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剪画作品紹介

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剪画作品をご紹介します。
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#SENGA

瀬戸の海

瀬戸の海

宮本 真理 作 100×148mm
“Seto no Umi - Seto Inland Sea” Mari Miyamoto

 今回の作品展の中で、最初に提出された、一番シンプルな作品です。ゆらゆらとたゆたう波の上に浮かぶヨット。その帆は遠く近く数隻漂っていて、とても幻想的に見えます。
 宮本さんは、紫色の和紙を切り出して、その下に薄い水色のむら染の和紙を置きました。その陰影が、波の揺らぎ

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月のうさぎ

月のうさぎ

戸張 禮子 作 297×210mm
“Rabbits on the Moon” by Reiko Tobari

 日本では、古来から月にはウサギがいて、お餅をついていると言われています。この作品では、その月からはるか向こうの地球を眺めているウサギさんを描いています。
 ここにいるウサギさんたちの様子が何となくユーモラス。鳥獣戯画を思わせる絵柄で、シンプルながら動きを感じさせてくれるのです。それ

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モザイク

モザイク

外山 豊子 作 297×210mm
“Mozaic” by Toyoko Toyama

記憶の底にあるような幻想的な色彩。薄い緑色で描かれた風景の中心に真っ白な道が走っています。そして手前には鮮やかに彩られたたわわなブドウ。この景色は、外山さんの故郷の風景だそうです。そしてブドウは、ご家族で栽培していたとのこと。
 実在の風景でありながら、描き手のフィルターを通して再構築してあり、それが見るも

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どっちへ行く?

どっちへ行く?

矢口 安久 作 242×272mm
“Which Way Shall We Take?” by Yasuhisa Yaguchi

 2つの方向に向かう分かれ道。人が人生の岐路に立った時、その行末を見据えながら、どっちに行こうか考える…そんなシーンを思わせる作品です。
 普通の道ではなく、線路を描いたのが矢口さんらしい表現だと思いました。山や海など自然も、町並みや人々などもそこにはなく、分かれ道だ

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銀閣寺と京都の石畳

銀閣寺と京都の石畳

宮本 真理 作 242×292mm
“Cobblestone Roads in Kyoto and Ginkakuji-Temple” by Mari Miyamoto

 「私の道」というテーマを聞いて、宮本さんが思い浮かべたのは、以前住んでいた京都の石畳だそうです。寺院の前に続く道、先斗町などの街の道…古都にはその歴史の折々に作られてきた石畳の道があります。石畳は、それぞれに石の大きさも、そ

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Mångata

Mångata

神田 いずみ 作 274×410mm Moonlight Passage Izumi Kanda

 Mångata(モーンガータ)はスウェーデン語で、水面に映る月の光が、道のようにつながっている様子のことだそうです。はるか遠くに浮かぶ船を海の中から眺める人魚の姿。彼女はこの月の光の道に導かれて船へ、そして人間の世界に向かうのでしょうか。この絵を見ながら人魚のストーリーを思わずにはいられません。

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散歩

散歩

石川 孝 作 290×240mm
“Taking a Stroll” by Takashi Ishikawa

 水辺を歩く二人の影。親子でしょうか?陽が沈もうとしている黄昏時に、くつろいだ雰囲気で散歩をしています。暗くなりゆく空のグラデーションとさざめく波が美しく、思わず見入ってしまう光景です。
 黒い台紙の上に波立つ部分をくり抜いた水色の紙を張ってあります。空のグラデーションは和紙のグラ

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行く先には… I

行く先には… I

日野 晴美 作 420×297mm
“There at the End of the Road… I” by Harumi Hino

 今回のこの「行く先には…」は、色違いで2つのバージョンがあります。1つは紺色の和紙を切り抜き、虹色の背景の上に置いたものです。力強く、明るい未来を示しているような作品。もう1つは焦げ茶色に赤がムラに入った和紙を切り抜き、金がちらしてある淡い黄緑色の和紙の上に貼り

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旅路

旅路

菅谷 順啓 作 242×272mm
“A Journey” by Jyunkei Sugaya

 昨年急逝された菅谷さんが残した作品の中にこの作品があり、あまりにも今回のテーマにぴったりなので、展示させていただきました。遠くに霞む山を望み、笠をかぶって旅路を行く人影。そのシルエットは作者に似ています。後を見送るのはりんどうの花。
 はるかな旅路を彼方へと向かった作者にふさわしい作品だと思います

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Orange Jazz

Orange Jazz

ヒリストワ リディヤ 作 190×265mm
“Orange Jazz” by Lidiya Hristova

花や果物のように実際にあるものを描いた作品が並ぶ中で、唯一目では見えない「橙」を描いたのがこの作品です。黄緑色の紙を切り出して黄色い紙と合わせ、音のうねりを表現。そして手前で楽しげに動く人たちはジャズを演奏しているのでしょう。
 演じ手の姿を写実的な線で表現するのではなく、作者の感じ

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炎の中へ

炎の中へ

ミハイロワ ヨシカ 作 185×270mm
“Into the fire” by Yoshka Mihaylova

同じ火でも線香花火と対象的に、燃え盛っている火を描いた作品です。最近世界の各地で気候変動のため自然発火による火事が起きています。そんな火事を思わせるような激しい炎の手前に佇むカメレオン。そのオレンジ色を受けて体の色を変化させたのでしょうか?樹の黒いシルエットと、オレンジ色、グリー

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