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【図解】ゼロからはじめる世界史のまとめ⑤ 前1200年~前800年

世界史を26ピースに「輪切り」して、一緒に人類の歴史のストーリー展開を眺めています。
今回は5つ目のピースです。(イラスト from 「いらすとや」)

目次
0. 前1200年~前800年の世界
1. 前1200年~前800年のアメリカ 
2. 前1200年~前800年のオセアニア
3. 前1200年~前800年のアジア
4. 前1200年~前800年のアフリカ
5. 前1200年~前800年のヨーロッパ

(完全版は世界史のまとめ」ウェブサイトへ)

前回はユーラシア大陸のあちらこちらで遊牧民の動いた影響が出ていますね。

―そうだね。違う個性がぶつかり合って、新しいものが生まれるのもこの時代の特色だ。
 アメリカ大陸でも農業エリアが広がって、世界各地でいろんなライフスタイルの人たちの住み分けができつつあるね。


例えば…?
―ユーラシア大陸の北の方の寒冷エリアの人たちは,狩猟・採集をしながらの移動生活をしている。



人間は「交換」(トレード)によって物を移動させることができる。力ずくの場合は「略奪」というが、平和的な「交易」の仕組みが整うと、人間が動かなくても物だけが動くことができるようになった。


 主食はオットセイやアザラシ。

 草原地帯では,おなじみ騎馬遊牧民。

 内陸の乾燥地帯では,オアシス(湧き水を利用した町)で定住農耕・牧畜を営む人々。

 大河流域では,移動せずに暮らす人々。

 海に近いエリアでは、釣りや貝採り、運送業や商売をする人々。


みんなが同じような歩みを進めていったわけではないんですね。
―そういうこと。
 “違い”があるからこそコミュニケーションが生まれ、コミュニケーションが生まれるからこそ、人類の新しい可能性が互いに引き出されていったわけだ。
 もし全部が同じ条件だったら、そもそも交流や交換なんて起きないよね。
 自分に足りないものを相手に求めるからこそ、交換(トレード)がうまれるんだ。


交換が成立するためには、「自分の物を相手に渡し、相手の物を自分が受け取る」という行為に、「①さっきまで自分のものだった物は、もはや自分のものではなく相手のものである」「②代わりに、相手の物は自分のものになる」という「設定」が共有される必要がある。これは、サルにはできない
交換されるものは目に見える物にとどまらない。
 「仕事」「名誉」「家族」「権利」「愛」といった目に見えないコンセプトも交換可能だ。これらは、「言葉」がなければ表現することが難しい。だから、サルにはできない



軍事的な強さにも差はありますよね? 遊牧民には馬の力がありますし…
―その通り!
 軍事的には草原地帯の遊牧民が世界最強だ。
 でも経済的には定住民のほうが豊かだから、遊牧民は定住民と強力する必要がある。
 どんなコミュニケーションが生まれているか、あとで各地の様子をみてみよう。

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◆前1200年~前800年のアメリカ

「トウモロコシ」のサイズが大きくなってきたようですね。
―品種改良の成果だ。これでより多くの人を養うことができるようになるね(*1)。
 とくに中央アメリカでは大きな町がにぎわいをみせている。


南アメリカ大陸では高い山で文明が見えますね。
―アンデス山脈の文明だね。
 この地域は、海から山まで一気に駆け上がるような地形になっている。
 海の近くでは魚介類がとれるし、山の上ではジャガイモがとれる。
 高度によって手に入る植物・動物が変わるので、水場を管理して集中的に家畜を飼育・作物を生産しようとしたり、その取引きをコントロールする人が現れたわけだ。



(*1) 加藤まさゆき「1万年前のトウモロコシでポップコーンを作る」デイリーポータルZ

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◆前1200年~前800年のオセアニア

―この時代には、オセアニアの南西部(北を上にして左下)にまで、人間の進出がすすんでいるよ。
 オーストラリアでは引き続き狩猟と採集生活が引き続き行われている。

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◆前1200年~前800年の中央ユーラシア

―この時期のユーラシア大陸の草原地帯には鉄器が広まっていく。
 鉄でできた武器を持ち、馬にまたがった遊牧民は「騎馬遊牧民」(武装した馬に乗った遊牧民)にバージョンアップ。今でいったら戦闘機に核ミサイルを搭載しているようなもの。とてもかなわない。


 ユーラシア大陸の西部(北を上にして左側)の“ヨーロッパのお隣”ではスキタイ人(図中の①)というグループが騎馬遊牧民のルーツともいえる文化を編み出していた。

草原地帯は一見のどかに見えるが、水がとぼしく夜や冬はめちゃ寒い。厳しい気候である。


 草原地帯は東西に途切れ途切れに続いているから、スキタイ人のアイディアは急速にユーラシア大陸の反対側(東側)へと広まっていく。

 中国の北の方(図中の②:モンゴル高原)の遊牧民も、馬にまたがって戦うための新技術(馬の上に座るためのサドルや足掛けなど)をみてビビったのだろう。
 次の時代にはスキタイの技術を導入して、広い範囲を支配する遊牧民の王が現れることになる(注:「匈奴」(きょうど))。

