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遺伝・環境・努力

以下は↑に続く総論のアップデートです。


  子孫を含めての遺伝的基準値(租生命力)(ポケモンでいう個体値) (進化学でいう包括適応度)をバフしようと思えば、2通りあって、①男性性を上乗せしていくことと、②平均的=適応的になることである。

 ①は失敗とトレードオフだからストレス耐性(往々にしてストレス経験の方が交絡因子として大きいことが予想される:ストレス程度×曝露回数=ストレス経験 という期待値的概念)に依存する。しかし生まれ持った遺伝的境遇によって天井が明確に規定される点が②とは異なる。強力なドミナンスを発揮できる個体の振る舞いの模倣を弱者が行っても、嘲笑・嫌悪されるだけだ。それには声質・声量・間合い等の非言語言語が背景にある。その嗅ぎ分けを我々は無意識に厳格に行う。

 ②は誰にでも開かれているが、「周りと同じ振る舞い、言動をする」ことが求められるので、言語野とミラーニューロン(それらは重複する(ブローカ野、下前頭回)ことがASD等の研究で明らか)の発達に依存する。フランス革命以降、宗教や魔術や貴族権力ではなく人間の理性に価値を置く啓蒙思想が発展し、その下で生まれた産業革命は資本主義の合理化を加速させた。それは禁欲的な人間像を理想化し(カルヴァン派に代表されるプロテスタンティズム)、代替可能であることが社会適応度のシグナルとして機能する社会(労働と官僚制)を生み出した。だから「周りと同じ振る舞い、言動をする」ことは無意識に評価される。少なくともここ100、200年のサピエンスの間(人間)では、その傾向が急速に加速した。

 リスクを取る、高難度へのチャレンジ、失敗できない状況での成功、これらは報酬予測誤差による快楽を本人が享受するに加え、男性性の現れ・セダクションとして対外的にも機能する。一方でそれらには「失敗」「非難」「罵倒」「嘲笑」「無視」というストレスのかかるリスクがつきまとい、当然 前段階としての努力にもストレスがかかる。大きな失敗は顔面が蒼白し、迷走神経優位になり全身の力が抜け、一定時間の喪失感を味わう。副腎皮質からはコルチゾールが分泌されACTHは抑制される。脳内ではセロトニン5-HT受容体がアップレギュレーションし、反応性が低下していく。それらが反復されるとうつや双極、副腎疲労や自律神経失調の原因となる。

 したがって人間行動はそれらの中庸に収束する。心身相関として身体的に律速段階が規定されるため収束せざるを得ない。好感の律速段階はその人の「能力」だがそれは環境によって相対的に規定される。大谷翔平も卓球台の前ではガタイのいい男に過ぎないし、学会で厳しい質疑応答をすることもない。

 さて①と②にはトレードオフ関係が見出せる。ASDが社会適応しようとすると競争への参加や男性性の発揮が必要であるから抑鬱リスクは上昇する。一方で軽度うつ状態のASDは見かけ上の適応度が上がる。言語野の発達した人間は言葉(建前)を紡ぐことによって他者からの嫌悪を回避するが、ASDはそれができないので利己心を隠すことができず、他者からの非難頻度や承認難度の上昇によって抑うつリスクが上昇する。が、軽度抑うつ状態で主体性を小さくし、利己心の表出が小さくなればそのリスクが小さくなるので、うつ病による能力の低下を回避しつつ、安定することができる。そうして他者からの非難リスクを回避し、ドパミン的快楽でうつをマスクすることは一時的には有効であり一定数そうした民が観測されるが(ゲーマー・パチンコ等ギャンブル・セックス)、報酬予測誤差は繰り返す度に小さくなるため持続可能性は限られる。

 我々は遺伝子の箱舟に過ぎない。だからこそその価値をマキシマイズ(往々にして見せかけに過ぎない)し包括適応度を上げるべく足掻くようプログラムされている。その足掻き方が上述の2通りあって、そのどちらにも律速段階があり、それらが相互作用してトレードオフ関係にある。これをふまえて2通りのそれぞれを最適化していくことが究極のメタ認知ではないだろうか。

<了>

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