見出し画像

【図解】ゼロからはじめる世界史のまとめ④ 前2000年~前1200年

生活環境の違いを越えた協力と対立①

世界史を26ピースに「輪切り」して、一緒に人類の歴史のストーリー展開を眺めています。
今回は4つ目のピースです。(イラスト from 「いらすとや」)

目次
0. 前2000年~前1200年の世界
1. 前2000年~前1200年のアメリカ 
2. 前2000年~前1200年のオセアニア
3. 前2000年~前1200年のアジア
4. 前2000年~前1200年のアフリカ
5. 前2000年~前1200年のヨーロッパ

(完全版は世界史のまとめ」ウェブサイトへ)

―この頃のユーラシア大陸の大事件は、草原地帯の遊牧民の大移動だ。彼らは海岸近くや川などに拠点を移していき、定住民(移動せずに暮らしている人々)の住んでいる地域を支配するグループも現れるんだ。

 それでは各エリアの様子をみていこう。

________________________________________

◆前2000年~前1200年のアメリカ

―北アメリカの大きな川(ミシシッピ川)沿いでは巨大なお墓がみつかっている。リーダーの力が強くなっていたのだろう。

 一方、この時代にもっともにぎやかだったのは中央アメリカだ。
 現在のメキシコがある高原地帯や、メキシコの南部などにトウモロコシ、カボチャ、トウガラシの栽培によって栄える文明が生まれるんだ。
 文字を持ち、太陽にもとづくカレンダーも作られ、ピラミッドが建設された。オルメカ文化というところではヘルメットをかぶったアメフト選手のような巨大な頭の像が多数のこされていて、印象的だ(なんと18トン!)。

 南アメリカではアンデス山脈周辺に、トウモロコシやジャガイモの栽培や家畜の飼育、魚介類の釣り・採集にもとづく文明が栄えているよ。ここでも神殿がつくられていて、地域ごとにリーダーがいたようだ。

山のようにみえるけど、この時期に建設された大神殿だ(現在のペルー(地図)のカラルというところの遺跡

________________________________________

◆前2000年~前1200年のオセアニア

―オセアニアの島々には、台湾のあたりを出発点とする人々の移動が続いている。

 彼らはアウトリガーカヌー(本体の横に、安定させるための浮きが付いている船)をつくって、星座によって方角を読むことができた。

 島から島へ数千キロも離れた距離を移動し,東南アジアを起源とするタロイモ(日本のサトイモのような芋),ヤムイモ(日本のヤムイモのような芋)の農耕や,ココヤシ,パンノキ,バナナなどの果樹の栽培,イヌ,ニワトリ,ブタの牧畜を行っていた。ヤシの木の皮を敷き物や船の帆として編んだり,体にタトゥーを入れたりする文化も特徴的だ。
 ディズニー映画の「モアナと伝説の海」にも,ニワトリやブタがサブキャラとして出てくる。



 でも一見“楽園”のように見える“南の島”の生活は,実は過酷だ

 特にサンゴ礁の残骸が固まってできた島では土がやせていて農業が難しく,水の確保も大変だ。
 それに比べると島そのものが火山によってできている島のほうが、火山灰を含んだ土は農業に適している。といっても狭いから、強いパワーを持った王は現れにくいんだ。

 ちなみに、オーストラリアの人たちは、前の時代に引き続き外の世界との交流はほとんどない。

________________________________________

◆前2000年~前1200年の中央ユーラシア

―動物の群れをコントロール下に置き、エサと水を求めて移動生活を送る遊牧民の文化は、ユーラシア大陸の広いエリアに広まっている。

馬の群れは地図中「★」のあたりで最初に人間になついたと考えられている。Photo by Christine Mendoza on Unsplash

 西のほうでは、西アジアに入り込み定住民を支配下に置く国も現れる。
 南のほうでは、インドに入り込み、もともといた定住民を支配下に置いている。彼らはヨーロッパ人と共通の祖先を持つとされているけど、わかっていないことも多い。

 東の方では、中国の「周」という王国にも影響を与えているようだ。

________________________________________

◆前2000年~前1200年のアジア

◇日本
―日本では縄文時代が続いている。

◇中国
―中国に小麦や大麦が伝わったのはこの頃だ。
 たくさんの穀物を栽培するには水がたくさん必要だが、暴れ川として恐れられていた黄河(こうが)の水を安全に利用するには、大掛かりな堤防工事が必要だこの工事を仕切ったリーダーが、国王にのし上がっていったのではないかと考えられているよ。中国では皇帝のシンボルは「龍(ドラゴン)」で表されることが多いけれど、これはもともと暴れ狂う「川」の水を表しているともいわれている。
 まあ堤防をつくったところでアテにはならないから、当時は「川から離れたところに住むこと」がいちばんの安全策であったわけだけど。

