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女の体を捨てたかった
吉本ばななの小説に、こんな一節がある。
母を亡くした女性が主人公の物語だ。
この文章を読んだとき、私は二十歳過ぎだった。救われたような気がした。体を乗り物に例える考え方は、私の心をふっと軽くした。
そっか。私の体は入れ物でしかないんだ。
そう思ったら外見や性別のしがらみから少し自由になれた気がした。
私という機体のてっぺんには母譲りの髪と顔が付いている。機体は全長が他のものより少し長くて、う
君は信じられないくらい幸せになる
自分のことをあまり知らない人がくれた言葉が、思わぬところで支えてくれることがある。
私にとってそれは、お守りのようになって時々私に根拠のない自信をくれる。
大学の時に、留学生の友達と文章で話したことがある。「文章で」というのは、私が英語を話せず、その子も日本語が思うように使えなかったから、スマホの翻訳機能を使って書き出した文章を見せ合って話をしていたのだ。私もその子も、お互いのことをあまり知らな
遠くに行ったひと 映画『アフターサン』
(映画『アフターサン』の内容を含みます。)
今年の夏は映画館で『アフターサン』を3回観た。この映画が面白かったから、というよりは、もう一度観に行かずにはいられなかったのだ。どちらかといえば、上演中ずっと、観ているのがなんとなく苦しかった。穏やかで、ゆっくりとした時間が流れる夏がそこにあって、しかしもうなにもかもが届かないものとなってしまった、というようなどうしようもない感覚に包まれた。
観たとき