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◆前1200年~前800年のアジア

この時期のアジアにあった「大きな国」の共通点は、①どれも中緯度(赤道から30度くらい北)にあって、②大きな川の流れる乾燥地帯穀物の大量生産をしていて、③遊牧民の影響を受けていたっていうこと。

◇日本
―日本は縄文時代の終わり頃にあたる。
 縄文土器の形も地域によってはお茶を注ぐ「急須」のようなタイプ(注口土器)が現れるようになる。神社でお神酒(おみき)が儀式に使われているように、その後の日本の文化とも関わりがあるかもしれないね。

 まだイネの栽培は始まっていないよ。


◇中国
 中国では黄河流域で殷という王国に反乱を起こした人々が、「周」という国を建てるよ。
 「殷」の王様が、神様の気持ちを聞くことで人々を支配していたよね。
 「周」も、家来たちに土地や位を与えるときには、必ず盛大な儀式を行った。


 「ご先祖様」が神様としてまつられ、ご先祖様に報告する形で、王様と家来との間に「特別な関係」が約束されたんだ。
 この儀式によって王様から家来には、土地や住民、財産やステータスが与えられた。その宝物にはピカピカに光る青銅器も含まれていて、そこには漢字(今とは字体がちょっと違う)が彫られていた。漢字入りの青銅器は周の王様だけがつくることのできる、めちゃめちゃステータスの高い品物だ。BMWとか、ベンツみたいな。
 そりゃ当然家来は「ありがたい」と感じるわけで、その「ありがたみ」によって国を支配しようとしたのが周のうまいアイディアだった。

 「中国」という言葉は、はじめは周の王様が直接支配していた土地のことを指していたんだけど、しだいに周の王様の文化を受け入れたに地域全体を「中国」と呼ぶようになっていった。

 ちなみに周の王様につかえた家来たちも、それぞれ自分たちの祖先を神様として大切にしていた。今の日本の「家族」よりもはるかにたくさんの人を含む「宗族」(そうぞく)という一族の結束が、重んじられていたんだ。


周の王様の「ありがたみ感じさせ作戦」は長続きしたんですか?
―ううん。やはり時間がたてば「ありがたみ」は薄れるよね。中国は広いし。
 王様をなめる家来が現れたり、西の方から遊牧民のエリアが広がってきたりと、しだいに周の支配は揺らいでいくことになる。

◇朝鮮
 この時代の朝鮮では青銅器の使用が始まっている。


◇前1200年~前800年のアジア  東南アジア

―東南アジアでは中国に近い方は、その影響を受けるようになっている。
 まだ強力な支配者は現れていない。


◇前1200年~前800年のアジア  南アジア

南アジアには前の時代に、ユーラシア大陸の草原地帯から遊牧民が移住してきていましたね。
―そうだね。彼らは雨がたくさん降る東の方(北を上にして右方向)へと移動し、農業を基盤とする生活を送るようになっていく。
 彼らの社会は4つの身分に分かれていて、大変な農作業にあたるのはそのうちの一番下の身分だ(注:ヴァルナ制)。

 この時代には鉄器が導入され、ウシに鉄製の犂(すき。フォークのような形をしている農具)をガリガリ引かせて、固い土を効率良くやわらかくすることが可能になっていった(いまから250年前に蒸気機関が発明されるまでは、動物の力が地球でいちばん大きな動力のひとつだったんだ)。

 テクノロジーが転換すれば、社会の中身も変わる。

 新たなテクノロジーの導入によって農業の効率が高まれば人口が増え、余るほどの食料もつくれるようになる。すると土地をめぐる争いも起き、戦争を勝ち抜いた軍人が王になった。後の時代に語り継がれる大戦争も起きたらしい(『マハーバーラタ』というお話になる)。
 王は自分が「えらい」ということを、神様への儀式をおこなうことができる神官に認めてもらったから、王の身分は上から2番目だ。1番上の位はあくまで神官(注:バラモン)だ。

「バラモン」という身分は、今でもある。(インド、2017年撮影)


◇前1200年~前800年のアジア  西アジア

ここまで、西アジアはユーラシア大陸“最先端”の文化を生み出してきましたね。
―たしかに。
 でも、いったんこの時期に、すべてが「リセット」されてしまうほどの大打撃を受けるんだ。

すべてが“リセット”ですか…なぜ?
 どうも、さまざまなところから難民が押し寄せて来たようなんだ。
 しかも、最強の武器である鉄器を持って。
 特に鉄器を持ち船に乗って沿岸に上陸した集団がいた。正体不明なので「海の民」(うみのたみ)と呼ばれるけど、たぶん今のイタリア沿岸部のあたりにいた海を生活の拠点にする人たちではないかといわれている。

