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神様の手帳

小川洋子著の「博士の愛した数式」から

「自分が生まれるずっと以前から、誰にも気づかれず
そこに存在している定理を掘り起こすんだ。
神の手帳にだけ記されている真理を、一行ずつ書き写していく
ようなものだ。その手帳がどこにあって、いつ開かれているのか
誰にもわからない」

「数学の真理は、道なき道の果に、誰にも知られずそっと潜んでいる」

「神様の手帳だけに書いてある」

神様の手帳・・・美しすぎる響き・・・

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

20年ぶり?くらいに手に取った「博士の愛した数式」
言葉は美しい世界を抱いたまま ひっそり本棚で眠っていた。

読みながら ふと過ぎった思い。

楽譜もまた「神様の手帳」なのかもしれない。
数えきれない神秘がそこにある。
作曲家は「神様の手帳」を読み取った人たち・・

小川さんの紡ぎ出す言葉は、数学の世界を
愛おしく思い、その世界を学問としてではなく、
神秘と美しさに包まれた芸術として静かに伝えている。
見えない美しい世界が、この空間を漂っているかと思うと、
日常が神秘で満たさた世界に見えてくる。

・・・・

「博士が最も愛したのは素数だった。・・・
相手を慈しみ、無償で尽くし・・・
時にひざまつき、常にその場を離れようとはしなかった」

博士の素数と戯れる様子は、音楽する人と似ているのかもしれない。
数字を決して雑には扱わず、どんな数字も丁寧に扱うところ、
本書に書かれている数学の言葉を、そのまま音楽に変えてしまっても通じるくらい、数学と音楽の美の世界は共通点が多い。

・・・・
「28」の文字に目が止まり、
ほんの数分、数字と戯れる感覚を味わった。
28は、私の生まれた日・・28は完全数。
28の次は496、その次は8128,
次は 33550336・・数字が大きくなるほど、
見つけるのが難しいという完全数。
それを思うと、自分の生まれた日が特別な日で、
まるで神秘の世界から生まれて来たようで、心が踊った。

占い方式で、
1月28日 1+2+8=11・・素数 1+1=2・・素数
隠れるようにひっそりと存在していた誕生日の中の素数。
まるで自分が初めて発見したかのように、喜びでいっぱいになった。

「私も素数になるよ」「誕生日は素数が多いよ」などと
どこからともなく声が聞こえてきそうだが、
「自分で発見することに喜びがある」「自分でたどり着くことに意味がある」
と、博士の言葉のように、私の心が呟いている。

学問も芸術も、
心からその世界が美しいと感じたか、心から感動したのか・・
そういう心が踊るような思いが、探究心を生むのではないのだろうか。
いつまでも柔軟な心で、いつまでも素直に感動できる純粋さを持っていたい。

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