女性兵に対する各国の考え方

 前回の記事では、ロシアからの脅威を念頭に徴兵制を復活させるにあたり、女性にも兵役を課した国があるということについて触れました。

女性の社会進出が叫ばれるにつれて、女性も軍で働くように求める声は、各国で聞かれるようになっています。下の記事によると、スウェーデンやノルウェー、イスラエル、北朝鮮では既に女性が徴兵されており、志願制のオランダでも、女性が徴兵リストに登録されるようになっているとのこと。また、韓国でも女性を徴兵するかどうか議論になっています。

 同じ記事には、徴兵制があるロシアで女性が徴兵されていないことが書かれていました。実は、ロシアではソ連時代、特に第二次世界大戦時には、連合国の中でも圧倒的に多くの女性が戦っていました。ソ連では、共産主義のイデオロギーに基づいて、女性を社会進出させる政策が行われていたからです。当時「女性は家を守るもの」と考えられ、女性が夫や息子を戦場へ見送っていた日本とは対照的です。数多くのドイツ兵を倒したリュドミラ・パブリチェンコ(ウクライナ出身)の活躍については、「ロシアン・スナイパー」という映画にもなっています。しかし、当然のことながら悲惨な死に方をした人や、子供を産みにくくなった人もいたそうです。生理中の対応など、女性兵ならではの苦労もありました。こうしたエピソードは、ベラルーシのノーベル賞作家アレクシエーヴィチの「戦争は女の顔をしていない」にも詳しいです。ロシアで女性に対する徴兵制の話が欧米の他の国ほど進まないのは、ソ連以降女性を早くから登用してきた経験を通じて、女性が戦場で戦うことについてデメリットも知られているからなのかもしれません。

 男女平等を掲げて、ヨーロッパの中でも早くに女性兵を導入したソ連から反面教師にできることもあるでしょう。日本には徴兵制がありませんし、憲法上軍隊は存在しませんが、男女平等を掲げる以上は、女性が自衛官など、これまで男性の仕事とされてきた職業を担うことについては議論が深まってもいいと思います。女性の権利に興味がある女性ですら「大切な人を戦場に行かせない」という声が聞こえてくるようでは、是非は置いておいて、これ以上の女性の社会進出は難しいと思います。

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