黄河流域にある二里頭(にりとう)というところの遺跡には、すでにこんな宮殿があったとされている。

 この時期に力を付けた黄河のあたりの支配者のひとつが、さらに南のほうの長江の流域に生まれていた「お米」をベースにした文明(注:長江文明)とも合わさって、のちの中国の王国につながっていくのではないかと考えられているよ(中国では長年政治の中心は北のほうにあったんだけれど、南のほうの大都市の経済発展が進むにつれ、長江の文明の発掘調査が進展するようになってきている事情がある)。

 中国の学者たちの中には、すでにこの時期に夏(か)という最古の王国があったんじゃないかとも考えている。「正しいかどうか」判断するポイントが日本と中国の学者グループの間で違うので、日本では認められていない説なんだけどね。

 日本では「殷」(商)という王国が中国最古の王国だといわれている。大規模な王の墓もみつかっていて、王は占いにより「神の気持ちを聞く」形をとって、人々を「納得」させて支配していたとされている。占いの結果は文字に表されたのだが、これは現在の漢字のルーツだ。


占いで決めちゃったら、気まぐれすぎないですか?
―まあそのへんはうまくやるわけだ。王様が自分に都合のいいお告げとなるように、占いの出方をコントロールしていた証拠も見つかっている。
 王は親戚や部下に町を支配させ、武器や農具として青銅器がつかわれていた。お金としてはタカラガイという南の島でとれる貝がつかわれているよ。




◇前2000年~前1200年のアジア  東南アジア

―東南アジアにはこの頃、中国から稲作が伝わった。山が多く雨の量もハンパないので、農業をやるときにはまず草むらや森に火を放ち、その灰を肥料にする。これを焼き畑という
 米づくりには十分な雨量が必要だから、東南アジアでは焼畑による稲作が広まっていった。

 米づくりにより人口が増えると、山あいの谷などを単位にしてリーダーが現れる。彼らは中国から伝わった最新鋭の青銅器のつくりかたをモノにし、青銅器製のドラムをつかった儀式で人々を支配しようとしたんだ。
 青銅器は今でこそ錆びてしまって青っぽいけど、当時はキラキラ輝く宝石のような外見だった
 魔法のようなモノを見せびらかすことによって、人々に「すごい」と思わせる作戦だね(注:ドンソン文化という)。
 



◇前2000年~前1200年のアジア  南アジア

インダス川の流域の文明はどうなっていますか?
―環境悪化でインダス川の都市が見捨てられてしまった後、北西(北を上にして左上)のほうから遊牧民がやって来る。

インダス文明が滅んでしまった原因のひとつは気候の変動だったと考えられている(現在のパキスタン(地図)にあるモエンジョ=ダーロと呼ばれる遺跡)




草原地帯の遊牧民ですね?

―そう。話していた言葉にはヨーロッパとの共通点があるよ。
 インドは農業に適した気候だから、彼らはしだいに定住生活へとライフスタイルを変えていくけど、彼らの世界観はそのまま残された。

 人間を4つのランクに分け、一番上のランク(注:バラモン)が儀式をおこなうことで、神様たちを喜ばせるんだ。その儀式ではキャンプファイヤーみたいな炎が焚かれ、呪文が歌われる。
 いけにえとして動物がささげられたんだ(この宗教をバラモン教という)。




◇前2000年~前1200年のアジア  西アジア
―今のイランがあるところにも、北方からの遊牧民が移動して来ているね。
 イランはほとんどが乾燥エリアだけど、西アジアの中心地であるメソポタミア(2本の川が流れる地)とユーラシア大陸の草原地帯、インドを結ぶ中間ルートにあたる重要地点だ。


 この時期には宝石や真珠を取引して、いくつもの町を支配するグループも現れているよ。


メソポタミアはどうなっていますか?
―メソポタミアには、この頃、外からアムル人という民族がやって来て、川の中流付近に巨大な都市を建設したよ。バビロンという町だ
 立派な神殿を建てて、軍事力で広いエリアを支配したんだけど、力だけでは支配は長続きしないね。

 メソポタミアでは、すでに各地でルール(法律)によって支配しようというアイディアは導入されていたんだけれど、バビロンの王様はこれをさらに立派な形に整えて、文字に刻んで全国にお触れを出した(注:ハンムラビ法典という)。


ルールが決められると「めんどくさい」と思う人々もいるんじゃないですか?
―「押し付けられている」と感じた人もいただろうね。
 内容をみてみると「やられたら、やり返せ」という内容が基本になっている。有名なフレーズに「目には目を歯には歯を」というものがあるね。「目をつぶされたら目をつぶしかえせ」という内容だ。
 一見怖そうだけど、これって言いかえれば、「目をつぶされても、つぶし返すのは目だけにしておけ」っていう意味なんだ。