 ヒッタイト王国が滅んだのも、エジプトの新王国が衰えたのにも、彼ら「海の民」の影響があるんじゃないかといわれている。

なんだか怖そうな人たちですね。
―だよね。「海の民」に襲われた側の資料はのこっているけど、「海の民」の側の資料がのこっていないことが原因だ。
 でもおそらくこの人たちは、地中海の貿易ルートの「開拓者」だったのだろう。

 めきめきと経済力をつけて大国にダメージを与えたわけだ。

 ヒッタイトとエジプトの国家が同時に滅んだということは、今でいえばロシアとアメリカが同時に滅んでしまったようなもの
 とくにヒッタイトとエジプトが取り合っていた現在の「シリア」のあたりは、東の方から地中海に向かうビジネスルートに当たるということもあって、地中海のビジネスと、東の方面の陸上ルートのビジネスを独り占めにしようとする民族が、ここぞとばかりに進出しようとした。





結果的にどうなったんですか?
―地中海のビジネスはフェニキア人という民族が、各地に港町をつくりまくって活躍する。活躍しまくったもんだから、彼らがコミュニケーションのために既存の文字を改良して編み出した「アルファベット」は、のちのローマ字の「ABC…」の元になる

 一方、陸の貿易の物流をにぎっていたのはアラム人という民族だ。彼らは武装してラクダにまたがり乾燥地帯を股にかけた。当時の西アジアではアラム語が国際ビジネス共通語(今の英語のような言葉)、つまりアラム語がわからなければビジネスができなかったほどだ

 当時は警察なんていないから財産は自衛しなければならない。こうしたビジネス民族は自分たちで国を建てることができるほど強力だったんだ。
 ただ、国を越えてビジネスするには、いつの時代にもその土地の権力者のご機嫌をうかがうことが重要だ。海のフェニキア人も陸のアラム人も、のちのち様々な権力者によって保護を受けていた。

 一方、同じ頃、今のユダヤ人のルーツとなる民族が、シリア(地図)の南のパレスチナ(位置)というところで国をつくっている。たいていのことは『聖書』という本に記録されているけど、歴史的な事実かどうかはわからないことも多い。



イランの方はどんな感じですか?
―イラン(位置)のほうでは、南の沿岸部にエラムという大きな国があって、西のメソポタミアに何度もちょっかいを出している。


 一方、北からやって来た遊牧民(アーリヤ人)の一派も、しだいにイラン各地に広がっているね。
 この時代にはなんらかの事情があって、神様ストーリーが新しくつくり直されている。ゾロアスターという神官によるもので、この世は2つの神様(良い神様と悪い神様)が戦うことによって成り立っているという説明は斬新で、多くの人をひきつけている。

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◆前1200年~前800年のアフリカ

アフリカでは新王国が衰えていますね。
―さっき見た「海の民」のせいだね。
 王様のパワーよりも、神様をまつる神官グループのパワーのほうが大きくなったのも理由のひとつだ。

それからというもの、エジプトを「統一」することのできる王国は現れず、バラバラ」な時代が続くよ。各地から豊かなエジプトを求めていろいろな民族がやって来て、支配するようになるからだ。それにもともとエジプトでは、ナイル川の上流と下流との間に対立があるからね。

ほかの地域はどうですか?
―アフリカの真ん中付近で大きな動きがあるよ。
 バンツー語という種類の言葉を話すグループが、アフリカの東や南の方向に向けて大移動を開始するんだ
 彼らは鉄器を持ちウシを連れ、ヤムイモやモロコシを栽培しながらサバンナづたいに広がっていくよ。
 

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◆前1200年~前800年のヨーロッパ

―ヨーロッパにはケルト人という民族が、青銅器を基盤として文化を発展させています。どうやら彼らは、ユーラシア大陸の中央部の草原地帯にルーツをもっているようです。



 現在のイタリアも、人口が増えてにぎやかになっています。

大きな国はできないんですか?
―ギリシャの沿岸では、地中海の貿易で栄えた街が、国に発展しているよ。
 広い範囲を支配したわけではないから、「都市国家」(街みたいな国)というんだ。
 ギザギザの海岸が多く、山が海岸の近くにまでせまっているから平野が少ない。大きな川もない。
 だから、発展して人口が増えると外に進出するしかない。


じゃあ、ギリシャの人たちは地中海の貿易を独り占めですね!
―そうもいかないんだ。
 地中海ではシリアの港町の勢力が盛んで、莫大な売上を独り占めにする王が国をつくっている。ここにギリシャとシリアとのビジネス合戦が始まるんだ(注:シリアの人々はフェニキア人といいます)。


「シリア」ってどこですか?

―シリアは地中海の東の端っこ(北を上にして右端)だよ。
 土地が狭いので、地中海を西へ西へと進み、ちょうど真ん中付近にカルタゴというビジネス都市を建設している。始めはシリアの本部に対する地中海中部支部のようなものだったけど、次第に“のれん分け”していくことになる。

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