見出し画像

ゼロからはじめる世界史のまとめ②前12000年~前3500年


◆前12000年~前3500年の世界

気候に合わせてライフスタイルをチェンジ!①


―この時代には地球の平均気温が暖かくなって、世界中で気候が激変したよ。

 「最近ちょっと暑くなってきたな」っていうレベルじゃない。
 「降るはずの雨も降らない。マンモスも消えた。このままじゃやっていけないぜ」っていうレベルの変化だ。
 人類は、生きていくために植物や動物を育てる暮らしを始めることになる。


この時代はどんな時代なんですか?

―いまから1万4000年前ころから、地球の気候は暖かくなるんだよ。
 今までは、寒い気候では体の大きな動物のほうが元気だったから、ナウマンゾウとかマストドンのような大きなゾウのような動物がたくさんいた。
 でも、暖かくなると体のコンパクトな動物のほうが有利なので、いままで人間が獲物にしていた動物がいなくなってしまったんだ。

それでは食べるものがなくなってしまいますね。
―そう。そこで、ウサギ、イノシシ、シカといった小さな動物をねらうようになったんだ。
 今のアメリカ合衆国にもウマがたくさんいたんだけど、捕りすぎで絶滅してしまったほどだ。

 それに、場所によっては植物や動物を育てる技術も開発されるようになる。
 はじめからうまくいくとは限らないからね。狩り・釣りや採集と組み合わせながら補助的に導入される場合が多かった。
 狩りや採集は環境や運にも左右される。それに何より一人が生きていくためには、とても広い土地が必要だ。イメージするよりも大変な暮らしではないというもあるけど、これでは人口はなかなか増えていかないよね。


 それにくらべ、植物や動物をコントロールすることができれば、必要なときに必要な食べ物を計画的にゲットすることが可能になる。
 自然にあるものを「取る」生活から、自然に手を加えて食べ物を「生み出す」生活への転換だ。

 今ある暮らし方が180度変わるわけだから、考え方もひっくり返るほどのインパクトを受けたはずだ。


当時の人間は私たちよりも自然が身近だったのは間違いなさそうですね。

―そうだね。
 自然にはたらきかけて食べ物を「生み出す」なんて技術も、今では当たり前に思えるかもしれないけど、当時の人にとっては「ふしぎな力」に思えただろう。

 人間は脳みそが発達しすぎて、何かと「納得のいく説明」が得られないと落ち着かない動物になってしまった(笑)

 われわれは「よくわからないもの」にたいして弱いんだ。

 「怖い」ものっていうのは、たいてい「よくわからないもの」だよね。今の私たちは何かと「科学」で納得した気になっているけど、実際には本当にわかっているわけではない場合がほとんどだ。でも「説明される」ってことが、なにより大事なんだ。

 「こうすればたくさんの収穫が得られるぞ」。
 「自分たち人間と自然は、こんな関係になっているんだ」
 「安心して。死んだら、こんなところに行くことになるんだよ」

 このように、納得のいく説明確かな技術を持つ人が、新しい時代のリーダーシップをとるようになっていくことになるんだ。


◆前12000年~前3500年のアメリカ

アメリカ大陸って昔はどんな文明があったんですか?

マチュピチュって知ってる?
 とても高い山の上にある街なんだけど、テレビ番組「世界ふしぎ発見!」なんかでよく取り上げられるよね。
 ほかにはナスカの地上絵が有名かな。
 砂漠の上に巨大な動物の絵が描かれている。空から見ないと全体像が見えないようなものもあるよ。


うーん、なんとなく見たことのあるようなないような。あまりテレビは観ないので…。でも、アメリカってアメリカ合衆国のあるとこですよね。そんなとこに「砂漠」なんてあるんですか?
―たしかにアメリカ合衆国があるのはアメリカ大陸なんだけど、アメリカ大陸って南北に分かれているんだよね。
 アメリカ合衆国は北アメリカ大陸にあって、たしかにここにも砂漠があるよ。グランドキャニオンという谷があるところで有名だ。
 ナスカの地上絵があるのは、南アメリカ大陸のあるほうで、現在のペルー(地図)だ。


