話の中には
大きな大きな可能性が広がっている

誰かと交わす言葉の中には
小さな種が沢山あって

そして
その
言葉を交わす時間というものは

限られていて
刹那的で
同じ時間を共有する
何にも代えがたい
大切な時間だということ


隣にいる人と
会いたい人と
好きな人と



この瞬間に出会え
言葉を交わすことのできる奇跡

その言葉の中にある
可能性という種

自分の中にあるものだけじゃ生まれないものがある
誰かと話すことで生まれるものがある


え?私ってもしかして彼のこと好きだったの?
その話、企画にしていい?
それってさ、こういうことじゃない?

言葉を交わすことのできる奇跡と
そこから何か生まれるかもしれない奇跡


言葉は人を繋ぎ
可能性を広げるもの


人生は短い
時間には限りがある

この会話が最後かもしれない


そんな中で
言葉を交わせる時間を
愛おしく思わずいられようか


さて
今日は誰と話そうか


この声を
誰に届けよう

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