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小澤メモ|SENTIMENTAL JOURNEYMAN|おっさんの旅。

36 おっさんの旅  宮古島❻

オッサンの海に求めるポイント。
自慢にもならないが、中学生の頃から最近にいたるまで、50メートルのプールを潜水で泳ぎきることができる。さすがに最近は、(よし、やるぞ)と気持ちを整えないと厳しくなってきたけれど。ということで、泳ぎに自信はある。自信はあるようで、海水浴に関してはまったく自信がない。というか、海底が見えないような深いところを不気味に思って、怖くなってしまう。それでも、波乗りに夢中になってた頃は、沖合までいくことはあった。そして、サーフボードをまたいで波待ちしながら、(ああ、この下は深くて、何がいるのかわからないんだよなあ)と、ビビる気持ちをグッとこらえていた。だから、海で泳ぐときは、離岸流に注意しながら、ひたすらビーチの右から左へというように横に一直線で泳ぐようにしている。もちろん、少し深いけれど、ちゃんと海底が見えるあたりを見極めて。ということで、夏だ!海だ!太陽だ!というくせに、ビビりなオッサンが海水浴に求めるものは、遠浅で、透明度が高く、波があまり立たない(サーファーが萎えてしまう……)、できることなら美しい砂浜になる。天然のプールのようなものになる。

宮古島の海はパーフェクト。
天然のプールといっても、オーストラリアのインスタ映えスポットのボンダイビーチみたいなのはちょっと違う。波が叩きつけてくる海岸にプールがつくられていて、冲に流される心配はないけれど、海と密接になって泳ぐことができる。だけど、それはスケートボードでいうならば、街の中につくられたパークみたいなもので、絵としては面白いけれど、やっぱりそそられない。そういうところからも、宮古島のビーチは最高のスポットが目白押し。長間浜のように波が荒いときがあって潮流も注意しないといけないビーチや、サンゴ礁を傷つけないように泳がないといけないビーチや、シュノーケリング向きのビーチなど、いくつかは気をつけないといけないところもあるけれど、たいがいは天然の美しいプールとか草原のような海だ(海はどんなシチュエーションだって油断したりナメたりしてはいけないものだ)。

八重干瀬で泳ぐ。
とにかく深いところはノン・メルシー。しかし、宮古島に行くなら、八重干瀬の海を体感しておかないといけない。そこは、ボートで30分~1時間ほど沖合に出たところにある生きたサンゴのサンクチュアリ。かぎりなく透明に近いブルーな海と、海面を乱反射する太陽光線と、その下に広がるサンゴの楽園と悠々自適に泳ぐ餌付けられていない魚たち。ニモ(カクレクマノミ)やウミガメも泳いでいる。サメもいたりいなかったり。足元が見えないんじゃなくて、足元の深淵まで見えすぎて、恐怖心を突き破って圧倒されてしまう。なんていうのか、(すごいな。もうかないません!)と、良い意味であきらめてしまえる。それにポイント(干潮時)によっては、海面より上にサンゴの山が出ているところがあったり、水深が1メートルに満たないところもあったりする。そのように、海外線を突っ切るように泳いでいるだけでは見ることも体感することもできない世界とドキドキがある。それは恋愛ソングや青春映画に縁遠くなったオッサンでも十分に楽しめるものだった。宮古島、池間島、伊良部島などから運行しているツアー各社があるので、必ず行ってみたらいいと思う。八重干瀬の海を知ることができて、オッサンの人生は豊かになった。マンガ『マスター・キートン』で、印象的な言葉がある。たしか5巻だったか。何はなくても、その言葉を思い出すと、少し幸せになれる。
(坊や、目がいいんだな。目がいいと人生は楽しい)
八重干瀬の海を泳いでいるとき。空を見上げ、海中の魚を追いかけ、息が続くかぎり潜っていき、ゆれる海に身を委ねる。そのすべての原色な夏の風景をこの目で実感し、DNAをふるわせられることは、とても楽しくて幸せだ。その海は、オッサン旅だろうがオバサン旅だろうが、傷心旅行だろうが、新婚旅行だろうが、どんな旅人に対しても、等しく美しい。36
(写真は、八重干瀬を船長がドローンで撮影してくれた)

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