なるほど。でも、砂漠ってアフリカとか、エジプトとか、ラクダがいるようなところにあるイメージがありますが。
―そうそう(ちなみにエジプト(地図)はアフリカ大陸にある)。
 だけど、砂漠って一定の条件がそろえば、どこにでもできるんだ。
 南アメリカ大陸の場合には、海岸の近くをつめた~い海流がながれているから、海岸付近が砂漠になっちゃうんだよ。
 ちょっとGoogleマップで「アカタマ砂漠」と打って、衛星画像をみてみよう。細なが~く砂漠が続いているのがわかるはずだ。

ほんとだ。
―ただ、気候って時代によって変わるから、今と必ずしも一致しないけどね。

ところで、アメリカにはラクダっているんですか?
―「アメリカ」っていうと、国(アメリカ合衆国)のことか大陸のことかゴチャマゼになっちゃうから、なるべくフルネームで言おうか。「アメリカ大陸」。
 で、アメリカ大陸にはラクダはいない。
 ウマもいない。
 ウシもいない。
 ヒツジもいない。
 ヤギもいない。

あ…アルパカ。
―そう。アルパカはいるよ。かわいいやつ。あと、リャマ。そしてモルモット


使えなさそう…。
―うん。大きな荷物を運ばせたり、人が乗ったりってことはむずかしいね。
 じつは、南北アメリカ大陸はそれ以外の世界と「隔離されてる」状態なんだ。

 ユーラシア大陸(アジアとヨーロッパ)やアフリカ大陸では「アタリマエ」のことが、南北アメリカ大陸には伝わってこない。
 それがこういう大きな家畜。ウマは昔はいたんだけどね、石器時代に人間が狩り尽くしちゃったようだ。
 あとは、小麦とか大麦などの穀物だ。代わりにトウモロコシがあるよ。
 まあ、「ある」っていうか、もともと雑草っぽかったものを、だんだん品種改良してたくさん実がなるようにしていったわけだ。


それじゃあ食べ物のメニューが少ないってことですか?
―南北アメリカ大陸には、西側に高い山脈が北から南方向(地図でいうとタテ)にのびている。
 Googleマップで「アコンカグア」って打ってみよう。アンデス山脈の高い山だ。
 高い山を下ると、すぐ海だ。
 ということは、標高によって住む動物や生える植物が全然ちがうってこと。だからバラエティ豊富なんだ。
 それに沿岸の海ではたくさんイワシがとれるよ。「ペルー アンチョビ」ってググってみよう。


見たことないですが、イワシの缶詰ですかね。

―そう。まあ、オツマミですね。現代では。
 とまあそういうわけで、メニューが少ないわけじゃない。
 だから、ある意味、苦労して自然を改造しなくても、魚はとれちゃうし、動物もいる。
 そうなると、ユーラシア大陸に比べると、大きな権力を持った人が「食べ物や土地を独り占め」っていう状態にはなるまでに時間がかかったわけだ。
 あくまで比べると、って話だけどスピードが遅いんだね。
 



◆前12000年~前3500年のオセアニア

このへんは人影があまりないですね。
―そうだね。
 オセアニアには火山がそのまま島になった島や、サンゴ礁が死んで固くなった島など、いろんな島が無数にある。人間はまだほとんどの島に足を踏み入れてはいない。

 でも例えばユーラシア大陸の南側をみてみよう。
 赤道あたりに横長の島がある。ニューギニア島というんだ。
 ここではタロイモっていうイモやバナナの栽培をしている人たちがいたんだよ(⇒YouTube「プリミティブ・テクノロジー」チャンネル)。


南の方にも大きな島がありますね。
―コアラやカンガルーで有名なオーストラリアだ。

 ほら、ここにはアボリジニーという人たちが、狩りや採集によって生活をしている。
 さっき出てきたニューギニア島と連結していた時期もあったけど、気候が温暖化して海面が上昇すると切り離されてしまった
 取り残された形のオーストラリアには、珍しい動物がたくさんいるよね。



◆前12000年~前3500年の中央ユーラシア

なんだか人間たちが四つんばいの動物と仲良くしていますね。
―あれは馬だね。
 この時期にユーラシア大陸の西部(北を上にして左側)の草原地帯で、手なづけることに成功したんだ。

