あっち向きのスリッパの話
親元を離れて10年以上。
なかなか気軽に帰れる距離ではない上に
高齢のばあちゃんもいるので
コロナ禍の帰省のハードルはとっても高くって。
諸々少し落ち着いてきたし、PCR検査もして久しぶりに帰ってきた故郷。
駅まで愛車の軽トラで迎えに来てくれる父ちゃん。
前あった時よりちょっとおでこが広くなってる父ちゃん。
そんな父ちゃんの運転で約20分。
実家に帰って玄関を開けるといつも
あっちを向いたスリッパが出迎えてくれる。
友達からも「藤子の父ちゃん貫禄あるよね」と言われる程度には強面な父ちゃんが
下駄箱からわたしのスリッパ出して
あっち向きで揃えて置いてくれてて。
玄関入って靴脱いだらそのまま
スリッパに足をつっこめるように
進行方向を向いたスリッパ。
ただそれだけのことなんだけど
熱烈歓迎の象徴みたいで
ぶっきらぼうで強面な父ちゃんが
ピンクのスリッパを並べてくれてる姿想像したら
目頭の奥の方がちょっとだけツーンってして
たぶんこれ巷でいう幸せカテゴリーの気持ちだよなぁ
なんて考えながら
しっかり手洗いうがいをして
乾杯のビールを2本
冷蔵庫から取り出した。
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