【ガイダンス】世界史のまとめかた① 時間の区切りかた
わたしたちは「世界史」をどのようにまとめることができるのでしょうか。「時間」,「環境」,「地域」の3つの観点から考えていきましょう。
〈1〉時間の区切り方
◆世界史はいつからはじまるのか
インド古来の伝説によると,神様がミルクの海をぐるぐるとかき混ぜると,そこから太陽や月,牛や人間など,あらゆるものが生まれたのだといいます。この「乳海攪拌」の光景は,世界遺産アンコール・ワットの第一回廊のレリーフの劇的に再現されています。
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一方,現代の科学者たちは,この宇宙の世界の始まりには「乳海攪拌」ではなく,「ビッグバン」が起こったのだと考えています。それは現在から約137億年前のことであるとされ,宇宙開闢(かいびゃく)に起点を置いて,壮大な記録を紡ぐ試みも近年では試みられています(注:ビッグヒストリープロジェクト)。
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◆はじまりを「人類の誕生」に置く
しかし,ひとまずわれわれは,「世界史」を人類の誕生からまとめていこうと思います。それは,今から約700万年前にさかのぼります。
『サピエンス全史』のヒットが示すように、人類のたどってきた道に対する関心は高まっています。
人類の行く末に対する不安感、「まる暗記競争」化してきた入試世界史への懐疑、複雑化する国際関係などが背景にあるのでしょう。
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文字に残された記録が現れるのは,だいたい今から約5000年前のこと。過去にあったことを文字情報をもとに復元できるのは,それ以降のことになりますし(注:歴史学),常に文字の資料が十分にのこされているとは限りませんので,関連する遺骨・遺物や地層の状態などの“状況証拠”をもとに,過去を復元することも必要となります(注:考古学)。
◆どこで時代を区切るべきか
とはいえ,それでも「約700万年」というのは長大です。
いっぺんに取り掛かるのは無論,無謀でしょう。
じゃあ,どこかで区切ればいいじゃないか,ということになる。
でも,今度はどこで区切るべきかが問題です。
どのような観点や指標に基づくかによって,区切り方はただ一つに定まるわけではありません。
◆どこで人生を区切るべきか
例えば,子供の成長を区切る方法を考えてみましょう。
例えば、①誕生~,②園児時代,③小学生時代,④中学校時代…のように時期区分することができるかもしれません。
でも,②こども園から,③小学校に上がった瞬間に,何から何まで全部が劇的に変わってしまうのかというと,そういうわけではありませんね。
通う場所や目的,交友関係や活動範囲は変わるかもしれませんが,子どもの中身が「別人」のようになってしまうわけではありません。
それは,③から④にかけての変化でも同じことです。
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◆「過渡期」の重要性
そうなると,交友関係の広がりに応じて,時期を区切ることも可能かもしれません。
発達心理学の考え方を用いて,認知的な発達の度合いに応じて時期を区切ることも可能でしょう。
大切なことは,「時代区分」というのは,ある一定の基準や指標に基づいて区切られるものであるがゆえに,すべてをカバーする区切り方というのはとてもむずかしい。
でも,区切ったほうが,区切らないよりも,その時期の特徴を取り出して議論することができるようになる。
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そういう意味で,時期区分というのはあくまで便宜的なものに過ぎないということです。
先の例でいえば,われわれは②こども園児時代から③小学生に豹変するのではなく,②の自分を抱えながら③の時代に入り込んでいくのです。
それが,世界史の「時代区分」となると,さまざまな地域のさまざまな人間が関わってくるわけですから,全員が「せーの!」で一斉に「中世!」とか「いまから近代!」のようになるわけはありません。
すべての地域が一律の“お手本”に従い,段階的に“進化”していくように見えることもあるかもしれませんが,現在ではそのような一般法則(注:発展段階説)はもはや認められていないのです。
◆それでも「節目」はある
とはいえ,世界史を眺めてみると,要所要所に,多くの地域を巻き込むようなインパクトを持つ共時的な変化に出くわすことがあります。
そのような変化を駆動する節目(ふしめ)節目に,思い切って包丁(ほうちょう)を入れることで,約700万年の世界史を26パーツに切り分けて整理してみようというのが,この「世界史のまとめ」の試みです。
もちろん,全世界的(グローバル)に,ほぼ同時にわれわれの社会が変化するということは,たとえ,21世紀の現在であっても,そんなに簡単なことではありません。
学びやすさも考慮し,あくまで便宜的に切り分けたものだと考えてください。
◆26のパーツには,大きな3つの節目がある
26のパーツには,さらに3つの重要な節目があります。
第一の節目は,今から約1万年前。
人間が動物を飼いならし,植物の生育をコントロールするようになっていく時期です(→ゼロからはじめる世界史のまとめ②)。
第二の節目は,西暦800年頃。
気候が比較的温暖になり,人間の活動範囲が拡大していく時期にあたります(→ゼロからはじめる世界史のまとめ⑭)。
第三の節目は,西暦1760年頃。
蒸気機関が発明され,人間が莫大なエネルギーを持つパワーを手にしてからの時代(→ゼロからはじめる世界のまとめ⑱)。
以上で「時間のまとめかた」は終わりです。
すべての人類に共通の「ストーリー」があるわけではありません。
事実はひとつですが、何をとりあげて何をとりあげず、何に意味づけするかということは、歴史を語る「その人」の選択に委ねられるからです。
この時代区分ももちろん便宜的なものです。
ですが、「世界史」に取り組む上での一つの道標(みちしるべ)となるはずです。
このたびはお読みくださり、どうもありがとうございます😊