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専業主夫の49歳が精神科病院に入院したときの話(3)死ぬ気はどこへ・・・?

専業主夫の薄衣です。

今回は初めての精神科病院で迎える、初めての朝からです。

前回のお話しはこちら。


起床

「薄衣さ~ん、おはようございま~す。」
男性の声。そこでハタと、自分が入院していることに気がつきます。
頭が重い。きっと眠剤の影響と思います。この重さ、この日はほぼ1日続きました。

声の主は看護師で、
朝イチで採血がありました。
取りあえずそれだけで、また

バタン! ガチャッ!

強烈に聞こえるドアと鍵の音。
そこからしばらく何も無い時間を過ごします。一体今日は何がどうなるんだろう、みたいな感じでした。

この時はまだ、私は数日で退院出来ると勝手に思っていました。

朝食からはじまる1日

7時30分、朝食が運ばれてきます。
この病院は、私からするとご飯の量がメッチャ多いです。でも、この時はサラッと完食。
そういえば、前日は朝しか食べていなかった。食欲って素直です。

食事の後、午前中に2度、看護師が部屋に来ました。なんとなく様子を見に来られた感じですね。

1度目は看護師から「大丈夫か、不安はないか」的なことを聞かれたので、「私はいつまでこの部屋にいるのか」を尋ねたところ、「先生じゃないと分からない」との答え。シンプルでした。
気力を奪われました。言わなければよかったと思いました、この時は。

次に、トイレのあと手を洗いたい旨を伝えると、ウエットタオルを一掴みゴチャッと頂けました。まぁ一応、言ってよかったと思いました。

2度目は背の高い男性看護師。
少しご自身の話など、世間話を挟みながら、簡単な説明を受けました。

何も無い部屋、
ここはあらゆる刺激を取り除いた治療のための部屋であること、私が今、ここで休んでいること自体が治療であること、などです。

私は「そうですか」を連発。
あと分かってもいないのに、取りあえず「分かりました」とも。ほとんど一方的に話を聞いて、相づちを打っていたと思います。

午後になって初めて医師登場

昼食は、やはりご飯の量が半端ないので残しました。それでも普段の食事からすれば、かなり食べた方です。それぐらいの元気はあったわけですね、今思えば。

昼食後、ベッドの上でボォ~ッとしていると、昨日私を診察してくれた先生が来ました。この方が主治医とのこと。
先生は
こんな汚いところに閉じ込めたみたいになって、本当に恐縮です。でも、これが治療なんです。」と、

午前の看護師さん同様、今はあらゆる刺激を取り除いている段階であること、何もせずにここで過ごすことが治療であるという話をされました。

そして、このあと心電図の検査がある旨を告げ、退室されました。
アッという間に行ってしまった感じです。

私は、検査で部屋から出られると思い、内心喜びました。でも、結局心電図の器械が病室に運ばれての検査になったのですが、この時かなりガッカリしたのを覚えています。

これってきっと、ここに収監、もとい入院してから1日も経っていないのに、何もせずにいること先が見えないこと等がしんどくなっていたのだと思います。

病室での過ごし方 独房の場合

この独房ならぬ病室は、外側から鍵がかかっていますので、室外に出ることはもちろん出来ません。部屋の扉のほか、このエリアの扉にも鍵がありました。二重ですね。

何もせずに過ごすことが治療、と言われても出来ることを探してしまう私。というわけでまず、部屋の中を改めて観察しました。

天井、凄く高い。届かない。ということは首はつれない。なるほど・・・

蛍光灯が1つ。入り口のところに常夜灯が1つ。カメラは1台。部屋は、身長166㎝の私の歩幅で、5歩×3歩半。8畳間くらい?もっとあるかも。

ベッドはマットレスに敷きパッド、枕に掛ふとんが1つずつ。シーツや枕カバーは、この時まだ無し。きっとそれも【死】のリスク回避なのでしょうね。

何も無い病室です。観察もアッという間に終わりました。

看護師とのコミュニケーション

この頃看護師は基本、数時間に1回様子を見に来ます。ナースコールを使えば来てくれると思うのですが、私には出来ませんでいた。
結局独房の頃は、1度もナースコールを使いませんでした。

でも、例えばこんな時・・・
トイレのあと手が洗えないので、頂いたウエットタオルを大切に使います。何度も。さすがに何度も何度も使うと、それ自体が香ばしくなってきます。

でもでも、ナースコールは、つまり大きな声で呼ぶのは・・・・無理

なので、看護師が部屋に来る数少ないチャンスに賭けることに。その時にあわせて、新しいお水もお願いしたりしました。

この日の夕方、部屋に来た看護師に意を決して着替えたいと言ってみます。さすがに中年親父でも、チョット気持ち悪くなってきました。

すると、やはりウエットタオルを一掴みグチャッと置かれます。

・・・一応言ってはみるもんだ、と思いながら、全身をくまなく拭きました。手を洗えないので、最後に手に臭いや嫌な感じが残らないように、拭く順番を考えながら進めます。

私、そんなに几帳面ではないのですが、どうでもいいところで立ち止まり、時間を使う習性があるようです。

こんな感じですが、看護師に声をかけてお願い事をするのは、私にはとても勇気のいることでした。

上記のようなチョットしたお願いでも、「なんて言おうか」みたいに流れをシミュレーションしてから、頭の中でリハーサルをして本番に臨んでいました。スッと出来ないんです私。いいトシをして。

そんな自分に気がつくことが出来ました

こんな感じで入院2日目は、
看護師さんが来たときに話すこと、お願いすること、ウエットタオルの運用方法、お水を飲むペース などを考えて過ごし、時間がとても長く感じられる1日でした。

この夜は消灯前からウトウトして、翌朝まで爆睡しました。隣室は大騒ぎにもかかわらず、です。不思議なものです。昨夜はあれだけ興奮していたのに。



振り返ると

少し後になって気づいたのですが、私はこの日、入院2日目の朝から既に、死ぬ気がかなり失せていました。前夜に看護師から声がけと眠剤をもらい就寝し、翌朝起きたら失せていた、という感じだと思います。

私にとってはあの時の看護師さんにかけていただいた声が、大きな転機になっていました。(前回の、夜中に看護師が来てくれたときのことです。)

それと、私の入った病棟には男性の看護師が多かったような印象です。割合で言えば、6~7割くらいかなと思います。入院経験のある方なら如何でしょうか。精神科病棟って、男性看護師さん必要ですよねぇ。なにかと・・・

入院中ずっとだったのですが、私は自分から医師や看護師に話しかけるのが下手でした。特にこの頃は、分からないことだらけだったはずなのに、自分から聞くことがさっぱり出来ていません。

私は自分が無い、あるいは軸や基礎を自分の中に持っていないので、「質問」がとても下手です。

言われたことは文字どおり受け止め、そこで終了。それに対して、その場で疑問も出ず質問も出来ない、ということにかなり後になってから気がつきました。

それなのに、
あれはどうなんだろうこれを聞いておけばよかった、と、少し時間が経ってから疑問・質問がわいてくるのです。しかも、それをすぐにコミュニケーションで解消出来ないので、モヤモヤした時間が続くことになります。そんな人間だったのです。

なかなか口には出しませんが、
トホホ・・・
振り返るとそんな心境です。

今回はここまでとさせて頂きます。
文章から親父臭を感じるような、香ばしくお見苦しい話もあり、失礼しました。

次回は入院3日目に入ります。

今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました。

サポートに心から感謝です。主夫、これからも書き続けます。