つまり、復讐をエスカレートするのを防ぐ意味があったんでしょうか。
―そういうこと。リベンジのやりすぎの防止だ。
 ちなみにこの法律の石碑の上の部分をみると、神によって「これを人々に守らせろ」と命令されている王の姿が刻まれている。「にいわれたんだから、お前ら守れ」というわけだ。


バビロンの王様の支配は長続きするんですか?
―いや、そうもいかないんだ。
 まず、下流のほうでは海のエリアを支配するグループが勝手に王国を建てて離れてしまった。

 それに、草原地帯の遊牧民の大移動の波が押し寄せてくる。
 代表格がヒッタイト人だ。
 すでに鉄でできた武器は広まりつつあったのだけれど、ヒッタイトは馬に戦車をひかせる戦法で、西アジア最強の軍事力を誇っていた。彼らは鉄の工場を持っていたようで、シリアにも進出してエジプトの支配も狙っていた(この時代にはエジプトと戦っている)。


まるで戦国時代のようですね。
―そうだね。北からヒッタイトvs南のエジプト。
 それに「2本の川の地域」(メソポタミア。現在のイラク(地図)があるところ)ではミタンニっていう国が強くなるよ。でも、ヒッタイトがミタンニを滅ぼすと、代わってアッシリアという国が急成長するんだ。

 この時代のことがよくわかるのは、国王の間で交わされた約束や手紙がエジプトでたくさん見つかっているからだ。

________________________________________

◆前2000年~前1200年のアフリカ

―アフリカでは大部分で狩り・釣り・採集を基本とする生活が続いていますが、サバンナという熱帯の草原エリアでは雑穀やイモの栽培、ウシなどの家畜の飼育もおこなわれている。


エジプトはどうなっていますか?
―エジプトはこの時期に史上最強の王国が生まれる。新王国だ。
 この時代にはシリアのほうに進出してヒッタイトという強国と戦っている。ツタンカーメンの黄金のマスクがつくられたのもこの時代だし、巨大な神殿も建設されている。

ナイル川沿いには巨大な神殿が建設されたテーベの大神殿

________________________________________

◆前2000年~前1200年のヨーロッパ

ヨーロッパにパリやロンドンができるのはまだですか?
―それは、もうちょっと待ってね…。
 当時のヨーロッパ最先端の地域はパリやロンドンのある北のほうではなくて、地中海に面した南のほうなんだ。


地中海ってどこでしたっけ?
―ヨーロッパとアフリカの間に挟まれた海だよ(地図)。
 大きな湖のようだけど、1か所だけ一番西側(北を上にして左側)に出入り口があるでしょ。
 地中海というのは「地下にある」っていうわけじゃなくって、地面と地面の間の海という意味だ。

 当時のユーラシア大陸で、農業と家畜の飼育によって巨大な町がつくられていたのは西アジアだよね。地中海を介して接している地中海沿いのヨーロッパにも、最先端の文化が伝わったってわけだ。

 でも気候は西アジアと同じではないから、地中海の気候に合わせたオリーブやブドウの栽培が盛んになる。とくにブドウからはワインが製造され、ヒット商品としてさかんに輸出された。

 地中海沿岸には大きな川があるわけじゃないから農業を基盤にして強い国が作られていったわけではなく、貿易をコントロール下に置いた支配者によって港町を中心に王国が作られるようになっていく。

 その代表格がクレタ島の王国だ。

 クレタ島という島は地中海沿岸のギリシャというところと、アフリカのエジプトのちょうど中間地点に位置している。複数の港町を束ねた支配者が、各地のオリーブやブドウ畑を支配し、輸出ビジネスで成功したらしい。
 王宮にはガッチリとした壁はなく、壁にはイルカのかわいらしい絵が描かれている


この地域は遊牧民の進出は受けなかったのですか?
―するどい。
 地中海沿岸も例外ではないよ。
 北から進出してきた民族によって、クレタの王国は衰えた。直接的な原因は火山の大爆発によるものとされているけどね。

 このときにギリシャに進出してきた民族は、長い目でみれば今のギリシャ人のご先祖だ。そのうちの一派はアテネという町をつくることになるよ。

 なお、トロイア文明という巨大な町も、この時期に栄えていた地中海沿岸の文明だ。

以上で前2000年~前1200年の世界史のまとめは終わりです。
次回は5つ目のピースにあたる前1200年~前800年の世界を眺めましょう。(世界史のまとめ)

この記事が参加している募集

推薦図書

このたびはお読みくださり、どうもありがとうございます😊