文鳥・白ちゃんの病気とバーゲンでの失敗 親子でHSPの私たち

 ムスメの愛鳥・文鳥の白ちゃんが、「プツプツ」と呼吸をするときに音を漏らすようになったのは昨年の12月頃でした。「何かがおかしい」と心が騒ぎ、年末に行きつけの動物病院を受診しました。しかしキリリとした本人の姿(小鳥は天敵(先生)の前では弱みを見せない)もあり、呼吸の際には少し異音こそあれ、診断結果は「異常なし」でした。
 我が家に来て3年半の間、病気知らずだった白ちゃん。「今回も心配のし過ぎだったね」と軽やかな気持ちで新年を迎えたものの、いっこうにプツプツ音が収まらず、むしろひどくなっているみたい。鳥類を専門とされる先生の診立てを信頼して経過観察をしようとする反面、何事にも例外はつきものだと不安が拡大していく。ムスメと私は気管支炎や肺炎の可能性を疑い、動物病院へ電話をかけて先生の指示をあおぎました。再受診を断念したのは、1月初旬の北陸は2018年の再来を思わせる豪雪に町全体が包まれていたから。小一時間かかる雪道のドライブは無謀と判断したうえで、電話相談に切り替えたのです。
 容体を話すと抗生物質を処方され、宅配便で薬を受け取り自宅での治療がスタートしました。とはいえ幼鳥の頃からビタミン剤などを溶かした水を飲まない白ちゃんは、今回も抗生物質入りの水には口をつけません。そのうちに、くちばしを開けて尾羽を上下に揺らしながらハアハアとランニングの後のような呼吸を始めました。……もう電話には頼れない。みぞれの降る日に、私たちはバスで再度動物病院へ向かいました。
 「直接診ていればよかったです。これは甲状腺機能低下症ですね。すぐにヨウ素と栄養剤を混ぜたお薬に切り替えましょう」
(再受診を思い立ってよかった)
病名におののく一方で、感情のダムが決壊したのか、これからへの緊張と謎の解けた安心とが混ざり合い、一気に心へなだれ込んでくる。呆然と治療の説明を受けたあと、滲む疲れを自覚しつつ、雪明りに浮かび上がるバスに揺られ帰宅しました。

 ムスメが学校へ登校できなかったころ。
誰にも心を開けなくなりそうだった彼女を救ってくれたのが、我が家へやってきた文鳥のヒナ、白ちゃんでした。白ちゃんにもしものことがあれば、
ムスメはどうなるだろう。家族2人で煮詰まっていると求愛ダンスを披露してくれ、私の小言にへこむムスメに寄り添い鳥語で苦情を述べる白ちゃんは、我が家で一番の人格者です。その白ちゃんのやさしさと勇敢さも、命があってのものだと今更ながら気づく。
 白ちゃんの命を守るための看病が始まりました。お薬が嫌いなのねと悠長には言ってられない。ギリリと指に後が残るくらい噛みつかれても怯まず、手のひらのヨウ素入りの水滴を白ちゃんの口元へ近づけます。「すごいねえ、勇気があるねえ、さすが群れのリーダー」と声掛けをしながら、ネットで発見したヨウ素入りのサプリメントを併用する治療が再開しました。
 白ちゃんの看病を開始して2日目、私は命と向き合うプレッシャーから逃れるためか、冬物バーゲンをチェックしていました。ふと何か気持ちを引き立てる1枚が欲しくなったのです。北陸の曇天とは反対の明るい色味のトップスがいいかも……、よし水色のカーディガンを探そう。
商品一覧を見続けて発見した1枚のカーディガンを、ネットで購入しました。再入荷待ちの商品は到着までに1週間ほどかかるとのこと。それは看病の時期とも重なり、私は白ちゃんの容態を気遣う気持ちと新しい洋服を待つ期待に挟まれ、宙ぶらりんな時間を過ごしていました。
 ある日の午後、白ちゃんは求愛ダンスを踊りました。そういえばお部屋(ケージ)の中でも飛び跳ねている。「わりと一気に良くなります」とおっしゃった先生の言葉は本当だった。我が家の場合、少々時間が長引いたけれど、きっと白ちゃんは全快する。希望が確信に変わった矢先に、タイミング良くカーディガンが到着しました。

 待っていましたとばかりに試着をしてみるも、微妙に似合わない。
紫陽花のような色調の似合うサマータイプの私には、温かみを感じる水色が浮いてしまうようだ。鏡の中に映る自分は何やら妙で、念のためにムスメにも確認してもらうと「似合ってないよね。体育の先生みたいだ」と、とどめを刺される始末です。それでも手持ちの服とコーディネートしてみるも、どうしてもしっくりこない。看病疲れもあって、買い物の失敗に落ち込みました。あの心弾みは本物だったのに……。
とはいうものの、数日経って散財と失敗を潔く認めたら気持ちがほんのりと楽になり、久々に本を手に取りました。
斎藤薫さんの『されど“服”で人生は変わる』

「生きる意欲とオシャレの意欲は、イコールだと考えていい」
冒頭の文章を読んで、自分のなかで合点がいきました。
白ちゃんの容態を何としても回復させねばとのプレッシャーから衝動買いに走ったと思い込んでいたけれど、洋服を買った理由は他にもあったのだ。
私は新しいシーズンを、ムスメと白ちゃんとこれまで以上に笑い合う日々にしたいと、無意識に願っていました。だから空色の洋服を身に纏おうとしたのです。心の深いところから生じた欲求が、バーゲンでの洋服購入につながったとわかり、散財をしたものの気持ちが晴れやかになっていく。

 白ちゃんの完全復活とムスメの体調不良(長期休み明けはいつもこうなる)の解消には、もうしばらく時間がかかりそう。でもこうしてnoteも書けるし、私たちは結局のところ何があっても大丈夫。
道路の雪が消えて日差しも春めくひととき、男の子とお父さんが、家の前の公園で遊んでいます。穏やかな日曜日の午後は、幸せに満ちている。





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