 口にははみ(馬銜)という道具を噛ませている。
 それをひもにつないで、引っ張ったりゆるめたりすることで、馬の動きをコントロールすることに成功したんだ。
 馬は力持ちだしスタミナもある。
 人間の出せる力の約7倍ともいわれているよ
 人間の足で移動したら日が暮れる距離でも、馬さえあれば長距離移動も楽チンになったわけだ。

 でも、馬の管理は決して楽なものではない。増え過ぎちゃったら死んでしまう。
 育てる技術を発展させていくことで、食べたいときにすぐに動物を利用できるテクノロジーが開発されていったんだ。

北のほうは寒そうですね。
―一年中寒いわけでもなくて、夏の間には気温が上がるところも多いんだよ。
 気温が上がったときには一面にコケが生え、このコケのカーペットは「ツンドラ」と呼ばれる。寒いので草木は生えない。

 その南にはクリスマスツリーのような針葉樹林エリアが広がっている。葉っぱがチクチクする木のことだ。
 その北は一面氷の世界だ。
 そんな厳しい場所でも人類は自分を環境に適応させ、ライフスタイルを工夫しているよ。寒い場所では農業はできないけど、寒い場所が好きな動物アザラシ、セイウチ、オットセイ…)を狩ることならできるからね。



◆前12000年~前3500年のアジア

◇日本
この頃、日本は縄文時代ですよね。知ってます!
―その通り!
 独特な形の「縄文土器」は“純・日本の文化”と考えられていたんだけれど、縄文文化にも、ユーラシア大陸東部(北を上にして右)との共通点があることがわかっているよ。
 それに、よく“狩りから稲作へ”といわれるように、縄文時代イコール狩りの文化と考えられてきたけど、一部の地域では植物の栽培も始まっていたことがわかっている。
 また、船に乗るのも得意で、太平洋の島々にも繰り出していた可能性があるよ。
 研究が進めば進むほど、新しいことがわかってくるね。

◇中国
中国も農業が始まりますか? やはりお米でしょうか?
―そうだね、南の方ではお米の栽培が始まるよ。
 中国には大きな川が2本あって、南のほうの長江の下流でお米の栽培が始まっている。
 北のほうの川を黄河という。ここでは桃太郎で有名なキビやアワ、大豆などを栽培していたよ。中華料理といえばギョウザやラーメンを思い浮かべるかもしれないけど、小麦はもともと中国には生えていなかったんだ。
 でも、米やキビ・アワ・大豆などはどれも長期間保存できる。だからその生産や管理をコントロールすることのできた人が、やがてリーダーシップをとるようになっていくんだ。


動物は飼っていないんですか?
―犬、ニワトリ、ブタを飼っていたよ。

 やがて黄河と長江流域では、リーダーシップを握った一族が大きな町をいくつも支配するようになっていく。共通の特徴をもつ土器が見つかっているところが、彼らの支配エリアだと分かる。
 この土器は、ユーラシア大陸の西のほうから伝わったテクノロジーではないかとも考えられている。

◇前12000年~前3500年の東南アジア
―東南アジアの人々の生活は狩り・釣り・採集が基本だ。

◇前12000年~前3500年の南アジア
―南アジアの人々は、“お隣さん”である西アジアの影響を受けて大麦や小麦の農業や、ウシの牧畜を始めるよ。

◇前12000年~前3500年の西アジア
―西アジアではかなり古い時代から植物の栽培と動物の飼育が始まる。ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシなど、現在もわれわれがお世話になっている家畜のご先祖の多くが生息し、小麦や大麦の祖先ももともと生えていた。
 とってもラッキーな場所だったんだ。


家畜を育てるとどんないいことがあるんですか?
―はじめのうちはお肉を食べるために飼っていた。昔の人のお腹は、動物のミルクを生理的に受け付けることができなかったようなんだ

 そこで、そのまま飲む代わりにヨーグルトやチーズをつくった。これが大成功! 

 ウシの側も人間にミルクを飲んでもらう代わりに自分でエサを探す必要がなくなるから、ますます人間の言うことを聞くようになっていった。人間に可愛がられることで、子孫を残す戦略だ。
 こういう関係を共生という。家畜とは、「人間との共生を選択した動物だ」ともいえるね。

 さらに人間は家畜の毛を服に加工し、皮はテント、バッグや靴の材料にした。さらに重い荷物を運ばせたり、畑を耕す力としても利用。うんちは肥料にもなった。

 こうして家畜を利用することで農業の質を高めていった人間は、狩り・釣り・採集の時代に比べ人口が5倍に増加!(約1万年頃に1000万人だったのが,前4000年頃には人口が5000万人に!)

