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【全曲紹介と回想文】aiko「彼女」

7thアルバム「彼女」
タイトルの「彼女」は男性有名人の名前を検索する時にスペースで候補に出る方の彼女ではなく「her」の彼女です。2006年8月リリース。僕は大学4年生でした。みんな就職活動してたか、内定してたやつすらいたんじゃないだろうか。僕も2社か3社くらい受けた気がするので、就活中に聴いたアルバムのはずです。はずです、というのは就活の記憶がおぼろげだからです。説明会のあるビルへ行く途中で迷子になって、入社を断念したりしていたのが私の就活です。

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1.シャッター
景気の悪い商店街を演出している方ではなく、切る方のシャッター。季節は秋口のようです。三戸なつめさんより9年早く前髪を切りすぎていました。このアルバムでは前奏曲のようなイントロが入っていますが、後のベストアルバム「まとめ」収録バージョンでは6曲目になるためかカットされています。そんなイントロを経ての歌いだしが劇的。「格好悪いキス」ってどんなキスなんでしょうかね。
収録ベストアルバム:「まとめⅠ」

2.気付かれないように
「昔」付き合っていた「あなた」と久しぶりに再会して、勇気を出して「今」のことを尋ねる、というお話。「あなた」の方には「今の彼女」がいるんですね。そして明言はされないですけれど「あたし」の方には「今」の誰かはいなくて、「昔のあなた」をまだ見ているのです。こうやって詞の要素をまとめているだけで切ねえですね。
収録ベストアルバム:「まとめⅠ」

3.キラキラ
明日はきっとちゃんとやってくる18thシングル。「エナジー」などと同じく、2番のサビの前のところを誰かが歌っていたらコーラスの方を歌いたくなります。
収録ベストアルバム:「まとめⅡ」「aikoの詩。(Disc.2)」

4.キスする前に
大好きな曲です。サビの「ひ、み~つ、らん、で~ぶ」の「ひっ」とか「らんっ」とかの、ぴょこんと跳ねるようなaikoの歌い方を大変気に入っています。DVD「LOVE LIKE POP add. 10th Anniversary」(LLP10)では「もいちどリップ塗るから~」の部分が冒頭にプラスされて、ライブ全体の幕開けを飾っている。アルバムの収録曲ながら「だから私はドコモです」の本人出演CMでも流れていました。だけど私はボーダフォンでした。

5.深海冷蔵庫
関連のまるでない単語を連ねた言葉。でも聴き終わる頃にはしっくり来るのがaikoマジックです。歌詞に出てくる「22日」はaikoの誕生日、「夢のダンス」は「暁のラブレター」に収録されている楽曲を思わせます。「卵を割ってかき混ぜる」とありますが、何を作っているんでしょうか。「腐ってしまう前に早く食べてしまわないと」ともあるので、おそらくしっかり火を通すでしょう。となるとオムレツあたりですか。茶碗蒸しの線もなくはないですか。

6.17の月
印象に残る詞は「あなたはあたしよりうんと背が高いからこの道もきっと見晴らしがいいのだろう」のところ。曲についても、この部分にはここだけのメロディがついています。「カブトムシ」では「少し背の高いあなた」が居ましたが、こちらでは「うんと背が高い」あなた。aikoと同じ目線で物を見る「あなた」はなかなか現れないのです。リズムはお馴染みの3連符。てれれてれれ。

7.その目に映して
控えめな敬語調ではありながら、前向きな気持ちを歌っている曲です。サビの歌詞が特に好きです。年齢を重ねていくと時や月日が経つのを早く感じて、それを虚しく嘆かわしいことのように捉えてしまいがちですが、aikoは「毎日を誇りに生きた証拠」と強く肯定してくれています。そうやって思えるように生きられたらいいですね。

8.ひとりよがり
葉が舞い落ちるような寂しげなアコースティックギターで始まる曲。アレンジは根岸孝旨さん。このアルバムでは他に「キスする前に」と「恋ひ明かす」を担当しています。ロックな印象が強い根岸さんのaiko曲では異彩を放っている。というか、aikoの曲全体でも珍しい雰囲気。フォークソングっぽさも感じます。「aikoの曲から何かかけて!」と言われて「ひとりよがり」をチョイスする人がいたら「お」ってなるかも。

9.あられ
こちらは淡々と降り注ぐようなピアノが印象的です。あられはおせんべいの子供のことではなくて、めちゃんこつおいロボでもなくて、雨冠に散ると書くあられと思われます。ちなみに、めちゃんこつおいロボ風のaikoはBP会報誌vol.68で見ることができます。ファンクラブのページでバックナンバーを販売していますのでぜひお求めください、と思ったらこの号が売り切れていました。人気。2020年7月10日のaikoのTwitterにもその時の写真があるよ。

10.スター
生まれ変わっても見ていたい19thシングル。映画「あらしのよるに」の主題歌。原作者の「きむらゆういち」さんを木村祐一さんと混同していたくらいボーっと生きていた時もある。
収録ベストアルバム:「aikoの詩。(Disc.3)」

