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We live past hope 希望をこえて生きる

こんにちは!わたしたちは、シャーロット・ジョーンズによるイギリス戯曲〈Airswimming〉の日本初演にむけて活動をはじめました。

Photo : Ken Hirama

◯戯曲〈Airswimming〉◯
1920年代イギリスで、同性愛者や障害者であるという理由、また非嫡子を産んだことなどで"Criminally Insane"(犯罪者級精神異常者)という不当なレッテルを貼られ、精神病院にむりやり監禁された2人の女性の実話をもとに書かれた、"Comedy about despair"(絶望についてのコメディ)

実話とありますが、イギリスやアイルランドで実際に女性達に起こった話です。古くは17世紀ごろからつい最近まで(最後の施設が閉鎖されたのはアイルランドで1996年)、カトリック教会の絶対的な権力の下、何万人もの何の罪もない女性がまったく不当な理由で、刑務所と同じような人権を剥奪された監禁生活を何年も送らされました。理由は主に未婚の母になったこと(カトリックの下では殺人と同等の大罪だとされていた)、他には知的障害があること、なかにはただ美しく男性を誘惑するからというだけの理由などもあったそうです。収容施設を運営していたのはカトリック教会の修道女たちで、彼女達は収容してきた女性にたいして身体的/精神的虐待を繰り返していました。

同じような背景を舞台とした物語に、2002年ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得した【マグダレンの祈り】、2014年アカデミー賞やゴールデングローブ賞でノミネートされ話題になった【あなたを抱きしめる日まで】、今年2月に日本でも公開された【ローズの秘密の頁】などがあり、今でもなお途切れることなく語り継がれています。

現在のところ、公演は来年の1月を予定しております。詳細が決まりましたらお知らせさせていただきますので、お見知り置きのほどどうぞよろしくお願いいたします!

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この作品は、家族や社会に完全に見捨てられ、50年以上も監禁されつづけたドーラとペルセポネーが主人公です。ふたりは想像力ー"ユーモア"を使い、自分自身をつねに生まれ変わらせ(変換させ)、互いに影響しあい、ファンタジーを生み出すことで生き延びようとします。どんな状況においても、自分の生きる姿勢は自分が選択する。魂のありかたの自由は何者にも、何事にも決して奪えない。そんな姿勢を決して悲観的にではなく、ユーモアという底力に変換させて観る人のもとへ届けるあたらしいサバイバル物語です。

「魂が魂自身の居場所であり、そして魂そのものの中で、地獄を天国にすることも、天国を地獄にすることもできる。どこにいようと、何ほどのことぞ。われは今も同じで・・・」

(ジョン・ミルトン/イギリス/詩人/1600年代の人)

"We live past hope." 
わたしたちは希望を超えて、生きる

(Angels in America 第二部)より

登場人物であるドーラとペルセポネーの二人が信じているもの。それをひとことでいうと「自分自身でいるという感覚」でしょうか。彼らは、ただ自分自身のままでいたことが理由で監禁されたとも言えます。人間らしさの一切を根こそぎ奪われた環境で、信じるものがあるということが、ふたりを苦しめ、またふたりを救います。二人は自分自身でいることを保つために、じぶんを常に「変換させる」ことで生き延びようとします。その状態からは希望があるというよりも、希望を超えて生きている、という鮮烈な印象を受けます。この希望を超えて生きるという表現は、舞台「Angels in America 第二部」の主人公の台詞です。ナショナルシアターライブで見たときの公演の演出家が劇についてのインタビューで言っていた言葉があります。

"It's renewing ourselves and surviving."
これは自分自身を生まれ変わらせ、生きてのびていく物語だ

これは〈Airswimming〉という物語とまったくおなじだと思いました。

物語は、ペルセポネーが収容されてくるところから始まります。そして2年前から収容されているドーラと出会います。基本的には一人ぼっちで過ごさなければならないのですが、一日一時間だけ、日課である磨き作業の時間を共にします。それによって二人は監禁生活のなかで唯一関わりを持てる「互いの存在」に信じるものを見いだしていきます。この互いの存在こそが、関わり合いの中で自分自身を生まれ変わらせながら生き延びることを選択させたのだと思います。

わたしたちはふたりとも俳優ですが、今回は生まれて初めて自分たちで企画・プロデュース・出演をする公演をしようと決めました。おまけに今回は日本語未翻訳なので、翻訳という一大ステップまでついてきちゃいます。この公演をとおして、未来を見据えながら目の前の一歩一歩を大切に、確実に前にすすんでいく方法を学んでいきたいです。それが、これからの創造的人生をいきていくための大きな糧になるだろうと思っています。ぜひ応援よろしくおねがいします!

お読みいただきありがとうございました。 日記やエッセイの内容をまとめて書籍化する予定です。 サポートいただいた金額はそのための費用にさせていただきます。