栽培や飼育って狩りに比べるとほんとに効率が良いんですね。
―そうだね。
 ただ、それを長期間にわたって続けていくとなると、人手も必要だし水場(みずば)を守るための武力も必要だ。植物を育てるにしろ動物を飼うにしろ、水場は重要だからね。
 どこにどれくらい水場があるかというのは環境によって違うから、どんなふうに植物の栽培・動物の飼育をやって生活していくかは、場所によって個性が出るよ。
 栽培・飼育は、どんなところで最初にはじまったのだと思う?


「どんなところ?」って気候ですか? そうですね、雨がたくさん降って気温も高いところは農業しやすいんじゃないですか? 熱帯?

―う~ん、熱帯はね、「雨が降りすぎる」ことが問題なんだ。

 植物を育てるには土が必要だけど、その土が雨によって流されてしまったり、成分が酸性になってしまう。ほら、熱帯地域の土って赤色をしているんだよ
 もちろんイモやバナナなど育てることができる植物もあるんだけど、住んでいる動物の種類も多いから食べられないようにしっかりと囲っておくことが重要だ。


いろいろ大変ですね。じゃあ日本のように暖かい気候のほうが適しているんでしょうね。
―そうだね。水場には困らないよね。
 でも、意外なことに人間の歴史の中でもっとも古い時代に大規模な農業をやったのって、温帯ではなくて乾燥帯(雨がほとんど降らない気候)なんだよ。


意外です。雨が降らないからこそ頑張った、ってことですかね。
―雨が降らないところで動物や植物をあてもなく探していても、厳しいもんね(笑)
 それよりは、人間のいうことを聞く動物を連れて、砂漠の中の水場や緑のある場所を求めて移動生活をしたほうがまだマシだろう。
 それに、食用の植物をたくさん管理しておけば、もしものときにも備えることができる。

 初めのうちは雨に頼っていたんだけど、農業や動物飼育をやれば次第に人口は増えるから、村の規模も大きくなって農業の規模も大きくする必要が出てくるね。
 それなら「水を川から引っ張ってくればいい」というアイディアが生まれる。水路や井戸をつくって畑に水を流すわけだね(注:灌漑(かんがい)農業という)。

 はじめの頃は少人数の親戚ごとに生活していた人間たちも、人口が増えれば無関係な人とも一緒に暮らす必要が出てくる。村が豊かになればなるほど、富を求めて外からの訪問者も増えるだろう。
 町がにぎやかになるにつれ、大勢の人を支配するしくみができていくようになるよ。



◆前12000年~前3500年のアフリカ

アフリカといえばサハラ砂漠ですね!
―そうそう。でもね、この時期のサハラ砂漠には大草原が広がっていたらしいんだ。「緑のサハラ」といわれるよ。

どうしてわかるんですか?
―サハラ砂漠のど真ん中の岩に、たくさんのウシを追いかけて狩りをしている人たちの絵が見つかっているんだ。昔の気候について調べている多くの学者たちも、いろいろな証拠から「緑のサハラ」説を支持しているよ。

 でも、次第に気候は乾燥し、砂漠が広がっていった。
 人々は獲物が少なくなると水場に向かった。
 その一つがナイル川という地球上でいちばん長い川だ。


エジプトに注いでいる川ですね?
―そうそう。ナイル川では大規模な農業がはじまって、村のサイズも大きくなっていく
 次の時代になるといよいよあの有名なピラミッドが建設されることになるんだ。



◆前12000年~前3500年のヨーロッパ

―この頃のヨーロッパには一面、森が広がっていた

 そこに“お隣さん”の西アジアから農業と家畜の飼育のテクノロジーが伝わって来たのがこの時代だ。
 小麦はあまり寒いところでは枯れてしまうから、北のほうでは代わりにライ麦という別の種類の麦が栽培されるようになるよ。

 アフリカに近いほうのヨーロッパでは、海沿いにオリーブブドウも栽培されるようになっている。夏にあまり雨が降らない乾燥気候に適しているんだ。



この記事が参加している募集

このたびはお読みくださり、どうもありがとうございます😊