11.恋ひ明かす
歴史的仮名遣いが使われた珍しいタイトル。この曲では気持ちを「真空パック」にしますが、のちの「冷凍便」では宅急便で送られてきたハートを解凍しています。人の心は瞬間に現れては消えるようなものでなく、くっきり留まって残るものなのかもしれません。アレンジは前述の通り、根岸孝旨さん。ゲーム「メタルマックス」のライブアルバムでもベースを弾いてた根岸さんです。この曲ではギターも担当。弥吉淳二さんの名前も初めてクレジットされています。

12.雲は白リンゴは赤
夏は何度もやって来る20thシングル。MVでaikoが指を素早く折ったり戻したりするところがあるんですが、そこが好きです。
収録ベストアルバム:「aikoの詩。(Disc.1)」

13.ある日のひまわり
「キラキラ」のカップリング。「ひまわりになったら」以来のひまわり曲です。眩しい夏を象徴するひまわりの花ですが、どちらの曲も詞については明るいとは言えませんね。ちなみに「下を向いてる」枯れてしまったひまわりは、花は色褪せ葉も黒ずみ生気を失い、一見してそこがひまわり畑だったとは気がつかないくらい、変わり果てたホラーな光景になります。
収録シングル:「キラキラ」

14.瞳
鍵盤を基調としながらストリングスとホーンの美しい旋律が重なる、締めくくりに相応しい一曲です。「LLA6」などのライブで披露された時には2コーラス目から他の楽器が加わるバンド編成のアレンジでした。アルバムの曲ながら2006年の紅白でも歌われたことがある名バラード。お友達が出産される時に作った曲ということで、赤子に遠い先の人生の機微を厳しくも優しく語りかける詞です。遠い先といっても、この頃に生まれたお子さんならもう高校生くらいでしょうか。
収録ベストアルバム:「まとめⅠ」

18thシングル「キラキラ」
「キラキラ」と「aiko」の文字の間にキラキラした★が6個ほど流れているのがミソです。リュウシンチュウです。

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1.キラキラ
収録アルバム:「彼女」
収録ベストアルバム:「まとめⅡ」「aikoの詩。(Disc.2)」

2.ある日のひまわり
収録アルバム:「彼女」

3.より道
「より」がひらがなであるところが好い。ピアノ伴奏のみの、ささやくような歌声のバラードです。イヤホンを耳に深くつっこんで音量をうんと上げて聴くとaikoの吐息と声で頭の隙間を満たすことができます。2作あとのアルバム「BABY」にはギターを基調としたまったく異なるアレンジで収録されます。かなり印象が異なりますよ。
収録アルバム:「BABY」(※別アレンジ新録)

4.キラキラ(instrumental)

19thシングル「スター」
PVは風の吹きすさぶ山肌で歌っており、かなり寒かったそう。そんな寒冷地仕様ということだったのか、ジャケットでもかなり長めのボリューミーな髪をしています。

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1.スター
収録アルバム:「彼女」
収録ベストアルバム:「aikoの詩。(Disc.3)」

2.蝶の羽飾り
ピアノのフレーズをなぞるようなサビの歌声が印象的な曲です。aikoの歌が先にあるはずなので実際には逆なのでしょうかね。1コーラス目に「好きで 好きで 好きで」と歌っていたメロディに、2コーラス目では「嫌い 嫌い 嫌い」という言葉をあてはめているあたりが憎い。言葉としては反対ながら感情の動きとしては同じ方向にあるように感じるから不思議です。

3.こんぺいとう
2019年7月6日放送「aikoのオールナイトニッポン」はこの曲の弾き語りで始まりました。あぅわぁうぁわぁあーい…まーつーげーをとーおり――。
収録ベストアルバム:「aikoの詩。(Disc.4)」

4.スター(instrumental)

20thシングル「雲は白リンゴは赤」

初回盤と通常盤のジャケットの違いが脳トレなみに微妙な違いなのが特徴です。

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ブックレットで着ている服には、リンゴと雲と思われる刺繍が小さく入っていたり。

1. 雲は白リンゴは赤
収録アルバム:「彼女」
収録ベストアルバム:「aikoの詩。(Disc.1)」

2. シーソーの海
小さく寄せては返す波のような「チャッ、チャッ」という鍵盤が可愛い曲です。一日の終わり、最後にこの曲を聴きながら眠れたらきっといい夢が見られるでしょう。サビの終わりでのびやかに歌われるタイトルは、力士の紫蘇乃海関が白星を挙げた時の行司の勝ち名乗りのように聞こえなくもない。

3.まつげ
ぽわーんとしたキーボードが優しいバラード曲。CDなどにはいまのところ収録されていませんが、ライブ仕様の別バージョンがあります。そちらはイントロを聴いただけでは「まつげ」とはわからないくらいガラリと印象が違います。リリースがかなり前の曲でも思いもよらないアレンジがたびたび新たに生まれるのは、aikoのライブに足を運ぶ大きな楽しみのひとつなのです。

4.雲は白リンゴは赤(instrumental)
ホーンセクションが華やかなので、ぜひ全国の吹奏楽部に球場で演奏してほしいところです。


※シングルコレクション「aikoの詩。」収録曲についてはリンク先にも記事があります。